浦和フットボール通信

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【河合貴子の試合レビュー】第95回天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝 vs G大阪戦<李、阿部、梅崎、興梠、西川、森脇、高木、ペトロヴィッチ監督、長谷川監督コメントあり>(2016/1/1)

今日のポイント!!

選手たちは、最後の笛が鳴るまで全力を出し切って闘った。だが、結果は伴わずに敗者となった。柏木陽介選手の不在を言い訳にしたくない。だが、長谷川健太監督は柏木選手の不在を上手く利用していた。

試合後の記者会見で長谷川監督は「柏戦で柏木が怪我した後に、ダブルボランチが2枚とも落ち(DFラインに入る)ピボットの所に入る。浦和はサイドの攻撃に圧力が掛かる。サイドが押し込んで来る圧力を感じてDFラインが下がった。前線の選手にプレスに行かせて、ラインを高く取れと話した。最後は危ない場面があったが、内田が良いプレーをしてくれた。井手口がボランチに入って、今ちゃん(今野選手)が最後まで良いパフォーマンスだった」と笑った。柏木選手の不在の浦和を分析して長谷川監督は、見事に策を練って修正していたのだ。内容が良く、G大阪を圧倒して負けたのではない。確かに圧倒していたが、G大阪の策に嵌ってしまった感は否めない。

また、天皇杯で好調を見せていた李忠成選手は「相手より先手が取れれば良かった。完璧な崩しがなくて負けた。ガンバは、うちに対して自信があるんだ。ヤットさん(遠藤選手)のように流れを感じ取れる選手がいて、リラックスしていた」と悔しそうに話した。確かにG大阪の選手たちは、リラックスしていた。選手バスから降りて会場入りした浦和の選手たちは、みんな眉間にしわを寄せたいが、G大阪の選手たちはバスから降りるときにスタッフとハイタッチしてこの決勝の舞台を楽しんでいた。その光景を見たときに、前日練習後に鈴木啓太選手が「勝ちたい気持ちを冷静にコントロールすることが大事」と言っていた言葉を思い出してしまった。G大阪の選手たちは、上手くメンタルコントロールが出来ていた。

浦和の前に立ちはだかる大きな壁を打ち破り、タイトルを1つ獲ることが出来たら、浦和は変われると思う。だが、その大きな壁を打ち破るには険しい道が待っている。

阿部勇樹選手が「新年早々笑えなかった。本当に申し訳ない。結果が出せず、最高の始まりにならなかった。ここから上がって行くしかないんだ。やってきたことをブレてはいけない。16年1発目がダメだったが、1年後に昨年は最高だったという1年にしたい。タイトルを獲れれば、進んで行ける。今日、勝ってタイトルを獲り続けて行きたかったし・・・。悔しさしか残らない」と唇噛んだ。そして「終わった時に・・・。新年なのに、笑えなかった。残念。啓太とか最後だったのに、良い花道を作ってやりたかった。それだけが残念」薄らと目に涙を溜めていた。本当に、悔しく、情けない1年の始まりとなってしまったが、この敗戦を胸に刻み、今年こそはタイトルを絶対に獲る!キャプテンの阿部選手の決意が心に突き刺さった。

またもG大阪の前に屈することに


ピッチには、栄光を手に入れることが出来きる勝者と何も手に入れることが出来ない敗者に分かれる。両チーム共に、目指すは日本一の勝者だ。新しい年の幕開けにふさわしい天皇杯の頂上決戦は、浦和とG大阪のシーズン5回目の対戦となる好カードとなった。

浦和のゴール裏には、浦和の勝利を信じて紅白のおめでたいビジュアルが出現し選手たちを鼓舞して、スタジアムの雰囲気を華やかなものにしていた。

準決勝・広島戦で3-0と勝利して勝ち上がってきたG大阪は、同じスターティングメンバーで挑んできた。準決勝・柏戦で延長までもつれ込み1-0と勝利した浦和であったが、柏木陽介選手が左膝を負傷し、決勝を欠場することになってしまった。

また、ミシャ監督は「うちのサイドは運動量が必要。関根は、2試合フル出場している。途中から入れた方が、1対1のドリブルやスピードが活きると考えていた」と試合後の記者会見で話していたように、関根貴大選手に代えて梅崎司選手を起用し、柏戦で温存させ途中出場させた興梠慎三選手と李忠成選手をスタートから起用して、スターティングメンバーを入れ替えてきた。

G大阪のキックオフで始まった試合は、立ち上がりからG大阪が仕掛けて主導権を握っていった。4分、宇佐美貴史選手が左サイドからドリブルを仕掛けると浦和のDFラインはズルズルと下がり、ペナルティーエリア内に進入した宇佐美選手がゴール前のパトリック選手へと合わせて来た。

梅崎選手は「チームも個人も良いゲームの入りが出来なかった」と話し、森脇良太選手は「最初の5分は、宇佐美らしいプレーを出させてしまったが、5分以降は自由にプレーをさせなかった」と話した。

G大阪に主導権を握られる中で、槙野智章選手が接触で右手の平を負傷して応急処置でピッチに戻ったが、尋常な痛みでは無かった。試合後、槙野選手は「今から病院に行きます。手の平が、バックリと開いて肉も見えている」と本当に痛そうであった。10分、その槙野選手が痛みに耐えながらもシュートを放つも決まらず。徐々に流れが浦和へと傾き始めた。

12分には米倉恒貴選手が負傷により井手口陽介選手と交代。G大阪は、ボランチの今野泰幸選手をDFラインに下げて、井手口選手をボランチで起用してきた。

浦和は、サイドから厚みのある攻撃を見せ始めた。20分には、宇賀神友弥選手がドリブルでゴールを狙うも相手DFの身体を張った守備に阻まれてしまった。浦和がサイドの攻撃に偏ると中盤のスペースを上手く遠藤保仁選手に使われるようになってしまった。

そして、浦和陣内でボールを奪うと阿部浩之選手がドリブルで仕掛けて、DFのこぼれ球を拾った倉田秋選手のスルーパスにパトリック選手が抜け出して先制点を叩き出した。

しかし、その4分後の36分に浦和は、青木拓矢選手が起点となって梅崎選手へ。梅崎選手が宇佐美選手を交わして切れのあるクロスを入れると、李選手がダイビングヘッドでゴールを狙うがポストに直撃!その跳ね返りを興梠選手が素早く左足でゴールへと押し込んで同点とした。一進一退の攻防となった前半を1-1で折り返すこととなった。

後半立ち上がりから、梅崎選手がミドルシュートを放ったり、李選手もエリア内でゴールを狙い浦和が主導権を握っていった。

しかし、53分遠藤選手の右CKをパトリック選手が槙野選手のマークを上手く外して右足を振り抜き豪快にゴールへと叩き込んだ。

G大阪にリードを許した浦和は、57分に梅崎選手に代えて関根選手、武藤選手に代えてズラタン選手と一気に2枚代えで勝負に出た。ズラタン選手投入によってシャドーのポジションから退き気味にプレーした興梠選手は「下がって、相手DFを1人引き付けたかった。ズラに一発パスを入れたかった。スペースを空けるために、中盤に下がったが、前にいるべきだった。ズラが入って高さがでたが、ガンバのセンターバック2枚も高さがあって、センタリングに対して強さがあった。いつも通りの崩しをやっても良かったと思う。後半の終わりは、苦しかった」と悔しそうに唇を噛んだ。

リードしたG大阪は、ブロックを作り守備を固めてカウンターを狙っていた。西川周作選手は「非常にアグレッシブな闘いが出来た。前半、全体的にバランスが悪かった。負けた原因は、うちはセットプレーでも獲れず、向こうは獲った。その差かなぁ・・・。完全にガンバは、退いてカウンターを狙っていたし、うちはチャンスはあるが、シュートで終われないし、シュートしてもキャッチされる。ボールの獲られ方も悪く、相手にチャンスを与えてしまう」と悔しそうに話した。

試合後、森脇選手は「2失点ともつまらないところからの失点だった。敗因?!なんでなんだろう・・・。何でこうなるんだろう?!こっちのシュートは入らず・・・。言い訳は出来ないが、ちょっとしたところだ。何で、あと1本のシュートが・・・。ここまで良い形で獲れているのに、最後で・・・、何でか・・・答えが出ない」と気持ちの整理が出来ていなかった。

退いてブロックを作るG大阪に対し、浦和は最後のカードとして宇賀神選手に代えて高木俊幸選手を69分に投入。高木選手は「やり切った感はある感じだが、達成感がない。開いて仕掛けて行けと言われてピッチに入った。1本シュートを撃ったシーンも足にきっちり当たらなかった。力が足りなかった。陽介君がいなくって、キッカーがいないから自分がって思っていた」と何とかして打開しようと考えていた。

82分、高木選手の右CKを槙野選手が合わせてゴールネットを揺らし同点かと思いきや、CKのポジション取りでファールを取られてノーゴールの判定になってしまった。

85分には、森脇選手のミドルシュートは東口順昭選手の好セーブに合い、アディショナルタイムの高木選手のドリブルシュートは枠を外れ、高木選手のクロスにズラタン選手が合わせるも決め切れず、攻め続けた浦和であったが、G大阪の堅い守備を崩せずに1-2でG大阪に敗れてしまった。

試合を通して、浦和が放ったシュートは何と20本!対するG大阪は9本であった。シュート数は遥かに浦和が圧倒しているたが、決め切ることが出来ずに、またG大阪の前に屈することとなってしまった。

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