浦和フットボール通信

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<ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】Jリーグ・チャンピオンシップ準決勝 vsガンバ大阪<李、柏木、平川、西川、関根、阿部コメントあり>(2015/11/29)

今日のポイント「勝負を分けたのは・・・」

しっかりとしたブロックを形成し奪ったら鋭いカウンターを見せるG大阪に対し、ボールの保持率は浦和が圧倒していた。

前線からの守備に貢献していた李忠成選手は「負けた気がしない。負けるかねぇ・・・。コンビで崩せると思った。バランスを崩さないように遣ろうと思っていた。信じがたい現実だ。宇佐美も何も出来なかったしね。勝たなきゃいけない試合だった」と話した。

柏木陽介選手は「東が当たっていた。それに尽きる」とファインセーブを連発した東口選手を褒めた。そして「終盤に点が取れていたら・・・。決め切れない勝負弱さがあった。PK戦に入ることを考えていたら、丹羽ちゃんのバックパスのアクシデントでみんなの気が緩んだ瞬間だった。ガンバは、普段入らないようなシュートが入るが、こっちは入らない。サッカーの内容で負けたと思っていない。今日は、イラついたことしか話せない」と話した。

平川忠亮選手は「紙一重のところで全てが決まった。上手くみんなは、ボールを動かしながら相手を走らせていた。後半の最後に、武藤のヘディングが決まっていたらね・・・。色んなチャンスがあって決め切れない中で、向こうは決めた」と話した。

李選手と柏木選手、平川選手の言葉が全てを象徴していた。主導権を握りながらもチャンスが生かせずに、疲労が蓄積してしまった。それが、G大阪の狙いなのは試合前からみんな分かっていたことであった。だが、それを打ち破ることが出来なかった。

試合後に俯きかげんに武藤選手は「今日のゲームの敗因は、僕が最後に決め切れなかったことだ。自分の中では、ピンポイントでセンタリングを受けてヘッドで叩き込むだけだった。GKに弾かれた。もしかしたら、逆サイドに振っても良かったかも知れない。決めて、あそこで試合を終わらせたかった。冷静なシュートが出来なかったのは、実力不足だ」と自分自身を責めていた。だが、誰も武藤選手のことを責めることは出来ない。

長谷川健太監督は「一瞬のミスが命取りになると思っていた。延長でまさか丹羽があのようなプレーをするとは思わなかった。それが、逆にレッズの選手の集中を削いだ感じになった」と話していたが、スキルの高いブロックを形成して、鋭いカウンターを仕掛けるG大阪を浦和は上回ることが出来ずに、疲れきった延長後半に一瞬の隙でやられてしまったのだ。フットボールの質を考えれば、浦和の方が良いフットボールをしているのは事実だ。だが、ボールを保持して良いフットボールをしていても、それが勝利に結びつかない現実を突きつけられた試合であった。

死闘を征したのは・・・。

雲一つない大空が広がり、埼玉スタジアムの屋根がピッチに影を落としていた。チャンピオンシップ準決勝に試合前から、G大阪のファン・サポーターは大旗を振りチャントを歌いボルテージを上げて行った。一方、ホームでG大阪を迎え撃つ浦和を愛する人々は「信念を貫ぬけ浦和レッズ、その為に今日も戦おう」と横断幕を掲げた。

浦和は、チャンピオンシップ決勝を見据えて、首を怪我している興梠慎三選手を控えにも入れずに温存し、リーグ最終戦で好調だった李忠成選手をワントップに起用した。ピッチに射し込む日差しを考慮してなのか、コイントスに勝ったG大阪が浦和のゴール裏を背負って闘うエンドを選択し、浦和のキックオフで試合が始まった。

試合開始直後から主導権を握ったのは、予想通り浦和であった。4分、左斜め後方の李選手の落としのボールに素早く宇賀神友弥選手がシュートを放っていった。宇賀神選手は「シュート撃つ意識を高くもって、流れを引き寄せようとした」と積極的な姿勢で試合に入っていった。

14分にも柏木陽介選手の右CKのこぼれ球を拾った梅崎司選手のクロスに阿部勇樹選手がヘディングシュートを放つもゴール僅か左に逸れていってしまった。G大阪はしっかりとブロックを形成し、カウンター狙いが明らかであった。

西川周作選手は「G大阪は、明らかにカウンター狙い。前半、リスクマネージメントは出来ていた」と話していたが、常にG大阪のカウンターの脅威に晒されていた。

19分には、パトリック選手がカウンターでドリブルでDFを引き付け持ち上がり阿部浩之選手へ、エリア内の右スペースに抜け出した阿部浩之選手のシュートは、ポスト左を直撃してゴールラインを割った。

23分には、柏木選手のスルーパスを受けた宇賀神選手がシュートを放つも東口順昭選手の正面と浦和は、チャンスを作るもG大阪のゴールを抉じ開けることが出来なかった。関根貴大選手も右サイドを何度も突破を試みるものの、藤春廣輝選手のマークがきつく身体を張った藤春選手の守備で良いクロスが供給出来なかったが、CKを前半だけで5本も獲得していた。

関根選手は「奪われた後の切り替えは、全員がやっていたので、前半は相手の良いカウンターの場面が少なかったと思う。決め切らないとこういう展開になるんだ・・・」と下を向いた。前半に浦和が放ったシュート8本に対し、G大阪はたったの2本であった。

浦和がゲームを支配していたが、ある意味ではG大阪のカウンターの脅威に晒されるG大阪のゲーム運びだったとも言える。

試合が動いたのは、後半の立ち上がりであった。47分、那須大亮選手から森脇良太選手へとパスを出した瞬間、大森晃太郎選手はこのパスを読んでいた。大森選手が素早くカットして前線に走り込んだ今野泰幸選手へとショートカウンターを仕掛け、今野選手が豪快にゴールへと叩き込んだ。

浦和の一瞬のミスを突くG大阪の攻撃で失点をしてしまった浦和であったが、チームは落ち着いていた。失点はしたものの、攻撃的な姿勢は崩さず、49分には阿部選手、武藤選手、関根選手と浦和らしいパス回しから梅崎選手がシュートを放つが決め切ることが出来なかった。

その直後にもオーバーラップした槙野智章選手のマイナスのクロスを梅崎選手がシュートを放つも東口選手の好セイブで阻まれてしまった。浦和は、G大阪を一方的に自陣に押し込むワンサイドゲームが続く中、武藤選手のシュートはフィットせず、李選手のシュートも決まらず、焦れる展開となった。

すると、この展開を打破するためにミシャ監督は、梅崎選手に代えてズラタン選手、那須選手を代えて青木拓矢選手を投入し、一気に2枚代えの勝負にでた。前へ仕掛ける意識がより高くなった浦和は、71分に関根選手の粘り強いドリブルを大森選手に奪われてしまうが、すぐに関根選手が奪い返してエリア内に進入、後ろから大森に倒されてPKと思いきやノーホイッスル。場内は騒然となったが、関根選手はプレーを続けて右CKを獲得。

CKが始まる前に、G大阪は宇佐美選手を下げて倉田秋を切り札としてピッチへと送り込んで来た。そして72分の柏木選手の右CKを森脇選手が合わせたヘディングシュートは、ポスト直撃!そのこぼれ球をズラタン選手が執念で、頭で押し込み同点とした。

関根選手は「積極的に行って、自分の流れを作ろうと思った。自分の中では、倒されてPKだと思ったが、笛が聞こえなかったから粘ってCKに繋がった」と話した。

「悔しいです。情けないです。個人的も最後まで闘いたかった。両足が攣ってしまって・・・」と試合後に悔しがっていたのは宇賀神選手だった。両足を攣った宇賀神選手に代わり、平川忠亮選手が最後の交代枠として75分にピッチへと送り込まれた。

平川選手は「焦れないでボールを動かすことを意識した。ガンバは、ゴール前にブロックを退いていたから、クロスを入れても跳ね返されるから、一端下げてモリが斜めにクロスを入れるようにした」と話しているように、浦和はアーリークロスやドリブルで相手DFを釣ったり、剥がしたり攻め続けた。

そして、後半終了間際の90+4分には武藤選手のクロスをファーサイドに流れたズラタン選手が、平川選手に落とし、平川選手からパスを受けた森脇選手がダイレクトでクロスを上げると左ゴールライン際に走り込んだ武藤選手がヘディングシュート!!東口選手がファインセーブ!弾いたボールはクロスバーに直撃!!ビックチャンスを決め切れずに、1-1で延長戦へと突入した。

延長に入ってもしっかりとしたブロックを形成してカウンターを狙うG大阪とボールを保持しながら我慢強くチャンスを覗う浦和の図式は、変わることは無かった。ただ、違いがあるとしたら、ドリブル突破を何度も仕掛けていた関根選手の足が釣ったり、森脇選手も怪我していた左のふくらはぎを気にしたりと疲労の色が濃かったのは浦和であった。

関根選手は「120分通して良いコンディションで出来なかった。身体の強さがまだまだ。大事な試合で力が発揮出来ない。悔しいです」と下を向いた。

延長前半を1-1で折り返して、PK戦が頭をよぎり始めた118分、本当に一瞬の隙であった。ズラタン選手がプレスを掛けると、丹羽大輝選手の東口選手へのバックパスが綺麗な弧を描いたボールの行方を固唾を飲んで見守る両チームだったが、ポスト左に直撃!

そのこぼれ球を拾った東口選手が、前掛りになっていた浦和の背後を突くカウンターを仕掛けて来た。遠藤選手、パトリック選手と繋ぎ、米倉恒貴選手のクロスを藤春選手が右足を振り抜いた。

阿部選手は「遠いから分からないけど、入るのか分からなかった。その後が、鍵だった。何を言っても一緒だ」と話した。関根選手は、ぼそりと「面白いですね。あのようなシーンから裏を取られて・・・。それが、サッカー。そういうことが起きる。いかなる時でも気を抜いたらいけない。実力が無かった。誰もが、入ったと思った瞬間だった」と話した。

G大阪のカウンターに対して平川選手は冷静だった。「バックパス、入るかなぁ?こういうのが入ちゃうのかなぁ?って一瞬思ったが、これは自分たちの力では無い。プレーを止めた訳ではなく、集中はしていた。みんながきつい中で、僕は途中から入ったし、僕がカバー出来れば良かった。相手が2枚フリーでいたから、選択肢で中を切りながらだった。いち早く寄せられたが、寄せれた分が周作のブラインドになってしまった。ただ、中を消さないわけにはいかなかった」と失点シーンの責任を感じていた。

西川選手は「シュートを撃たれたシーンは見えなかったけど、平さんは必死に戻ってきてくれた。枠に来たボールは、止めたい。ワンプレーが流れを変えた。東口は、運を引き寄せるプレーをしていた。この悔しい気持ちを受け止めて行くしかない。出来れば前に出て行き、ミスを恐れないトライをもっとしていきたい」と敗戦をしっかりと受け止めて前を向いた。

延長のアディショナルタイムには、遠藤選手のFKをパトリック選手が合わせてダメ押しの追加点を決め1-3と浦和を突き離して勝利を収めた。

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