浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「分岐点に立ち、心に風が吹く」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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西川選手の言った「ポジティブな風」と武藤選手の最後まで闘う姿勢

漆黒の闇が虚しく埼玉スタジアムを覆い尽くす中、鹿島を愛する人々の歓喜の歌声がいつまでも響き渡っていた。

Jリーグ1stステージの優勝戦線に生き残りを掛けた大一番に、浦和は敗者となった。敗者と勝者の立場に、雲泥の差を感じながら眠れぬ夜を過ごした。

1stステージ自力優勝の道が閉ざされた今、優勝戦線に生き残っている川崎と鹿島は残り2試合。浦和に残された試合は4試合。大一番の試合に弱いのは、今や浦和の伝統になってしまったのかと悶々としながら、再び机に向かいスタンドを点けて対戦表や取材ノートを見つめ直した。

川崎はJ1初タイトルに向けて、福岡と大宮と対戦する。勝ち点1差で追う鹿島は、神戸と福岡と対戦する。浦和は、過酷な過密日程の中での4連戦。どう考えても不利だ。しかし、何が起こるか分からない。諦めてなるものか!と心を奮い立たせる。そして、少し冷静になり本来の浦和が目指す道を思い出した。『真の日本一』だ!!

鹿島戦の敗戦後、その悔しさや絶望感からその矛先が選手や監督に向けられている。鹿島のカイオ選手に向けた差別的発言も決して許されるものではない。単なる八つ当たりにしか過ぎないし言語道断である。一番、大切なことは何かを思い出して欲しいと思った。

0-2と敗戦を喫した鹿島戦、眠れる夜に見直した取材ノートには、『真の日本一』を目指す選手の姿が記されていた。

1点を追う展開の中で、88分に鈴木優磨選手に試合の行方を左右する決定的なPKを決められた直後、西川周作選手はすぐに気持ちを立て直して次ぎの展開に向けてボールをセットした。

「昨年、1stを獲って思うところがあった。1stを獲っても最後に勝てなかった。1年間を考える。0-2でも1点返して行きたかった。そういう作業を繰り返していくことが大事だ。入れられて(ゴールを決められて)悔しいのは、サポーターも悔しい。切り替えてアクションを起こさないと、ゴールは遠ざかっていく。ポジティブな風というか姿勢だったりで流れが変わる。先に繋がる」と西川選手のこの先を思い描いての姿勢であった。

しかし、ほとんどの選手たちは、失望感から西川選手の意図したことを汲み取ることが出来ずにその場に立ち尽くしていたのだ。

だが、武藤雄樹選手は違っていた。アディショナルタイムに入りかけた時に、森脇良太選手のクロスが関根貴大選手に合わずにゴールキックへと変わった瞬間、外れたボールを必死に走って拾い、曽ヶ端準選手の前に置いてゴールキックをセットした。

武藤雄樹選手は「今日の試合、凄く大事で結果を出したいと臨んでいたが、シュート撃つシーンは4~5本あった。ビックチャンスもあった。そこを決め切れなかったのは、沢山の人に申し訳ない気持ちで一杯だ。決めないと勝てない。最後の部分で仕事が出来なかったのは、残念でならない。自分の中でのビックチャンスは、宇賀神さんからクロスだった。そういうところで決めきれないが今日の試合の敗因だ」と自責の念に駆られていた。

その自責の念だけで起こしたアクションでは無かった。

武藤選手は「鹿島は、時間を使いながら終わらせるのが上手いチーム。待っていても時間を使われるだけだろうと思ったので、少しでも早く始めてくれればと思った。たまたま、前に居たのは僕だけし、サポーターのみなさんも勝ちたかったと思う。みんな同じ気持ちで闘っている」と振り返っていたが、残された僅かな時間でも諦めずに闘いゴールを目指していたのだ。

1stステージ優勝がほぼ絶望的な状況の中で、失望感と共に暗闇へと沈んでいくのか、それともこの先を見据えた姿勢を見せた西川選手や最後まで諦めない姿勢を見せた武藤選手のように立ち向かっていくのか、浦和を愛する人々は分岐点に立たされた。

失意から動くことが出来なかった選手たち、絶望感や失望感で愛するチームの選手たちを誹謗、中傷したくなる気持ちは分からなくはない。だが、それは本当に浦和にとって意味のあることなのだろうか・・・。

西川選手の言った「ポジティブな風」と武藤選手の最後まで闘う姿勢が、分岐点に立った今、心の闇を吹き飛ばす風となった。鹿島に敗戦したからと言って、全てが終わる訳では無い。目指すは『真の日本一』だ。勝ち点1、1ゴールでも無駄に出来ない。昨日は、今日のためにある。今日は、明日のためにある。暗く沈んだ心に風が吹いた。

川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/

川久保整形外科

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

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