浦和フットボール通信

MENU

浦和フットボール交信 – Vol.6 ~「浦議スレッドからサポーターの土台を考える」~椛沢佑一

椛沢佑一浦和フットボール交信 Vol.6
「浦議スレッドからサポーターの土台を考える」
椛沢 佑一
(浦和フットボール通信編集長)

アウェーゲーム続き、イングリッシュウィークの試合などもあり豊田さんの交信から少々時間が経ってしまいました。すいません。その中、浦和レッズはモンテディオ山形に引き分けた後、C大阪、湘南、新潟に3連勝してリーグ2位につけている。内容はまだ物足りない感は否めないが、徐々に良い部分も見え確実に勝ち点を積み上げてきた印象だ。さて前回の豊田さんからの交信を受けた時に、『浦議』にタイムリーなスレッドが立ち上がった。そのスレッドの内容を元に話を進めていきたい。

■ 『浦議』に立ち上がったスレッドからサポーターの土台を考える。
FC東京戦後に『勝つ事よりも内容重視の考えの人に質問』というスレッドが立ち上がった。3~4年前は内容よりも結果が出ていた時期だったが、サポーターは、その頃から勝利に対する喜びを爆発させることなく複雑な気持ちでいたのか、というものだった。それに対するレスも様々な意見が寄せられた。一部を下記にて紹介したい。

●一度もタイトル取ってなかったから「四の五の言わずにとりあえずシャーレがほしい」って事でみな我慢してませんでした?だからJの優勝を経験した今とあの頃では構え方が違う気がします。CWCでまるで歯が立たなくて固まっていたのが懐かしいです。今の方向付けに特段不満はありません。が、「本当にこの状況でやっていけるんだろうか・・・」と心配なだけです。

●06年に優勝したコトで味を占め翌07年からは勝てない試合があるとやれ「今すぐワシントンを切ってフッキ獲れ」 とかいう、いま考えても阿呆みたいな書き込みが横行していたからね。しかもその話題のフッキがロクでもない選手だと分かると何事もなかったように言わなくなったし。(当時は「優勝の原動力になった功労者によくそんなコトが簡単に言えるな~」と思いながらレス読んでいました。)レッズのレベルアップも大事だが、書き込む側のレベルアップも求められる必要があるよ、ホント・・・

●勝負事だから結果はどうしても求めるし、勝てば本当に嬉しいし、負けたら本当に落ち込むけどチームのベクトルやフィロソフィーみたいなものを貫いて、故にもがいたり、苦しんだりした先にある喜びは、きっともっと強くて大きいような気がする。

●ちなみに大型補強やエメやワシントンに頼るサッカーを嫌う人が多いけど、俺は大型補強は続けて欲しかったけどなぁ。大型補強=その選手に頼るサッカーって考えてしまう頭こそ、変えたほうが良いのではないかと、、エメに感化された達也や若手選手にプロ意識を教えてくれた井原など大型補強によって、周りの選手のレベルも上がるって事。今のユースから上がってきた選手達にスーパーなプレイを近くで見せてあげられる選手を出来れば取って欲しい。

●優勝してビッグクラブだ常勝だって騒がれて、調子に乗った結果が今。自分たちが今は中位のクラブであることを認められず、上位を貶し、下位をナメくさり、負けても自分たちが上だと勘違いしてるから、結局認められない。そんな負のスパイラル状態だと思う。今は現状を冷静に受け止めた上で、サポも批判ばっかせず応援に心身を込めるべきだよ。

●確かにタイトルを取れていた時期は楽しかった。特に04年の2ndや06年の序盤戦とかは。だけど結局相手に研究されて、最後のほうにはギリギリで勝つ試合が多かった。07年とか何度ポストやバーに助けられたことか。クラブに明確なフィロソフィーがないから、結果が出ない08年に崩壊した。でも俺はこれでいいと思う。07年までは結果だけを求めてACL制覇、08年からは内容+結果。サポーターがクラブに対して求めるレベルが上がってきてますからね。ただ、今のサッカーで常勝クラブになるには時間がかかりそう。

●04年は、エメ頼みに止まらず、すごく個力が活きて、しかも全体としてアグレッシブ(波のように縦に勝負)。大好きだった!追い越し禁止と06年の割り切り攻守分断は、正直、見ていて、これってサッカーなの?と思った!サッカーの魅力は、選手個々人の自由・判断だとおもう。(故に、逆説的に組織・規律が大事)両者の含意は、180度違ったけど。。。ミラン戦は、むしろ、よくあれで済んだと思う。内容の差は見ての通りだが、予想される世界との差に、戦前はもっと残酷な「恐怖」を感じていた。でも、07年の無理・後遺症は、発想転換の原点になった。忘れ物(2冠)を取り戻すためには、もっとコレクティブなチームになる必要がある。

●いま内容を求めてる人が、ギドの時不満だったかというと、そうでもないと思う。自分はあの頃はアレでよかった、と思うけど、あの頃のサッカーに戻りたいとは、この3年で思わなくなった。考え方の変わらない人なんていないんだし、考え方や求めることが変わることが成長するってことなんじゃないかなぁ、と。そんなサポの考え方を変えてくれる、教育してくれるという点では、今の監督さんは向いてるんだと思う。サポの影響力がどうこう言ってる人がいるけど、クラブが成長するためにチェンジが一番必要なのは、サポなんだよ。きっと。抽象的な書き方しかできないけど、本気でそう思う。

●今やっていることも本来ならばJリーグが開幕した93年からやり始めておかなければならないコトだったんだけども当時は当時でそんな余裕は無かったらね。
低迷期を経て95年に第一期オジェック政権を迎えてナンとか明るい材料を見つけてはいたけどもその後進むべき針路を見失い、J2へ降格。その後の02年にクラブ改革に乗り出して基礎構築を行いタイトルを獲れる様になったがその後の継続がうまくいかずまたも針路がおかしくなる。(元々の針路の基盤が成熟ではないから基礎構築を果たしてもソレっきりで終わり、原点回帰の方法が分からず針路を導く為のニュートラルにできなかったワケなんだよな)そして今のフィンケ体制になってようやく至上命題ともいえる末代まで続くクラブコンセプトの着手に取り掛かったというワケなんですね~

●クラブの方針や人事にサポーターが口を出すな、と言う人がいるが何が悪いのか俺にはよく分からない。サポーターは真剣に勝利を願っているし、生活の一部になってる人もいる。それでこそ街とクラブ一体感が生まれるんじゃないか?サポが口を出さないなら、それはスポーツ興業の「興行主」と「お客様」っていう関係でしかないと思うが・・・それじゃつまらなくない?まー素人目線で罵るのは大いに問題だと思うけど。

●2006の頃は手段はともかく「優勝」する事を求めている人が多かったし、クラブも求めていた。今は「内容」を求める風潮にある。ただそれだけの事。当時「内容よりも勝利」と言っていた人が、今「内容>勝利」と言ってもそれはそれで間違ってはいないと思う。人の考え方は時代や社会によって変わるものだから。なんだか良く分からん [返信]目的は勝って強いチームになる事。勝つ為の戦術。「内容>勝利」ってなんだか、決定力があり内容のない勝利に不安を感じ、内容があって決定力のない負けに希望を持つ、みたいな。前に「強いチームが勝つんじゃない、勝ったチームが強いんだ。」なんて言葉があったよね。それじゃダメなんですかねぇ…。「内容>勝利」に傾き過ぎてると、なんだか迷走している気分になるよ。

●私も「内容>勝利」を称える風潮に嫌気がさしていました。「チームを勝利に結びつけるために何ができるのか?」を懸命に他のチームが試行錯誤している中、それに背を向ける監督やフロントは、本当に阿呆かと思っていました。一部のアマチュアスポーツのように「勝利至上主義」を求めているわけではなく、「勝つこと」、「サポーターを喜ばすこと」を高次元でバランスさせるチーム作りを求めているのですが、それが理解されないのは悲しいことです。どちらかを満たすのではなく、「両方」を満たす必要があるのですが、それが見えていない人たちには今の凋落の理由がわからないでしょう。

●「内容>勝利」の議論というのはひとステージ上に登ったからこそですよね。そもそも正確には「良い内容+勝利」>「悪い内容+勝利」>「良い内容+敗戦」>「悪い内容+敗戦」と、「良い内容+勝利」>「良い内容+敗戦」>「悪い内容+勝利」>「悪い内容+敗戦」のどちらがいいですか?という事ではないでしょうか?そして、常勝でなくとも弱小チームではなくなった今では、良い試合展開をするために「誰が出ても一定レベルの試合ができる」事が重要なわけで、そうなると「誰か頼み」にするべきではない、と。そして昨年来チーム戦術の方向性としてクラブはパスサッカーをチョイスしフィンケに託したんですよね。指導力やチーム戦術の方向性に賛否両論があることはいいと思いますが、現状としてクラブがチョイスした方向はこれですから、私は今の状況を支持します。確かに何かしらタイトルを取った頃のように勝ててはいませんが、その先の常勝チームへのステップとして見守ります。

●内容と結果は足して評価するものではなく「内容」の一部(7~8割くらい)が「結果」なんじゃないかと思う。

普段は、その試合だけをクローズアップした意見が多くなる『浦議』だが、このスレッドはクラブを長い目で見た上での意見が多く集まったスレッドになっていたように思える。私が思うに「勝つことよりも内容重視」なのではなく「勝つために内容を求めている」のが現状の浦和レッズなのではないかと思う。リーグ優勝からアジア制覇まで結果を残すことに成功したレッズだが、それも長く続く栄光ではないことを2007年、2008年のシーズンで多くの人が感じ取った。クラブもサポーターもそこから長期的に、安定的に成績を残せるクラブになるための土台作りを再度求め、フォルカー・フィンケ監督を招集して体制を整えている。豊田さんの前回のコラムの通り、クラブのぶれない姿勢の根底は、クラブに対してのサポーターからの発信が大きく作用したことも間違いないだろう。(*1)

*1 クラブとサポーターの結束に関しては、レッズOBの西野努氏も『浦和フットボール通信』Vol.15の巻頭インタビュー「いまこそレッズのカラーを示せ」において私見を述べている。「浦和レッズがここまでの人気になったのはクラブ創設以降、地道に地元とサポーターに目を向けたマネージメントをしてきたことが大きい。浦和はまだ目標への途上にあると思うし、そこを見失ってはいけないと思います」:インタビューより抜粋)

■サポーター側から出来ること。
その中でも現状に対して不満を募らせている人たちの想いは、あれだけの結果を残し予算規模も日本屈指のクラブとなった浦和レッズが結果を軽視して内容を求めることには納得できないということだと思う。それは私もそう思う。ホームにあれだけのサポーターを集められるクラブは世界を見てもそうはない。その責任と期待を背負って常に浦和レッズは勝利を目指さなければいけないし、我々サポーターは監視をして常にプレッシャーをかけないといけない。ただ、そこと平行してフットボールの内容を求める作業は、短絡的な発想では生まれないのも事実。その状況をクラブそしてサポーターも受け入れなければいけない。“結果が出なければ次へ”という姿勢では、フットボールの土台は創られることはないだろう。ある知り合いのサポーターは、「今こそレッズを応援する楽しさを感じることができる」と話をしていた。常に勝つシーンを応援するのではなく、強くなるまでの過程を見ることが出来るのもフットボールの楽しみだということを感じているからであろう。栄光を勝ち得た前に、ハンス・オフトを召集してフットボールの土台を創った時も時間がかかった。そしてその先に栄光があったことを多くのサポーターは経験しているので、そのことを理解できると思う。その歴史を知らないサポーターは古きを知るサポーターにその体験を聞くべきだろう。浦和レッズというクラブは、クラブ、そしてそれを取り巻くサポーター、地域が一体になって道を進んだ時にどこにも負けない強さを発揮する。それも過去の経験から多くのサポーターは感じているはずだ。日本一のフットボールの街・浦和にあるクラブとしての誇りを持って、どの街のクラブにも負けないクラブとなるために、ひとりひとりがクラブとどのように向き合って支えていくかを考えることが我々にできる土台作りなのではないかと思う。(*2)

(*2 これからはサポーターのクラブへのアプローチもその真価が問われることになる。『浦和フットボール通信』Vol.32の巻頭インタビューでは、ライター島崎英純氏がこの重要ポイントについてコメントした。「結果責任を監督に全て負わせてしまっていては、レッズのカラーとか確固たる魅力は作れない。2~3年の我慢を望んだクラブがどんなサッカーに到達できるのか、結果が出なかった時にはどのように責任を取るのか…レッズサポーターも今から議論をしてエクスキューズするべきと思います」:インタビューより抜粋)

 最近はどこのスタジアムに行こうと応援もコールも「PRIDE OF~」のフレーズのオンパレードだ。だが「PRIDE OF URAWA」には他所とは全く違う言葉の重みと責任があること、そして我々はその言葉を胸に刻んで日本にも世界にも誇るべきクラブを目指さなくてはならないことは、ここで繰り返すまでもないだろう。

(第6校 了)

ページ先頭へ