浦和フットボール通信

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<ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】「鳥栖戦の采配には、疑問が残るものがあった」Jリーグ2ndステージ第13節 vsサガン鳥栖<興梠、西川、宇賀神、柏木、高木、監督コメントあり>(2015/10/4)

今日のポイント!「鳥栖戦の采配には、疑問が残るものがあった」

鳥栖がゴール前を固めて、5DFにして2ブロックを形成してくることは試合前から予想されていたことであった。しかし、頭で分かっていっても実際に退いた相手を崩すのは至難の業である。梅崎司選手や柏木陽介選手たちが「ローテーションしながらコンビネーションで崩して行こうと言うイメージだった」と試合後に話していた。

オフ・ザ・ボールの動きから上手くポジションを入れ代わったり、相手DF釣り味方にスペースを作ったり何度も動き直しをしていた。「ローテーションを意識し過ぎた。一瞬、流れたスペースでコンビネーションを狙いボールの出し手の選択肢を作れれば良かった」と宇賀神友弥選手が話していたように、ローテーションで崩す意識が強すぎたのかも知れない。

鳥栖の守備を上手く引き出せない中でパスやクロスの精度は、正直言って厳しいものがあった。ミシャ監督は「ラストパスやシュートの精度が足らなかった。ドリブルで相手の守備を抜き去れば、ほころびが出来て味方がフリーになれた。止まった状況で、パスを入れても崩せない」と試合後の記者会見で厳しい表情で話していた。ミシャ監督も打開策は分かっていたのだ。

だが、ドリブル突破が期待出来る高木俊幸選手をもう少し早いタイミングで起用しても良かったと思うし、関根貴大選手の交代も残念であった。選手交代には、ミシャ監督の考えがあり意味のあるものだと思う。日頃から「全ての責任は私にある」と話しているミシャ監督なので、敢えて言わせて下さい。鳥栖戦の采配には、疑問が残るものがあった。

高木選手は「流れ的にもどこを代えるか、監督も悩んだと思う。勝ちに行くしかない中で、誰を代えようか難しそうだった。柏戦でもそうだったように、時間が少ない中でもチャンスはあれば点が獲れると思った。1つチャンスは作ったが、イチかバチか・・・。緩かったんで、逆に浮かすぐらいの気持ちで撃てば良かった」と後悔していた。

また、カウンターから脅威に晒されて、西川周作選手のファインセーブが無ければ勝ち点1すら失うところであった。結果だけを見れば、勝ち点3を獲れなかった。だが、勝ち点1を獲れたことをポジティブに考えて、この勝ち点1を意味あるものにするために残り4試合に全てを掛ける。

1-1の痛み分け

決して内容は良くなかった鹿島戦を耐え抜いて、収めた勝利の流れを止めたくは無かった。鹿島戦を出場停止だった那須大亮選手が復帰して、これまで闘って来た3DFに戻った。リーグ終盤のアウェイ鳥栖戦とは、浦和にとっては鬼門だった。だが、今シーズンはホームで闘える優位な立場を生かして行きたかった・・・。

埼玉スタジアムの屋根の影が大きくピッチを覆った14時、鳥栖のキックオフで試合が始まった。ミシャ監督が「11人が自陣に退いて、守りを固めてカウンターを狙う。予想していた通りだった」と試合後の記者会見で話したように、鳥栖は両ワイドの吉田豊選手と崔誠根選手が下がり5DFとし、2ブロックを形成し守りを固めて来た。

守りを固めながらも鳥栖は、DFラインを高く保ちコンパクトにして、チャンスを覗い縦に早い攻撃を仕掛けてきた。だが、主導権を握ったのは浦和であった。ボールを保持しながら、サイドに揺さぶりを掛けたり、セカンドを拾い2次攻撃、3次攻撃でゴールを狙って行った。

13分には、宇賀神友弥選手からバイタルエリアの深い位置でパスを受けた武藤雄樹選手が仕掛けて中に折り返すも林彰洋選手がキャッチ。14分には森脇良太選手が起点になり浦和らしいパス回しから、ペナルティーアーク付近で柏木陽介選手がミドルシュートを放つが決まらず。

18分には混戦から関根貴大選手が拾って走り込んで来た阿部勇樹選手へとパスを送り、阿部選手が強烈なシュートを放つがこれも決まらずチャンスを作るが、鳥栖のゴールを抉じ開けることが出来ずにいた。

もどかしい展開の中、23分、柏木選手の左CKを中央で那須選手がヘッドで武藤選手へ、武藤選手が右足で狙ったシュートは林選手に止められてしまうが、そのこぼれ球を興梠慎三選手が冷静にゴールに押し込み浦和に待望の先制点が生まれた。

興梠選手は「こぼれ球だったけど、詰めていることに意味があった。ラッキーな形だが、1点は1点だ!」とニヤリと自慢げに話しながらも「それよりも・・・。自分の出来が良くないので・・・。相手に研究されていて、自分のところにボールを入れさせないようにして来て、キープも出来ない。ゲームの入りが良いと全体に調子が上がって行くが、ミスしちゃいけないプレシャーで出来なくなった。後ろからの持ち運びも行かない中で、詰まった状態で縦パスも詰まっていた。前に激しく来ていて、相手のDF3枚と再度がシャドーに食いついて来ていたので、そこを狙って押し上げて行くところを狙っていた」とワントップの動きが厳しかったことを話していた。

先制点が決まり、浦和がこれで楽に闘えると思った矢先の31分、鳥栖のカウンターが上手く嵌った。池田圭選手が宇賀神友弥選手に競り勝ち水沼宏太選手へとパスを送り、水沼選手のパスに抜け出した吉田豊選手のシュートは、西川周作選手の足に当たり大きく跳ね上がりながらゴール右隅へと吸い込まれてしまった。

宇賀神選手は「自分が失点に絡んでしまった。相手を誘って、わざとスペース空けて獲るイメージだった。誘ったことが裏目に出てしまった。いつもなら、狙ったところで奪えたのに・・・」と悔やんでも悔やみ切れないようであった。

西川選手は「相手のチャンスは、あれだけ!足に当てて止めたかった。バウンドもしたし、タイミングの問題だった。外に蹴り出せるか?!って感じで飛び出したが・・・。悔しかったぁ」と失点シーンを振り返った。

前半終了間際、阿部選手から絶妙なタイミングで宇賀神選手へパスが通り、宇賀神選手のクロスをニアで興梠選手が合わすも決まらず、武藤選手のクロスに梅崎選手が狙うも決まらず、柏木選手の左CKからのこぼれ球を槙野智章選手が豪快なオーバーヘッドで狙うが枠を捉えることが出来ずにいた。

柏木選手は「退いてくるのはなんとなく理解出来ていたし、難しい試合になるのは分かっていた。セットプレーから点が獲れたのは、大きかった。けど、チャンス1本でやれて向こうの士気を上げることになってしまった。サイドからの3人のローテーションを意識していたが、個人に付いてくるよりは走って来る選手に対して入れ代わってマークが付いて来て、そんなに間が空かなかった」とマークの受け渡しが鳥栖はしっかりと出来ていて、スペースも厳しい状況であった。前半、浦和が放ったシュートは8本、鳥栖が放ったシュートはたったの2本で最初のシュートがゴールに結びつき、1-1で折り返すこととなってしまった。

鳥栖の堅い守備を何とか崩そうとミシャ監督は、仕掛けて行くプレーとオフザボールの動き出しの質を上げて行くことを要求して、後半のピッチへと選手たちを送り出したのだ。

しかし、後半も主導権を握りながらも崩し切れずに苦しい時間が続いた。ミシャ監督は、攻撃のリズムを変えようと関根選手に代えてズラタン選手を投入し、ズラタン選手のワントップ、興梠選手をシャドーに落とし、梅崎選手を右のワイドで起用。65分には、槙野選手の持ちあがりからのクロスをDFがクリアしたこぼれ球を梅崎選手がシュートを放つも身体を張ったDFにブロック、その零れを梅崎選手がもう一度狙うがまたもDFが大きな壁となり立ちはだかっていた。

最後は、武藤選手がそのこぼれ球を拾ってシュートを放つがゴール上へと外れてしまい埼玉スタジアムは大きなため息に包まれた。押し込まれ続ける鳥栖は、72分に疲れが見え始めた右ワイドの吉田選手に代えて福田晃斗選手を投入してきた。鳥栖の選手交代直後の73分、浦和にビックチャンスが訪れた。阿部選手から興梠選手、森脇選手へとテンポ良くパスが繋がり、森脇選手のアーリークロスを左から走り込んだ宇賀神選手がシュート!しかし、上手くタイミングを合わすことが出来ずゴール上へと外れてしまった。

浦和は打開策を求めて、那須選手から青木拓矢選手を投入し、阿部選手をDFラインへと下げた。鳥栖は2枚目のカードとして、池田選手から早坂亮太選手を投入。浦和は、何度も、何度も攻撃を組み立て直すが、それを逆手にとった鳥栖は、76分に林からロングフィードを上手く前線で逸らされ早坂選手が抜け出して西川選手と1対1のビックチャンスを作られてしまった。だが、ここは西川選手が早坂選手の動きを冷静にみて左足1本でファインセーブを見せた。

西川選手は「早坂さんと完全に1対1。あとは、気持ちで当たれ!って感じだった。1失点目と同じような状況だったので、その経験を生かして上手く弾けた。連勝が止まったが、負けなかったことが大事だ」と話した。

浦和は最後の切り札として、梅崎選手に代えて高木俊幸選手を投入。相手のカウンターの脅威にさらされながらも攻め続けた。高木選手は「相手がブロックを退いていて、なかなか崩し切るのが難しく、嫌な感じだった。サイドから仕掛けたり、シンプルにクロスを入れたり、遠目からシュートを撃ったりすることが有効だった。鳥栖のカウンターが最後まで油断出来なかった。ワイドのポジションだから、最終ラインまで戻らないといけないのであの時間帯でもきつかった。何で流れが悪いのか分からない。前節は、ボールが前で収まらず拾われて攻撃された。今日は逆の展開で退かれた状態で攻めないといけない状況だった」と厳しい表情で話し、打開策を模索していた感じであった。

試合終了間際の45+4分には、高木選手の仕掛けから武藤選手がファーサイドで放ったヘディングシュートはクロスバーに直撃!最後の笛が鳴るまで攻め続けた浦和ではあったが、1-1の痛み分けとなってしまった。

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