浦和フットボール通信

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浦和への伝言2010 大原ノート – vol.4 地球温暖化

浦和一女高OGのおふたりが、駒場~大原~浦和美園を巡る郷土の自然や史跡を楽しく散策します。

vol.4 地球温暖化

■先日、ある研修会で国立環境研究所の青木博士のお話を伺う機会がありました。「国立環境研究所」などといういかめしい名前と「博士」の肩書きを前にすると、ちょっと緊張してしまいますが、お話のメインは「地球温暖化」。

■暑かったですよね、この夏。スタジアムで座っているだけで溶けちゃうかと何度も思いました。ましてや激しい運動をしなくてはならないピッチの選手の皆さんはどれほど消耗したでしょうか。その暑さがまだ消えないうちだったので、産業革命後に急カーブではねあがるCO2の排出量グラフも、ジグザグしながら急に上方へ振り切れる平均気温のグラフも、実感をもってみることができました。

■ただし、青木先生のお話によると、こうしたグラフを今私たちが見ることができるのも、過去地道な研究や観測に携わってきた研究者の努力の賜物なのだということです。そうですよね。中学のころの「百葉箱」、思い出しますよね。ああいうのを毎日同じ時間に開けて、気温や湿度を記録する、それを何年も続けるなんて、夏休みの絵日記帳の天気欄を8月31日に古新聞かき集めて埋めていた私には想像もできない苦行です。そういうのをおもしろいと思って研究者になるなんて、青木君ってやっぱり変わってる…(青木博士は私の中学の同窓生なんです)。


■ちがいます。ちがいます。そういう話ではなくて、大事なのはそうした地道な観測結果や統計の数字と日々普通に暮らしている人々の実感を照らし合わせてみること、ともおっしゃっていました。数字も時々うそをつく。数字が示したことを、実際の人間の感覚とすり合わせる必要があるというお話は心に残りました。今年は確信をもって「暑かった」といえますからね。誰もが数字をしっかり裏付けられます。

■そして、大胆にも90分の講義のハイライトを1.5行にまとめてしまうと「人間が化石燃料利用で放出するCO2を半減させれば地球のCO2の総量は安定する」「これには数字の裏付けがある」というところです(天皇杯徳島戦のハイライトよりインパクトありますよね!?)。そして「温暖化」が問題なのは「温暖化」そのものより「温暖化のスピード」であり、環境の変化に追いつけないがゆえに起こる文化の崩壊だというご指摘には深く肯かされました。6000年前の縄文時代、地球の平均気温は今より高く、海面もはるかに高く、浦和の別所沼や白幡沼は海でした。調宮のあたりは海風の吹きぬける丘だったのです。それが30~50年の単位で内陸になったら人々の暮らしは成り立ちません。逆に今、東京湾がさいたま市まで広がったら私の住む家は海中に沈んでしまいます。

■「温暖化」をとめることはできなくても「温暖化」をゆるやかにすることで影響を小さくすることができます。かつて環境汚染物質として騒がれたダイオキシンはダイオキシンを発生させない高温処理の焼却炉整備などの対策により年々減少し、現在問題になる数値ではないという調査結果も示していただきました。みんなで取り組めば効果があるのですね。「地球規模のCO2削減」なんてなんだか遠くの話のようですが、あなたも私も化石燃料をジャブジャブ使ったから今年の夏こんなに暑くて、レッズの選手に負担をかけたんです。95%本当です。国立環境研究所の資料と私の実感をすり合わせた結果ですから。将来もおもしろいサッカーを見たかったら、化石燃料を使うのを「ジャブ」ぐらいにしなくては。

■ところで、気象台では現在百葉箱は使われていないそうです。観測も自動になってしまったとか。でも、小学校の教科書には健在で、小学生の体験学習にぴったりということで新たに設置しなおす学校もあるようです。研究者の卵たち、がんばれ。


<了>

ももせ・はまじ
東京都生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、
多摩美術大学卒業後、(株)世界文化社に入社。
保育園、幼稚園のための教材企画、教材絵本、
保育図書の編集に携わる。ワンダーブック等の
副編集長などを経て、現在同社ワンダー事業本
部保育教材部副参与。保育総合研究会会員。蕨市
在住。

くろき・ようこ
川口市生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、
千葉大学工学部写真光学科卒業。大学在学中から
研究テーマとしていた撮影技術を生かしフォト
グラファー、イラストレーターとして活躍。現在、
セツ・モードセミナー勤務。川口市在住。

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