[ハイライト動画付き] 勝負を分けた監督采配【河合貴子の試合レビュー】明治安田生命J1リーグ1st 第2節 vsジュビロ磐田<武藤、ズラタン、西川、遠藤、石原、柏木、ペトロヴィッチ監督、名波監督コメントあり>
今日のポイント「勝負を分けた、監督采配」
監督としてJ1初勝利を収めた名波浩監督の采配は、現役の選手時代と同じように冷静沈着で見事であった。磐田は、前線4枚がボールと人に対して激しいプレスを掛け、ボランチ2枚と4DFがボールサイドにスライドしながら浦和の攻撃を封じ込めていた。浦和に勝つために最善の策を練っていた。
さらに名波監督は、90分の試合を15分の6セットで区切り選手たちに指示を出していた。
「60分過ぎまでやりたい守備でしのげれば、浦和は焦ってバランスを崩してくる。つけいる隙がある戦いだ。だが、6セット目の入りでやられてしまった。ジェイを早めに入れることによって、浦和が永田というカードを切らざるを得ない状況を作り出したのは、非常に良かった。あそこで駒井、梅崎、チュンソンとか前の選手を1枚切れなくなったのも勝因だと思う。相手のメンバー交代に影響が出たと思う」とニヤリと笑った。
ミシャ監督は「リードされている時間帯も流れが悪くなかった中で1-1に追いついた。その後すぐに交代を考えたが、得点してから失点するのが早かった。同点に追いついてからもう1枚カードを切って、さらに圧力を強めていきたい思いがあった。その後の失点で次の交代を難しくしてしまった」と話した。
名波監督の読み通り、ミシャ監督は関根貴大選手に代えて永田充選手を起用した。それは、190㎝のジェイ選手と178㎝の遠藤選手とのミスマッチになるからであった。だが、関根選手を残しても良かったのではないかと思う。確かに森脇選手はフィードが上手いが、突破力には欠ける。また、ゲームの展開で選手交代が難しくなってしまったのは事実であるが、前に推進力のある攻撃的な選手を最後の交代枠で使っても良かったのではないか・・・。ミシャ監督は、勝負の掛けに出る采配が出来なかったのが残念でならない。
名波監督は、アディショナルタイムに最後の交代枠を使い切る余裕のある采配で勝利を収めた。
リーグ戦ホーム開幕、白星飾れず磐田に惜敗[武藤、ズラタン、西川、遠藤、石原、柏木、ペトロヴィッチ監督、名波監督コメント]
どんよりとした春の空が、埼玉スタジアムを覆い尽くした。Jリーグホーム開幕戦となった磐田とは、3年ぶりの戦いである。ACLから4連戦目となる磐田戦は、ワントップにズラタン選手、3DFの真ん中に槇野智章選手を配置して挑んだ。
磐田のキックオフで始まった試合は、立ち上がり磐田に押し込まれるシーンが続いた。だが、その時間を凌ぐと、徐々にボールを保持して浦和が主導権を握り始めた。4-2-3-1の磐田は、DFラインとボランチでしっかりと守備ブロックを作り、前線の4枚が浦和のボールサイドに嵌め込む形でプレスをかけてきた。
武藤雄樹選手は「流動的に前線3人で動くことが出来なった。ボールを受けられるシーンが全く無かった訳ではないが、効果的にフリックを入れたりすれば良かった。前半、連携のミスが続いてしまった」と悔しそうに話していた。
9分、柏木陽介選手が高い位置でボールを奪い、ズラタン選手へスルーパスを送り、ズラタン選手がシュートを放つも磐田DFの体を張った守備に阻まれてしまった。
17分には、興梠慎三選手が、DFの裏を狙ったズラタン選手にパスを送るも相手DFと競りながらシュート態勢まで持ち込めなかった。
決定的なチャンスは29分。遠藤航選手のパスを受けたズラタン選手が相手DFと競り合いながら、しっかりとマイボールにしてシュートを放つもGKカミンスキーの好セーブに合い決めきることが出来なかった。
ズラタン選手は「相手の守備は、素晴らしかった。自分たちはやれていたとは思う。攻撃的に良い仕事は出来ていたと思う。特に、ファーストチャンスを逃したが一番悔しい。その後に失点してしまっている事実が悔しくて受け入れられない。あそこで、チャンスを決めきることが出来ればゲームは違った流れになっていただろう。チャンスを含め、ゲームの流れを変えることが出来たが、チャンスに決めきることが出来ずにこういった結果になってしまった」と下を向いた。
ズラタン選手のビッグチャンスを決めきれなかったその直後の30分、磐田の前線からの嵌め込むプレスに追い込まれた森脇良太選手が、西川周作選手へとバックパスを選択。西川選手は、大きくクリアーする安全策を取らずに、そこから攻撃の組み立てを図ろうと槙野智章選手へと出したパスは槇野選手の足下に入り過ぎてしまった。プレスをかけていた太田吉彰選手の足は止まらずに追い回し、上手くボールを拾って無人のゴールへと流しこんだ。
西川選手は「僕自身が、セーフティーにプレーすれば良かった。もう少し、自分のパスが槙野の右に出してあげられれば良かった。左足のインサイドで出した」と失点シーンを振り返った。
名波浩監督は「分析によって、高いラインを作りながら飛び込まない。我慢強く、粘り強く、しつこくプレスバックがあったり、スライド、コンパクトに90分戦って行こう。そう言った中で、仕掛けられる時は、ボールを奪いに行く。相手のミスになりそうなシーンは、徹底的に仕掛けて行こう」と磐田の選手たちをピッチに送り出していたのだ。
磐田の選手たちはそれを具現化していったのだ。磐田の前線からのプレスが、思わぬ形で浦和の守備陣の判断ミスを誘い失点してしまった。
前半のうちに同点に追いつこうと浦和もチャンスを作るが、ものに出来ずに0-1で折り返すこととなってしまった。
前半の反省から、遠藤選手をDFラインの真ん中に置き、槙野選手が左ストッパー、森脇選手を右のストッパーと本来の慣れているポジションで挑んだ。DFラインの真ん中に入った
遠藤選手は「守備は、いつも通りリスクマネジメントを意識した。ストッパーよりも真ん中で前に運んで縦に入れる意識だった。
磐田は、浦和のサイド攻撃を嵌めに来ていたのだ、中から運べると思った」と話した。後半の立ち上がりから主導権を握ったのは、浦和であった。52
分には、宇賀神友弥選手がゴールライン際まで抉って上げたクロスをファーサイドで興梠選手がシュート、63分、宇賀神選手からDFラインの裏を狙うがズラタン選手はオフサイド、68分、関根選手の落としに森脇選手がミドルシュートを放つも決まらず、焦れる展開が続いていた。
先にベンチが動いたのは、磐田であった。主導権を握られた磐田は69分、アダイウトン選手に代えジェイ選手を投入。
浦和はすぐさま、ジェイ選手対策として関根選手に代えて永田充選手を投入し、森脇選手を一枚上の右のワイドへ、遠藤選手を元のポジションの右のストッパーとポジションを変えて挑んだ。
選手を入れ替えた直後の71分に、森脇選手のアーリークロスを興梠選手がファーサイドヘッドで落としゴール前のズラタン選手へ、相手DFを背にしたズラタン選手は、走り込んで来た槇野選手へ、しかし槇野選手が放ったシュートはゴール左ポストをかすめるように僅かに逸れていってしまった。
同点に追いつきたい浦和は、77分に武藤選手に代えて石原直樹選手を投入し攻撃の活性化を図った。
石原選手は「入った時は、負けていたので流れを変えるようにプレーをした。ビハインドだったので、リスクを負って攻撃をした」と話した。
そして78分、浦和に待望のゴールが生まれた。テンポの良いパスワークで柏木選手、石原選手、ズラタン選手とボールが渡り、ズラタン選手のヒールパスを柏木選手が利き足の左でゴール右隅に叩き込んで同点。柏木選手は「余裕を持ってプレーが出来た。預けて、簡単にチョンチョンと繋いでくれた」とゴールシーンを振り返った。
ここから浦和が畳み掛ける展開になると思いきや82分、途中出場でピッチに入ったばかりの松浦拓弥選手がフレッシュな運動量を見せつけ攻撃の起点となって小林祐希選手へ、小林選手のクロスをファーサイドでジェイ選手が左足で押し込み1-2とした。
柏木選手は「中を使いながらサイドの意識でそこに関しては、悪かったわけでは無い。最後に決めるところ、クロスの精度が悪かった。毎回、その話しをしている」うんざりする表情を浮かべ、「2失点もミスがらみだ。2失点目は、ボールに寄せる、走り込む選手について行く、シュートに対してブロックしていかないといけない。自分も付ききれなかった。良いブロックに、良い守備に対して絶対に負けたらアカン!結果は最悪だ」と唇を噛みしめた。
その後も浦和は、攻め続けるが磐田の堅い守備を打ち破ることが出来ず、Jリーグホーム開幕戦を白星で飾ることが出来なった。