河合貴子のレッズ魂ここにあり!「明日への一歩~那須大亮選手」
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
那須選手はここで挫けたり決してしない
人生が変わる1試合がある。
1試合、1点の重みを那須大亮選手は胸に刻んでピッチに立っていた。
1試合で結果を残せば、試合に出場が出来る道が開ける。プロ生活15年間を通して、それを嫌というほど那須選手は味わってきた。だから、ACL浦項戦に掛ける思いは、計り知れないほどであった。
浦項戦の前日、那須選手は「普段、試合に出ていない選手が、結果を残すことがチーム力の底上げになる。自分たちが何をしないといけないか、みんな分かっている。結果を残すことが大事。それが、明日への一歩になる」としっかりと結果を残し、激しいポジション争いに名乗りを上げることでチーム力アップを誓っていた。
2013年に柏から浦和に移籍した那須選手は、常にDFラインの真ん中に君臨して熱き魂で闘って来た。昨シーズンは、リーグ戦30試合に出場していたが、今シーズンは開幕戦となった柏戦で72分に途中出場を果たしてからリーグ戦から遠ざかっている。
那須選手は百戦錬磨の経験を生かし、球際の厳しさで1対1の強さを見せつけ、空中戦の強さもある。ディフェンス力と攻守に渡るセットプレーの強さ持つ典型的なディフェンダーだ。そして、何よりも闘う気持ちを全面に出す熱い選手だ。
だが、DFラインからの攻撃の組み立てを求められる浦和では、遠藤航選手の加入に伴い、那須選手の存在が影を潜めてしまった。だからこそ、この浦項戦に「人生が変わる1試合」という思いでピッチに立っていたのだ。
浦項のポストプレーヤーであり得点源であるラザル・ヴェセリノビッチ選手に、那須選手は競り負けずに徹底的に潰しに掛かった。CKのチャンスには、絶妙なタイミングのヘディングシュートでゴールに襲い掛かった。だが、決めることは出来なかった。
悔しくて、自分に対して腹ただしく、思わず地面に拳を叩き付けた。そして、58分に交代を告げられると唇を噛み締めてピッチを後にした。
「久しぶりの真ん中で前半は様子を見て、失点をしないことを大事に考えていた。後半の早い時間の交代・・・。悔しかった。CKのチャンスも2回あって、あっ特に2本目!絶対に決められた。自分の持ち味を出す大事な試合だった」と那須選手は悔しさを全面に出して話を始めた。
そして、一呼吸置いて「シーズンの初めに試合に出られないことは、15年間の中でもあった。でも、ここまで出られないことはなかった。ここでどうするか、色んな思いがある。でもね、自分にとって良い時間じゃないかな。試合に出てないと自信を失ってしまう。ベンチスタートだとメンタルでネガティブになりちょっとしたミスを大きなミスに捉えてしまう。
だから、メンタルを整えて何かを吸収して学ぶ時間だと思う。試合に出られない時に何が出来るか大事だし、落ち込んでいる時に何で?と苦しむけど、周りを見て視野を広く考えれば、生きているからプロだから感じることが出来るんだ。苦しみも喜びなんだよ」と笑った。
日頃から那須選手は、自分のコンディションが落ちないように常に心がけ、課題であるロングフィードの練習や自分の武器であるヘディングに磨きを掛ける居残り練習をしている。
恒例のミニゲームでは、スタメン組に対して厳しいアプローチを掛けていく。自分にもライバルにも負けたくない強いメンタルが那須選手からみなぎっていた。
「ずっとエリートで活躍している選手、例えば阿部とかいる。前田も駒野も活躍している。負けたくない!」と闘争心を剥き出しにした。「まだまだ、成長出来る。必ず、必ず、ピッチで輝く時間は絶対に来る!どこかは見えないが、いつかの為に、歯を食い縛って色んなことを感じてやっていく」と目を爛々と輝かせ力強く那須選手は話した。
那須選手にとって、やっと巡って来たチャンスの浦項戦は思い描いていた明日への一歩にはならなかった。でも、那須選手はここで挫けたり決してしない。次なる明日への一歩に繋がる試合が、必ずやって来る。ピッチで輝く為に、苦しみを喜びに変えて明日の一歩を踏み出して行く。
Q. 疲労を溜めないためのストレッチを教えてください。
A. ストレッチには、静的と動的があります。例えば、運動前に行うストレッチは筋肉を起こしてあげて怪我の予防になります。しかし、運動前に静的なストレッチを行うと筋肉がダランとしてパフォーマンスが上がらなくなります。運動直前のストレッチは動的ストレッチ、運動直後のストレッチは筋肉をほぐして緩める静的なストレッチで疲労を溜めないようにしましょう。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/