【河合貴子の試合レビュー】プレナスなでしこリーグ1部第15節vsベガルタ仙台レディース <加藤、北川、猶本、後藤、長船、吉田監督コメントあり>
仙台に逆転されて悔しさ募る敗戦
久しぶりに天高く爽やかな秋空が広がった10月2日。思ったよりも気温が上昇し、10月とは思えないほど残暑厳しい中での試合となった。
なでしこリーグ1部残留を目指して浦和レッズレディースは、ホーム浦和駒場スタジアムにベガルタ仙台レディースを迎えた。仙台が1部に昇格してからは、一度も勝利したことがない公式戦11試合も未勝利の相手だ。
浦和は、勝ち点を延ばして残留を確実にしたい。そんな思いをぶつけるように、試合の立ち上がりから浦和は、積極的に仕掛けていった。
4分、猶本光選手から縦パスを受けた加藤千佳選手が、DFの裏を狙うように白木星選手へ、白木選手が競り合いながら抜け出しシュート態勢になりかけたところを北川ひかる選手がタイミングよく拾ってゴールへと流し込んだ。
加藤選手は「間がすごく空いている感じがして、スペースがあった。光から(猶本選手)から入ったらターンできるイメージが出来ていて、北川も上がって来ていて、白木も良い動きをしていた。自分は、選ぶだけだった。その動きが良かった。自分は、白木にパスをしたんだけど、白木がタッチしてシュートを撃てる状況だったのに北川が獲っちゃったみたいな感じだった」と先制点のシーンを振り返った。
先制点を決めた北川選手は「FWの位置まで走って、得点する、パスを出すことが練習でも出来ていた。自分でもあそこまで前に行き、千佳(加藤選手)さんが持った時に、星さん(白木選手)さんと自分でゴール前まで行き、ファーストタッチで決められて良かった」と恥ずかしそうに笑った。
攻撃の起点となった猶本選手は「千佳が良いところにいて、良い得点だった。良いバランスの立ち位置にいた」と振り返った。まさに、ゴールに向かってピッチの中央から縦に早い攻撃であった。
早い時間に先制点を決めて幸先の良いスタートを切ったものの、両チームともにサイドにスライドする守備の攻防戦となり、シュートまで持ち込めない展開になってしまった。
後藤三知選手は「前半の入りは良い入りが出来て、その中で先制点が早い段階で獲れた。だが、その後に、追加点をどうやって獲りにいくかだった。どうやってボールを動かすのか・・・。それとも相手に持たせて、我慢強く守りながら時間を過ごすのか、チームとして自分たちが選んでやっていくのが大事だった」とピッチの中では悩みが生じていた。
吉田監督からも「下がるなぁ!」と檄が飛ぶ中、32分には左CKからの零れ球からの流れで栗島朱里選手が右足を振りぬき、強烈なシュートを放つも枠を捉えることが出来なかった。
さらに、柴田華絵選手がドリブルで溜めを作りながらオーバーラップしてきた栗島選手へ、栗島選手のマイナスのクロスに後藤選手は合わすことが出来ずチャンスを生かせないでいた。
このまま、1-0で前半を折り返せると思った43分、ハーフライン右あたりからの中野真奈美選手のFKから安本紗和子選手、嘉数飛鳥選手と繋ぎ、嘉数選手のクロスをゴール前で北原佳奈選手がヘッドで合わせて1-1の同点とされてしまった。
吉田監督は「仙台は長いボールが多いので、ある程度ブロックを作って失点をしないことは、見事にはまった。ちょっとした失点。何気ないセットプレーからの失点だった」と悔しそうに唇を噛みしめた。
だがすぐに浦和は、攻守の切り替えが早い素早い展開を見せた。北川選手がドリブルで持ち上がり加藤選手へ、加藤選手のクロスにファーサイドで飛び込んだ白木選手のヘディングシュートが炸裂!!決まったかと思いきやオフサイドの判定。前半を1-1で折り返し、後半の勝負となった。
前半、セットプレーの流れで追いついた仙台であったが、決定的なチャンスが作れずに浦和の守備に苦しんだ。そこで、ハーフタイムに千葉監督は安本選手に代えて小野瞳選手を投入して前線を活性化してきた。
だが、後半の立ち上がりから先手を取って仕掛けたのは浦和であった。54分、柴田選手からバイタルエリア右へとスルーパスが通り、猶本選手がドリブルで切れ込みゴールライン際からマイナスのクロスを送り、見事に合わせた白木選手のシュートが相手DFのハンドを誘いPKを獲得!
PKのキッカーは、キャプテン後藤選手。軽くステップを踏んで、ゴール左角を狙ったPKは、完全に相手GKに読まれていた。後藤選手は「ちょっと・・・。あれは・・・本当に決めたいシチュエーションできたチャンスだった。そうですね」とミックスゾーン(試合後の取材エリア)の天井を見つめた。そして「どっちに蹴ろうか感じながらボールに対して行くが、少しコースが甘かった。思いっきり良く行こうと思ったが・・・。ボールの行方が本当に分からない。自分としては、決める気でいた。本当に悔しい。チャンスを掴み切れなかったことが今日の結果に繋がった」と話した。
追加点のビックチャンスを逃した浦和であったが、徐々に流れは仙台へ。長船加奈選手は「どんどんこぼれ球が拾えなくなって、全部セカンドを相手に拾われるようになって、そうなったら自然と向こうのペースになる。どれだけ耐えられるか、我慢所をみんなで考えないと厳しい」と話した。
浦和が押し込まれた流れの中で、66分には坂井優紀選手のドリブル突破をエリア内で北川選手が体を張って止めるもゴール前に詰めた小野選手のシュートが右ポスト直撃!
さらに仙台は攻撃に厚みを付けるために67分、浜田遥選手に代えて井上綾香選手を投入してきた。75分には、その井上選手のクロスに中野選手が放ったシュートがクロスバー直撃!
跳ね返りを中野選手がシュート!しかし、ここは池田咲紀子選手がガッチリと抑えた。立て続けにゴールポストとクロスバーに救われた浦和は、76分に後藤選手に代えてエミリー・ギルニック選手を投入し攻撃のリズムを作ろうと試みた。
しかし、78分に右サイドの嘉数選手へとサイドチェンジから縦に早いロングボールをDFの裏に入れられ、一発で抜かれてしまい井上選手が冷静にゴールを決めて1-2と逆転。
長船選手は「取りあえず乗り切れたんで、勢いに乗って攻めたいと思った。体力的な部分でも落ちてしまった。一個のチャンスが生かせるような戦いが出来たら違っていたかも。サイドチェンジされてからのみんなが追いつけない感じの裏だった。最終ラインで早めに退いて裏をやらせないようにしないといけなかったと瑠華(乗松選手)と話していた」とライン設定の問題点を話した。
何とか同点に追いつきたい浦和は、79分に北川選手に代えて臼井理恵選手、80分に栗島選手に代えて塩越柚歩選手を投入し、両サイドバックにフレッシュな選手を入れてサイドからの崩しを試みた。最後の笛が鳴るまで、諦めない姿勢を貫きながらもタイムアップ。1-2で仙台に逆転勝利を許してしまった。
浦和は、勝ち点を積み上げることが出来ず、その結果8位浦和勝ち点13ポイント、9位コノミヤ勝ち点11ポイント、10位湯郷ベル勝ち点10ポイントとなり降格圏内を抜け出すことが出来なかった。残り3試合で残留を目指す。
ちなみに、10月9日アウェイで伊賀戦、10月15日アウェイで千葉戦、そして最終節は10月23日ホームで勝ち点38で圧倒的な強さで首位に立つ(第15節終了段階)日テレと対戦する。