浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「浦和のハリネズミ(後編)」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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浦和のハリネズミはどんな痛みも共に分かち合い力に変えていく

<前編はこちら>

ここ数年、浦和が置かれている状況が、この広島戦に全て凝縮しているように感じる。一番の要因は、試合の流れを変えられる揺るぎない信頼をおける選手がいないことだ。

もしも、この場に新潟に移籍した田中達也選手がいたら、エスクデロ選手や山田直輝選手、矢島慎也選手などがミシャ監督の下で浦和に在籍して上手く成長してくれていたら、きっと試合の流れを変えられる揺るぎない信頼をおける選手になっていたはずだと思ってしまう。悲しくって、切なくて、悔しくて・・・。負のオーラーに飲み込まれていた。

そして今の浦和の現状を見て、ドイツの哲学者ショーペン・ハウエル氏のハリネズミのジレンマの話しを思い出してしまった。

要約すると「冬の寒い日、たくさんのハリネズミたちがお互いの身体で暖めようと暖を求めて群がった。だが、身体には無数のトゲがある。身体を近づけるほどトゲが刺さるので、痛くて離れざるを得なくなった。しかし再び寒波が襲い、ハリネズミたちは、群がりまた傷つき離れた。結局、何度も群れては離れを繰り返し、互いに多少の距離を保つのが最適であるのを発見した。社会において必要に駆り立てられ、人間というハリネズミを集まるが、多くのトゲや考え方の違いで性格の不一致によって不快を感じさせられる。結局、交流において許容できるような最適の距離感を発見し、それがいわゆる礼儀作法やマナーである」

また、後に心理学者フロイト氏がこの話しをもとに男女の恋愛を2匹のハリネズミに例えた。

要するに、お互いの距離が近すぎるとお互いが傷つけ合い関係が悪化する。かといって、距離を空けすぎるとお互い傷つかないが、目的は果たせずに疎遠になってしまい親密な関係が作れずに終焉を迎える。お互いを思うのであれば、コミュニケーションを図り、最適な距離を見つけることの大切さを説いている。

これを浦和に置き換えると、「真の日本一」を目指して監督、選手、浦和を愛する人々が浦和のハリネズミとなって集結した。だがここ数年、勝利と言う結果が伴わずお互いを傷つけてしまった。プロの世界では、結果が全てだ。それ故に浦和は、至上主義を追い求めるあまりに急ぎ過ぎ、揺るぎない信頼まで失ってしまった。距離が近すぎてお互いを傷つけ合うハリネズミと傷つくの嫌で群れに嫌気をさして距離を空けて群れから離れたハリネズミに分かれてしまったのだ。何とも切なく、悲しい話しである。

1stステージが終り、すぐに2ndステージが始まる。浦和のハリネズミたちが、生じてしまったこの問題をすぐに解決出来るとは思えない。

浦和が、2ndステージで連敗を重ねでもしたら、関係は悪化するか疎遠になり終焉するかどちらかだ。そんな状況では本来の目的である「真の日本一」になどなれるはずがない。

だが、「真の日本一」のなるために大切なことをFC東京戦で李忠成選手が示してくれた。正直、FC東京は自滅したとも言える。だが、自滅に追い込んだのは浦和だ。

FC東京戦の決勝弾を決めた李選手のゴールは、お世辞にも決して華麗なゴールではなかった。気持ちで押し込んだゴールであった。

李選手はヒーローインタビューで「今日、このスタジアムで、この試合、2点のビハインド、諦めた人いますか?僕たちは、諦めていませんでした。連敗が続き、この2点と言う厳しい中、絶対にひっくり返してやろうと強い気持ちで、その奇跡を、奇跡の瞬間を形に出来たことをみんなと時間を共有出来たことを幸せに思う。辛い時に共に闘って、応援してくれたサポーターがいたから、最後の1分1秒まで諦めずに闘えた」と誇らしげに話していた。

試合後、ロッカールームから出て来た李選手は「諦めた人はいたのか?いないでしょ?!自分たちを1mmも疑わないで信じてくれるのがサポーターだ。僕たち選手は、疑うことをしなかった。自分たち悲しんで来たから、このスタジアムみんなで・・・。これから難しい試合になることもある中で、疑わない信じることを訴えかけた言葉だった。良い時も悪い時もあるからね。悪い時こそ疑わないで、絶対に跳ね返す気持ちで、この中で(埼玉スタジアム)諦めた人は誰もいない」とそんな思いをヒーローインタビューに籠めていたことを話してくれた。

大切なことは、お互いが諦めずに、信頼して最後まで闘う気持ちであった。

私も悲しい浦和のハリネズミの1匹である。傷つかない距離を保つ方法が見つからなかった。諦めずに信じることが大切だと分かっているが、信じることの難しさを感じてしまう。

だけど、李選手が選手全員の気持ちを籠めたヒーローインタビューを聞いて、ハリネズミのジレンマの距離など関係なくなった。

浦和のハリネズミは、お互いの痛みで「真の日本一」を諦めるならば、それは本当に叶えたいものではない。「真の日本一」を手に入れるためには、どんな痛みにぶち当っても決して諦めず、浦和のハリネズミの仲間を信じて、共に信念を貫き勇気を持って闘うことだと思った。

もちろん、哲学者ショーペン・ハウエル氏と心理学者フロイト氏がとなえたコミュニケーションを図りながら最適な距離を見つける礼儀やマナーも大切なことである。

その事を踏まえつつ、浦和のハリネズミはどんな痛みも共に分かち合い力に変えていく。ハリネズミのジレンマに打ち勝った者だけが、「真の日本一」の栄光を掴み取ることが出来る。痛みを伴いながらも揺るぎない信頼で結ばれてこそ、本当の浦和のハリネズミだ!!

心の痛みと共に流した涙が、歓喜の涙へと変わる日がいつか来る。

川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/

川久保整形外科

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

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