河合貴子のレッズ魂ここにあり!「経験を積んで~レッズレディース」
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
皇后杯では苦しかった今季を吹き飛ばす活躍を!
今年も残すところあとわずかかとなった。今年のレッズレディースは、1月1日に開催された皇后杯決勝の日テレベレーザ戦に0-1と惜敗し、悔しさを噛みしめるスタートとなった。
チームの主軸となる経験豊富のベテラン選手が、毎年欠けていく中で昨シーズンは、勢いに乗る若さでリーグ優勝を果たした。そして、2冠達成の目標を掲げて臨んだ皇后杯であったが、ゲーム運びの上手さが際立つ日テレが5年ぶりの優勝を飾ることとなってしまった。
本当に悔しい2015年の幕開けとなったのだ。そして、今シーズンのなでしこリーグでは、レギュラーシリーズを6勝5分け7敗で6位とエキサイティングシリーズ上位リーグにギリギリに滑り込み、エキサイティングシリーズでは1勝1分け3敗と若い旋風を巻き起こすことは出来なかった。
レッズレディースは、昨シーズンのリーグ優勝に胡坐をかいていた訳では決してない。リーグ連覇の期待が掛かる中、日本代表経験がある長船加奈選手や将来を有望視されている白木星選手や既にレッズレディースの一員として活躍してきた清家貴子選手と平尾知佳選手が加入して万全な体制を整えて臨んだ。
だが、堂園彩乃選手などが抜けた穴は大きかったし、守備を安定させ後方からのビルドアップに期待が掛かっていた長船選手の長期離脱も計算外の出来事であった。
吉田靖監督は口が酸っぱくなるぐらい「若さ故に、勝って調子に乗って勢いがある時は良いが、崩れると脆い」と言って危惧していた。その危惧が、象徴されるような今シーズンになってしまったことは否めない。
吉田監督は「今シーズンは、出だしで躓き不安定だった。昨年は勢いに乗ったが、今年は悪い面が出た。実力は変わっていない。リーグで負け込むと修正するのが難しい。不安定だったのは、経験の差からだ。連続失点してしまったり、粘り切れない面があった。日テレには、阪口や石清水のような経験を積んだベテラン選手がいる。上位6チームは、対戦した時に、勝てる部分も負ける部分もあった。だが、日テレは間違いなく№1だった。安定していた」と悔しそうに話した。
フットボールのチームにおいて、百戦錬磨の経験から試合の流れを読み、チームを鼓舞したり落ち着かせるベテラン選手の存在が、如何に重要かを思い知らされた。
しかし、レッズレディースには百戦錬磨のベテラン選手は1人も所属していないのが現状だ。その穴を埋めるように、吉田監督は選手と真摯に向き合いプレー面だけでなく心の成長も願って厳しい口調で檄を飛ばしている。
「彼女たちは、もともとポテンシャルが高い。もっと出来るはずだ」と吉田監督はいつも言っている。
今シーズン、本来のFWのポジションではなくサイドハーフでプレーする機会があった吉良千夏選手は、慣れないポジションで試行錯誤して苦しんでいたように感じだ。
ところが、吉良選手本人は「出来ればFWでプレーさせてもらいたいが、FWだって動きの流れでサイドハーフにポジションを取ることもある。サイドハーフを経験することによって、ポジションの幅が広がった。柴田選手の動きを見て考えたり、サイドハーフがボールを持った時のFWの動きとかいろんな発見があった。ネガティブに考えるとプレーが出来なくなるから、プラスに考えていた。
吉田監督からは、「迷わせたなぁ。悪かったなぁ」と言われたけど全然自分はそう言うふうに感じていなかった」と嬉しそうに笑った。目を輝かせ笑顔を見せて話す吉良選手の確かな成長を感じられた。
また、昨シーズンの終盤で怪我をしてリハビリ組みでスタートした猶本光選手は「苦しいと言うか、上手く回っていない感じだった。選手が抜けたこともある。昨年と同じサッカーをやろうとして、相手も研究して来た時に自分たちの引き出しが無かった」と今シーズンを振り返っていた。だが、その引き出しを作るのは猶本選手本人であることを自覚しているように感じた。
同じくリハビリ組でスタートした後藤三知選手は「尾てい骨を強打して、オフは治すために費やし、シーズン最初からの準備が出来なかった。コンディションの面が、難しかった。怪我と一緒に歩んだシーズンだった」と如何にコンディションが大切なことだと改めて痛感していた。
そして「昨年は、勢いを伴って1点差でも結果が付いて来た。先に失点すると勝つのが難しい状況になり弱気になりそうな時に、踏ん張って挑戦して行く大事さを感じた。不甲斐ない。意気地ない。闘いに行く姿勢を感じさせられるのは、ピッチに立つ責任だ」と闘うメンタル面を強調し「徹底した強味が出るような成熟と実行力、準備がどのくらいできるのか?!90分通して相手を突き離す実力が必要。今シーズは、サイドバックの背後を突かれた。相手は、浦和が前からプレスに行くことも分かっている。上手く行かなくなった時に、基礎的なコンセプトに修正する力が大事だ」と話した。
苦しい試合展開の状況下での修正力は、決して1人の選手の力では出来ない。チーム全体の力が不可欠である。責任感が人一倍強い後藤選手は、チームを纏め上げるキャプテンとして感じていた。
リーグ優勝連覇の栄光に手が届かなかったが、この苦しかった1年を通して選手たちは様々な成長を遂げたシーズンだったと言える。
吉田監督は、今シーズンのワーストゲームをエキサイティングシリーズの新潟戦とINAC戦をあげ「この2試合は完敗だった。INACは縦に早い攻撃をして来た。変化の幅の広さがまだまだだった」と話し、ベストゲームは吉田監督がNo.1という日テレに2-1と逆転勝利を収めた試合をあげていた。勝負の世界は、勝つことも負けることもある。日テレ戦で魅せた挑戦者として恐れることなく闘った姿が、選手たちの持てる力を引き出して勝利に導いたと言えるだろう。
今シーズン、残念ながらレッズレディースは、安定した闘い方が出来なかった。だが、レッズレディースにベテラン選手がいなくても、大きな伸びしろがある。経験を重ねることが、大きな力になる。
今シーズンは、まだ終わっていない。皇后杯をあと3試合勝ち上がれば、タイトルが待っている。一発勝負のトーナメントの厳しさはあるが、挑戦者として立ち向かい、リーグ戦の闘い中から得た全てのものを出し尽くして、また経験を積んで行く。そして、2016年の新しいシーズンへと繋げていく。
Q.疲労回復の重要なことを教えて下さい。
A.疲労回復には、食事・入浴・睡眠が3大要素です。シャワーだけではダメです。しっかりと入浴をして疲れをとります。3大要素で1日の疲れをしっかりと取って、また運動することと疲労回復を繰り返していくと、今まで以上に回復してパフォーマンスが上がる超回復になっていきます。例えば、最初のパフォーマンスを100とすると運動による疲労でパフォーマンスが80に低下します。回復することで100に戻ります。しかし、使った筋肉はトレーニングにより徐々に増えて行くので、運動と回復の繰り返しでパフォーマンスが1120へと上がって行くのです。回復をしないで運動をし過ぎるとオーバートレーニングとなりパフォーマンスが落ちてしまいます。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/