浦和フットボール通信

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【セカンドステージに期待する選手/河野正】高木俊幸「広島戦後、二人きりの会話中に出たひと言が忘れられない。それは17年前、大原サッカー場で小野伸二から聞いた言葉そのものだった」(2015/8/3)

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第1ステージでJリーグ史上初の無敗優勝を飾った浦和が、第2ステージではつまずいている。第5節を終え、1勝2分け2敗の勝ち点5で暫定14位と調子が上がらず、年間勝ち点でも5連勝中の広島に抜かれて2位に後退。J1は今季から再び短期決戦へと移行し、17試合は思いのほか進行が早いだけに、再開する新潟戦から白星を重ねていきたい。

第1ステージを制した大きな要因に武藤雄樹の活躍は見逃せない。短い勝負を勝ち抜くには、磐石な試合運びと組織力がいるが、このほかヒーローの出現も欠かせない。第1ステージの浦和は、優勝するための条件を過不足なく持ち合わせていた。武藤に乗せられ、チームは試合を重ねるごとに勢力を拡大していった。

今ステージでは武藤に続くニューカマーとして高木俊幸に期待する。

高木が次節の新潟戦に出場し、初得点を挙げるようなら、
1.新規加入組
2.シャドーストライカー
3.第6節での初ゴール-

というように武藤との共通項が多くなる。ここから不完全燃焼だったこれまでのはけ口を求めるような躍進が見られれば、中盤戦からの巻き返しと両ステージ連覇も不可能ではないはずだ。

第1ステージはリーグ戦全17試合に帯同したが、先発が3試合で途中出場が5試合と主力の仲間入りはならなかった。もともとシャドーの候補は多士済々で、実績抜群の石原のほか柏木陽介や梅崎司、李忠成や興梠慎三、ズラタンや武藤といった腕自慢が勢ぞろい。レギュラー争いはGKと同じくらいし烈なのだ。

出場時間が最も短かった横浜FM戦だけ1本も打てなかったが、8試合でシュート14本。どの試合でも旺盛にどん欲にゴールを狙った。湘南との開幕戦は後半開始からの登場ながら、チーム最多の3本のシュートを放ち、初得点の好機が何度もあった。5分、8分、13分の一撃はいずれも惜しいものだった。

高木は加入当初、「持ち味はドリブルでの仕掛けとシュート。同い年で前から仲良くしている原口(元気)とプレースタイルは似ているが、自分らしさを出して違う部分でアピールしたい」と売り込んでいた。その言葉通り、セカンドストライカーとしての強い意思と立ち回りは、決して多いとは言えない出場時間の中にも見て取れた。

直接狙えるFKと右CKのキッカーを任されることでも分かるようにキックの精度は高品質。東京Vのジュニアユースとユース出身とあり、技術の高さは名門仕込みなのだ。

第1ステージ優勝に貢献したという意識が高木にはないだけに、今ステージに懸ける意気込みは相当なものだ。そんな折、広島との第3節で先発の機会が巡ってきた。4月29日の甲府戦以来、およそ3カ月ぶり。

前半24分、柏木の長いパスに鋭く反応してペナルティーエリアへ走り込んだ。水本裕貴のチェックをかわした後、佐々木翔に背後から足を掛けられてPKを獲得。GK林卓人が手にしていたボールを奪い取った高木は、自らペナルティースポットにセットした。「俺が蹴って初得点を決める」という意地がにじんだ。

しかし右足で左側に放ったシュートは林の好守に阻止され、こぼれ球に突っ込んだ槙野智章のヘッドも右へ外れた。

この10分後、高木は右の関根貴大へ巧妙にふわっと浮かせたパスを配給し、関根の先制点を導いた。しかし広島の2倍近い23本ものシュートを打ってもこの1点しか奪えず、逸機を重ねていると後半に2失点して逆転負け。今季20試合目での初黒星となった。

高木は敗戦の責任を一人で背負い込んだ。タオルで顔を覆いながら、平川忠亮に付き添われて試合後のあいさつに向かった。号泣する背番号31に西川周作や宇賀神友弥、森脇良太、李らが次々と肩をたたいて励まし、慰めた。

取材場所で発したほとんどの言葉が、厭世(えんせい)的だったから驚いた。

「プレー自体は悪くなかったが結果がすべて」「自分のミス」「残念」「悔しい」「切り替えるのは簡単ではない」「立ち直れるのか正直分からない」「自分にとってこれ以上残酷な結果はないかなと思う」

これまで同じようなケースに立ち会ってきたことは枚挙にいとまがないが、ここまで悲観的な言葉を連ねた選手は高木だけだ。私は少し心配になり、囲み取材の後に1対1で話をすると、彼は悔しい胸の内をぶつけてきた。武藤やズラタンが結果を出す中、自分だけが取り残された寂寥感もあったという。チャンスをもらった試合で成果を出せないのはプロらしくないとも言った。

PK失敗を除けば、広島戦は鮮やかな崩しのパスと決定打が2本ずつあったし、次の名古屋戦も柏木へ見事なダイレクトパスを送ってオウンゴールにつなげた。3試合連続で先発した甲府戦は初のフル出場。その前半16分、興梠が那須大亮から打ち込まれた縦パスをワンタッチで落とすと、高木が左足で強烈な中距離弾をお見舞い。バーをたたくすごいシュートだった。後半13分には決定的な右足シュートがGKに防御され、今回も初ゴールこそものにできなかった。それでもシャドーが担うべき必須プレーを随所に披露。1点決めてしまえば、武藤のように得点を重ねる可能性は大きいと見る。

広島戦後、二人きりの会話中に出たひと言が忘れられない。それは17年前、大原サッカー場で小野伸二から聞いた言葉そのものだった。高木も小野もこう言った。

「観客はお金を払って見に来てくれているので、それに応えなければいけない。また見に来たいと思わせるプレーをしないといけない」

私はこの言葉を聞いて初めて安心した。プロフットボーラーとしての使命感、義務感が強いが故にネガティブな発言をしただけ。こういう気概があれば、浦和で必ず成功すると確信した。

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