浦和フットボール通信

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【河合貴子の試合レビューレディース編】若いチームが2点のビハインドを追いつき同点で終える。2015プレナスなでしこリーグ1部 レギュラーシリーズ第5節 vsベガルタ仙台レディース<吉良、後藤、北川、吉田監督コメントあり>(2015/4/26)

今日のワンポイント

浦和のチーム先発平均年齢は、20.7歳と若い。チームが波に乗ると、若さが爆発して溌溂とプレーが出来る。だが、ほんのちょっとしたことで失点をすると、自信をなくして弱気になってしまう選手や何とかしないといけないと空回りしてしまう選手がいる。若さ故のことである。先制点を許して、チームのバランスが崩れてしまった。

吉田監督は「0-2から追い付いたのは良かった。だが、1失点で押さえていれば、逆転が可能だった。メンタルの弱さだ」と厳しい表情で話した。経験豊富なベテラン選手がいれば、ピッチの中で精神的な核となりチームを支えてくれる。だが、浦和にはいない。「出来るだけ前を向かせて試合に臨ませる投げかけをしていきたい。引き分けたことを、何としてでも次の勝利に繋げたい。他のチームには、宮間や石清水などベテランがいる。後藤や高畑も経験を積めばリーダーシップがとれるし、強くなれる」と吉田監督は選手に経験を積ませながらメンタル面の強化を図る。浦和には、若くてポテンシャルの高い選手が揃っている。そこに、メンタル的な強さが加われば、チームは再び日本一に輝くであろう。

3日前に登録したばかりの北川ひかるをスタメンで抜擢

新緑が眩しく、フットボール観戦日和となった4月26日。昨年リーグ制覇に輝いた浦和は、1勝3敗と苦しい状況においこまれている。一方、対戦相手の仙台は3勝1分けと今シーズンは好調なスタートを切っている。

浦和は苦しい状況の中で、猶本光選手は左足内転筋に張りがあり、加藤千佳選手は体調不良でメンバー変更を余儀なくされた中、ボランチの経験がある柴田華絵選手をワイドのポジションから変更、後藤三知選手と白木星選手の2トップ、吉良千夏選手を左のワイド、清家貴子選手を右のワイドに起用して超攻撃的な布陣を組んだ。そして3日前に特別指定選手として登録されたばかりの北川ひかる選手をいきなり、スタメンで起用した。

吉田靖監督は「北川は、チームに合流してまだ間もないが、春休みに千葉での試合に参加した。良い選手なので、チャンスがあったら・・・って考えていたが、勢いがある選手なので攻撃の活性化を狙った」と話し、さらに「前に勢いを出したかった」と前線4選手の起用についても話した。

序盤に吉良が決定機を3度クロスバーに当て決めきれず。

試合は、吉田監督の狙い通り、前線4選手が流動的に動き、ワイドの一方が中のポジションを取るとサイドバックの選手がスペースを使い、良いリズムで攻撃が生まれた。5分、北川選手からのパスをエリア内で受けた後藤選手が、走り込んで来た吉良選手へ冷静に折り返すと、吉良選手の狙い澄ましたシュートはクロスバーに直撃。12分には、こんどは右から栗島朱里選手がドリブルで持ち込み、清家選手へ、清家選手のクロスを後藤選手が落としを狙った吉良選手のシュートは、またもクロスバーに直撃。3度目の正直と思われた20分、北川選手がドリブルで持ち上がり、縦のスペースに走り込んだ後藤選手へ、後藤選手のグランダーのクロスに合わせた吉良選手のシュートは、クロスバーに直撃!2度あることは、3度ある。

「3本バーに当てたのは、初めて・・・。今日は、自分の日じゃない。ツキが無いって思ってしまった」と吉良選手は話した。そして、吉良選手は「左のサイドで先発し、仙台のDFラインが高く、その背後を狙っていた。清家のクロスにフォアードがニアーに入って、自分がファーに入れたし、相手がボールウオッチャーいなっていたから・・・。ゴールが見え過ぎて、フリー過ぎて、迷いも無かったのに・・・。チャンスで決め切れずにチームメイトとサポーターに申し訳なかった。あそこで決めていたら試合は変わっていた」と悔しさを噛みしめて自責の念にかられていた。

先制点を奪われて気持ちが切れたのか立て続けの失点

吉良選手のクロスバーに直撃した3本目のシュートの3分後の23分、浦和の一瞬の隙を突いた仙台の河村優理選手が攻撃の起点となり、有町紗央里選手に右サイドを突破されてしまい、井上綾香選手のクロスのこぼれ球を河村選手がシュート。仙台のたったワンチャンスで、先制を許してしまった。先制点を相手に奪われ、気持ちが切れてしまったのか、焦りなのか、2分後には、右サイドのスローインから縦に井上選手が抜けだしてクロスを上げると、ファーサイドで浜田遥選手に合わされて2失点。追いかける展開となった浦和は、失点する前とは全くの別チームになっていると感じるほど、自滅をしていった。

後藤三知選手は「失点をした後に、チームとして出来ていたことが、出来ない状況に陥ってしまった」と振り返った。良い流れの中で得点出来ずに2失点し、前半を折り返すこととなってしまった。

選手起用で流れを取り戻す

吉田監督は「2連敗していて、我慢できない。粘れない。下を向いてしまう。強い気持ちでやって行かないといけない」と選手たちに檄を飛ばした。後半、2点リードしている仙台は、しっかりと守備ブロックを形成し、カウンターを狙ってきた。浦和は、打開策としてボランチの柴田選手を通常の右ワイドのポジションにもどし、右ワイドの清家選手をトップに上げて、白木選手に代えて長野風花選手をボランチに投入。フレッシュな長野選手が前線に顔をだし攻撃にリズムが生まれ始めた。

58分、中盤の空いたスペースを岸川奈津希選手が使って、北川選手へとパスを送ると、北川選手のドリブルからのクロスを吉良選手がDFと競り合いながら難しい体勢で右足を伸ばしてつま先シュートが決まり、1点差と詰め寄ると、浦和は息を吹き返したようにテンポの良い攻撃を見せ始めた。

吉良選手は「決めたゴールの方が、クロスバーに当てたシュートよりも難しかった。やっこさん(吉田監督)にボランチが、ボールを持ったら裏を狙えっと言われていた。北川の動きも見えていた」と照れながら話した。

10代コンビネーションから柴田が決めて2点のビハインドを追いつき同点で終える。

特定指定選手となりいきなりスタメンで起用され、アシストをした北川選手は「アップの時から緊張しないで楽しめた。今日は、自分のプレーが出来た。アシストは狙い通りだった。DFの裏に出すのは練習していた」と自信たっぷりに話し「良い形で何本もシュートまで行けていたし、粘って点を取り返せたのは良かった。スピードは自分の武器だし、今日は最後の方で運動量が落ちてしまった。連携が上手く取れずに、走り過ぎたところがあった」と17歳とは思えないほど、しっかりとした口調で話した。U18代表では、サイドバックの経験はあるが、本来は左ワイドのポジションだそうだ。将来が楽しみな選手が浦和にやって来た。

そして、1点差に詰め寄った浦和に観客席からも「浦和が行けるぞぉ!」と熱い後押しの声があがった。バックパスを狙われ、危ないシーンもあったがDFが身体を張ったり、仙台の選手のシュート精度に助けられたりした。78分には疲れが見えた栗島選手に代わり臼井理恵選手を投入。浦和はDFラインを上げて、我慢強く攻めつづけて、82分、北川選手、清家選手、長野選手と10代のコンビネーションが炸裂して最後は、柴田選手が冷静にゴールを決めて同点とした。

同点ゴールを決めた柴田選手は「チームとして流れが良く、タイミングが掴み易かった。点が欲しかったので、なるべく前に関わってスムーズだった。追い付けたことは良かった」と話した。

逆転は出来なかったが、2-2の引き分けで終わった。次節に繋がる大きな引き分けであった。

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