浦和フットボール通信

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<試合ハイライト動画付き>【河合貴子の試合レビュー】明治安田生命Jリーグ 1stステージ第7節vsベガルタ仙台<柏木、阿部、李、西川、興梠コメントあり>(2016/4/17)

今日のポイント!「同点にされても攻め急がず」

浦和が放ったシュートは20本、CKは17本に対し、仙台は僅かにシュート4本、CKは1本だけであった。圧倒的なワンサイドゲームであった。退いた相手を崩すに、豊富な攻撃のバリエーション見せた浦和であった。

しかし、前半7本あったCKから1点でも獲れればもっと楽な展開になっていただろう。仙台はゾーンDFで全員が自陣に戻りCKの守備をしていた。180㎝以上の選手が、浦和は3人に対し仙台には7人もいた。CKの攻撃で相手の意表を突くようなトリックプレーがあっても良かったように思う。

そして、我慢強く攻め続けた中でやっとの思いで李忠成選手が決め、楽になると思った矢先の失点は残念でならない。気の抜けたような集中力の欠如から生まれた失点であった。

ミシャ監督は「選手たちは、リードした中で追いつかれたのはショックだったと思う。焦る気持ちや攻め急ぐことは良くある話しだ。選手たちは、落ち着いて遣るべきことをしてくれた」と満足そうに笑みを浮かべた。

柏木陽介選手は「今までは引き分けるか、逆転されるシーンが多かったが、焦っていなかった。獲って、すぐの失点は、相手を勢い付かすが、それを乗り越えて強くなって来ている。あと35分もあるから、もう1点獲れる自信があった」と笑った。

阿部勇樹選手は「1点目を獲ったあとに返されたが、繰り返さないようにと意識した」と失点後に身を引き締めていた。3点目を決めた武藤雄樹選手も「あれだけ攻めていれば、いつかはゴールが決まると思っていた」と自信たっぷりに話した。

今までの浦和だったら、同点にされ攻め急ぎ相手のカウンターの餌食になって崩れていた。だが、違っていた。選手たちは、ゲームをコントロールしながら焦らず豊富な攻撃のバリエーションで中と外を上手く使い分けて、ゴールを奪い仙台を突き放したのだ。

CKからの得点は生まれなかったが、同点にされたあとに「失点はしない」「絶対にゴールを決めて勝つ」と言う自信に溢れる選手たちのプレーが勝利を呼び込んだ。

守備を固める仙台を崩して勝利を収める

熊本地方を震度7の地震が襲い余震が続く中、多くの人々が不安で眠れぬ夜を過ごしていた。さらに追い打ちを掛けるように、16日午前1時25分ごろ本震と考えられる震度6強の揺れが被害を拡大していった。熊本地震の影響により、九州で開催させる予定だった福岡対名古屋、鳥栖対神戸戦は中止され、明日開催予定の京都対熊本戦を含めJ2・J3計6試合が中止となった。

浦和では鈴木啓太氏も参加して、試合開始前に南門広場と北門広場の2カ所で支援募金が行われた。村井満Jリーグチェアマンは「人命第一と考えている。ロアッソ熊本の練習場は、自衛隊の駐屯地として支援物資などで活用している。クラブ関係者や選手も避難所暮らしと聞いている。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りします。日々状況が拡大していることを慎重に見極め、今後も対応したい。多くのスタジアムでファン・サポーターが募金活動している。Jリーグもインターネットを通じて募金活動をしている。スポーツは、社会を明るく、元気にする力がある」と被災地を思いやり、支援を呼びかけた。

そして、キックオフ前には熊本地震でお亡くなりになった方々のご冥福を祈り黙祷が捧げられた。

浦和のキックオフで始まった試合は、風の影響を考えてなのか仙台が、浦和のゴール裏を背負う左エンドに立った。やはり予想通り仙台は、ハモン・ロペス選手をワントップにして前線に残し、4-5-1の布陣でブロックを形成した守備からカウンターを狙う戦術でやってきた。

渡邉晋監督は「まずは、守備から入ろうと言うゲームプランであったが、立ち上がりバタバタしてしまった」と話したように、浦和は立ち上がりからボールを支配して積極的に仕掛けていった。4分にはエリア内での柏木陽介選手のシュートの零れ球を森脇良太選手が狙い、またその零れ球を関根貴大選手が狙うなど厚みのある攻撃を見せた。

6分に浦和らしいリズミカルなパス回しから宇賀神友弥選手のクロスに興梠慎三選手がDFと競りながら飛び込むも相手DFが一足早く、13分には関根選手がドリブル突破してマイナスのクロスから柏木選手がDFの裏に抜け出した李忠成選手へと浮き球の縦パスを入れるが、李選手のヘディングシュートはゴール上とチャンスを作り続けた。

李選手は「マリノスや甲府よりもボランチが僕を掴もうとしていたが、サイドで石川が関根にマークいったりして、ボールをもらう回数が多く前半の15分は流れが良かったのに、点が決まらずに苦しんだ」と話した。

更に、槙野智章選手がエリア内で倒されるもノーファール。浦和が主導権を握るワンサイドゲームになっていった。前半に浦和が危なかったシーンと言えば、24分の鋭い仙台のカウンターから野沢拓也選手がDFとGKの間を狙ってクロスを入れてきたが、僅かに飛び込んで来たキム・ミンテ選手やハモン・ロペス選手に合わなかったシーンぐらいであった。

浦和はDFラインを押し上げて、コンパクトに前線から追いかけセカンドボールを拾い仙台が得意とするカウンターを封じ込めていった。

また、西川周作選手の守備範囲の広さや勇気ある飛び出しでしっかりとリスクマネジメントをしていた。

西川選手は「かなり守って来る相手は、GKとしても難しい。僕らが引っかけたところからカウンターを狙う。攻撃に人数を掛けているからDFの背後を守る。自分が出られるボールには出る。迷ったら終わりだ。ただ、埼スタのピッチは、ボールが伸びるところと止まるところのピッチがあるから考えながらやった」と高い意識を持ってプレーしていた。

浦和は、我慢強くサイドからの攻撃や真ん中をコンビネーションプレーで崩したり、ロングボールやサイドチェンジで揺さぶり仕掛けていった。しかし、ゴールネットを揺らすことが出来ずに0-0で前半を折り返した。

後半、渡邉監督は「守備をしっかり耐えること」と念を入れて選手をピッチへと送り出した。

一方、ミシャ監督は「もっとボールを早く動かそう。攻撃でのサイドと中を上手く使い分けていこう。落ち着いて、精度を上げていこう」と攻撃的な姿勢を貫いた。

後半も立ち上がりから主導権を握ったのは、浦和であった。49分には、高い位置で柏木選手がボールを奪い右のバイタルエリアの関根選手へ、関根選手のクロスを興梠選手が狙うも決めれず、52分には柏木選手から左へと展開すると宇賀神選手がスルーして背後の槙野選手へ、槙野選手のクロスに李選手が左足のインサイドで流し込もうとしたシュートは左ポスト直撃!!

決めきれずにいた。待望の先制点が生まれたのは、その直後の53分であった。楔のパスを受けた宇賀神選手が武藤選手へ落とし、左のバイタルエリアに走り込んだ槙野選手へ、槙野選手はドリブルで相手DFと競り合いながらも低くて早いクロスを送り込んで来た。

そこに上手く頭から飛び込んで来たのは李選手であった。見事な李選手のヘディングシュートが決まった。

李選手は「自分らしいゴールだった。確実に決める意思があった。その前にポストに当たったシーンもあった。槙野君にここに入れろと話していた。それが形になった。浦和のKLM(興梠選手、李選手、武藤選手)が決めたレアルのBBCみたい」と嬉しそうに笑みを見せたが、「今日は、3点決めるつもりでいた。慎三にゴールで並びたかった。CKからも1点ぐらい獲らないとね」と1ゴールだけでは満足出来ずに悔しがっていた。

やっと先制点が決まり、これで試合が楽になると喜んだのもつかの間、1分後の54分に三田啓貴選手がドリブルで左からカットインして右足を振り抜き同点。試合は直ぐに振り出しに戻ってしまった。

西川選手は「自分たちのミスからやられた。点が入った後の入りで、みんな集中してやれれば良かった。誰も、三田には行けてなかったところが反省だ。だが、慌てずに、追加点が獲られても気持ちの余裕があった」と話した。

同点に追いつかれ振り出しに戻ったが、浦和に焦りはなかった。59分には、森脇選手のクロスにニアーに武藤選手、中央から興梠選手が飛び込むも僅かに合わず、苦しい展開に追い込まれた仙台は、66分に野沢選手に代えて藤村慶太選手を投入してきた。

しかし、仙台は流れを変えることが出来なかった。71分には、柏木選手のスルーパスに抜け出した興梠選手がペナルティーアーク付近で倒されるもノーファール。

74分には、キム・ミンテ選手がプレスを掛けられて反転しながら交わそうとしたところコントロールミス!阿部選手が奪って素早くDFの裏を狙った興梠選手へとスルーパスを出した。興梠選手は冷静にGK石川彗選手を交わして冷静にゴールへと流し込み2-1とした。

アシストした阿部選手は「慎三が見てくれた。相手がボールに乗ってこぼれたが、獲らなきゃいけない(インターセプト)シーンだった。運良く、自分の前に転がって来た。動きも、出すパスコースも見えた」と照れながら話していた。

興梠選手は「個人的に前半は全然ダメだったので、後半は巻き返して頑張ろうと思った。目が合ったので、出す、出さないは阿部ちゃんの判断だし、動き出さないと何も始まらない。本当に良いパスだったと思う。決められて良かった」と嬉しそうであった。

渡邉監督は「浦和の今年のストロングポイントは、前からのプレスとミーティングでもトレーニングでもしてきた」と悔しがった。

そして、畳み掛けるように76分に柏木選手から途中出場した梅崎司選手へと大きくサイドへと展開すると、梅崎選手は切れのあるドリブルからカットインして上げたクロスを武藤選手が頭で合わせて仙台を突き放した。

2点を追う仙台は、80分にキム・ミンテ選手に代えて西村拓也選手を投入し、4-4-2にして反撃を試みるも、浦和は関根選手に代えて駒井善成選手を投入し、最後まで攻撃の手を緩めることなく3-1で仙台戦をものにした。

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