浦和フットボール通信

MENU

【河合貴子の試合レビュー】激闘を制し13年ぶりのカップタイトル<西川、遠藤、宇賀神、駒井、李、柏木、森脇、興梠コメントあり>

G大阪と死闘を征しYBCルヴァンカップ優勝

爽やかな秋空が広がり、最高な決勝の舞台が整った。YBCルヴァンカップ決勝は、浦和対G大阪。浦和の本拠地である埼スタでG大阪にルヴァンカップを掲げさせる訳にはいかない。浦和のプライドが許さない。浦和を愛する人々の思いが籠もったコレオグラフィーが、埼スタを彩っていた。

10月1日に行われたリーグ戦で、4-0と大敗を喫したG大阪は、長沢選手をベンチスタートとし、アデミウソン選手のワントップ、トップ下に遠藤選手を起用して挑んで来た。

浦和のキックオフで開始した試合は、立ち上がりから主導権を握って行ったのは浦和であった。ボールを保持しながらシュートまで持ち込めない展開の中、10分に遠藤航選手からロングフィードを受けた関根貴大選手がカットインからゴールを狙うも東口選手に止められてしまった。

G大阪は、浦和がDFラインで攻撃の組み立てを図るボール回しに対して、前線からプレスを掛けて来た。また、遠藤選手がフリーマンの役割を果たしポジションを前後に試合の流れを見ながら変化をつけて来た。そして、ニューヒーロー賞に輝いた井手口選手とベテラン今野選手のダブルボランチが中盤のスペースを上手く埋めてバランスを取っていた。

主導権を握られ押し込まれることとなったG大阪は、15分にカウンターを狙った遠藤選手からオフサイドギリギリに飛び出したアデミウソン選手へとボールが渡り、倉田選手がゴール前へと飛び込むも身体を張ってシュートを撃たさない守備を魅せた。

そして、浦和が押し込む中で槙野智章選手の持ち上がったところを遠藤選手と今野選手に挟まれる形でボールを失い、遠藤選手からのパスをアデミウソン選手が遠藤航選手と身体を入れ替えるようにハーフライン手前からドリブルで独走して、西川周作選手と1対1になりながらも冷静にゴールへと流し込みG大阪が先制。

西川選手は「打ち込んだというか、一番危険な形でやられてしまった。あのシーンも試合前から監督も言っていたし、自分たちも気をつけようと言っていたので、そこは自分たちのミスだった。相手が個の力でできることは想定内だったので、そこはチームとして反省材料。でも失点してもみんな慌てていなかったので大丈夫だなと思った」と先制されても落ち着いていた。

遠藤航選手は「前で奪えると思っていったんだけど、思ったよりピッチの具合などでボールの伸び具合が無くて、自分が足を出したタイミングはまだアデミウソン選手にボールが渡りそうでなかったタイミングで、タイミングはすごく悪かった。もう1個を前に入れて取れればよかったし、シンプルに遅らせる対応をするかどっちかだったと思います」と失点シーンを振り返った。

一発のカウンターの個人技から先制を許した浦和であったが、G大阪のボールに対する寄せが早く、良い形で攻撃の組み立てが出来ずに、前線にボールが入らずに苦しい展開を強いられてしまった。

興梠慎三選手は「個人的に調子が悪かったから、とりあえず走りまくってやろうと思って、気持ちだけは見せようと思ってやっていた。やっぱりG大阪さんは守備がうまい。裏も取らせてくれないし、足元に入ったらボランチが詰め寄ってきて、なかなか自分のプレーができなかった」と少し残念そうに話した。

そして36分、クロスを上げてしゃがみ込んでしまった宇賀神友弥選手に代わり駒井善成選手を急遽投入することとなった。

宇賀神選手は「今野選手がスライディングに来たところで捻ってしまった。でぇ、そこから10分~15分はやっていたんですが、クロスを上げた時に足に力が入らなかったから厳しいなと言うことで、自分から交代してくれと言いました。左足首です。持ってない。この舞台で、怪我して勝利に貢献出来ないのは、本当に持っていないと思った」と残念そうな表情を浮かべた。

駒井選手は「いつ来てもいいように準備しましたし、結果的にサブからのスタートでしたけど、体と心の準備はできていた。ウガ君がケガしてになりましたけど、全然焦ることなく入れました。いつもどおり、ボールをもらったら仕掛けることを意識しました」と焦ることなくゲームに入っていった。

しかし、浦和はボールを保持するものの決定機が作れないまま前半を0-1で折り返した。

埼スタで負ける訳にはいかない浦和は、後半の立ち上がりから猛攻を仕掛けていった。徐々に浦和らしいパス回しからチャンスを作り、50分には武藤選手、54分には阿部選手がミドルシュート、56分にはまたも武藤選手が狙うも決めきることが出来ずにいた。

そして、70分に武藤選手に代えてズラタン選手を投入に攻撃を活性化していった。75分に駒井選手がドリブルで持ち上がり関根選手へ、関根選手が走り込んで来た高木選手へ、高木選手が放ったシュートは東口選手がファインセーブして右CKとなった。

この時、交代を用意していた李忠成選手は「せめて0−1で自分の出番が来いって。自分が決めてやるから、っていう強い気持ちだった。ベンチからは、点を取って来いっていうこと。前線での守備とゴール前に顔を出せっていうことは言われた。レフェリーを呼んで「ここで代えてくれ」って自分から言ったから。何か取れる感じがしたから。チャンスは多い方がいいしね」と笑った。

76分、高木選手に代わり李選手が交代で入ると、李選手は一目散にG大阪のゴール前へと走っていった。そして、柏木選手の右CKを「自分のところに来ると思っていたから。「来い、来い」よりも「来る、来る」っていう感じだったから点を取ってもそんなに驚かなかったし、イメージ通り、予想通りだなって。そんなに叫ぶような感じでもなかったけど。もちろん嬉しかったけど」と自分の直感を信じていた。柏木選手のCKをゴール前の中央でヘディングシュートをゴールへと流し込み1-1の同点!!

柏木選手は「チュン君を狙ったわけじゃない。東も出やすいから、GKの前に落とせてストーンを越えられたら良いかなぁ~と思って蹴っていた。決めてくれて良かった。決勝でもっている男かな?!試合の中で点を決めた後に、いけいけになりやすそうになったから、チュンくんに「落ち着け、落ち着け」と言う話しはしていた」冷静であった。

しかし、追加点を狙いにいくが決められず延長戦へと突入。

柏木選手は「延長かなと思いながら試合をしていた。セットプレーが恐かった。前半の終わりも、後半の終わりもセットプレーで危ないシーンがあったから、集中を心掛けていた。延長で決めたい気持ちはあったが、攻め急がないことを心掛けてみんなプレーしていた」とあくまでも冷静にプレーをしていた。

100分には、駒井選手からのマイナスのクロスに李選手が合わせるも決まらず、絶好のチャンスを生かせなかった。117分にも関根選手のクロスをファーサイドで駒井選手がヘディングシュートを狙うも決まらず。

浦和が猛攻を仕掛ける中、G大阪も虎視眈々をチャンスを伺っていた。終了間際の120分、途中出場した藤本選手と呉屋選手のコンビが浦和のゴールに襲い掛かった。藤本選手のスルーパスに抜け出した呉屋選手のシュートが右ポストに直撃!!跳ね返りがゴールライン際を流れる中を森脇選手が身体を投げ出してクリアー!

西川選手は「僕も触っていたけど(遠藤)航の足に当たってコースが変わってなので、ポストに当たった瞬間は「入るな!」っていう願いで。願いが通じて良かった。あのシーンは運も引き寄せたと思う」と振り返った。

森脇良太選手は「もし相手に詰められたら僕に分があると思ったので、もしかしたら押し込まれたかもしれないけど、頼むから入らないでくれという思いと、相手が来ないでくれっていう思いで必死に掻き出した。よかったですね。ライン上でしたね。本当に危機一髪で、このことを危機一髪って言うんだなって思いましたね」と明るい森脇選手らしく笑った。数センチのところで浦和は救われた。

延長戦でも決着がつかず、勝負はPK戦へ。ホーム扱いのG大阪側で行われたPK戦は、G大阪が先行。

1本目G大阪は藤本選手、浦和は阿部選手、2本目今野選手、ズラタン選手、3本目丹羽選手と次々と冷静に決めていった。

浦和の3人目となった興梠選手は「交代を3枠使って自分が最後まで出ないといけない状況だったので、どうにかして点が欲しいなと思っていたけど、両足が攣って全然動けなかったけど、PK戦になった時に(ACLの)FCソウル戦と同じような状況だったので、あの時に自分がPKを蹴らなかったことを凄く後悔していたので、今回は俺が行くって言って蹴らせてもらった」と話した。

興梠選手もキッチリと決めて、G大阪の4本目呉屋選手のPKを西川選手が右足1本で止めた!

西川選手は「呉屋選手も途中から入ってきた選手で緊張しているような雰囲気だったし、そういう時は真ん中に来やすいと思っていた。それはオーストラリアでの経験が生きた」と日本代表対オーストラリア戦のワールドカップ最終予選の経験を生かしていた。そして「動かないっていうのは勇気がいるけど、一つこうやって結果を残せたことでまた次のPKに対して挑みやすくなるし、また違う自分をたくさんの方に見てもらいたいと思う。逆にリラックスして立てたかなと。反対からは大きな西川コールが目の前にあって、自分が止めた瞬間の光景は僕にしか分からないので、忘れられない日になった」と感無量であった。

4本目の呉屋選手が外し、李選手が決めて浦和がリード。5本目の36歳のベテラン遠藤保仁選手が決めて、此処で浦和が決めれば優勝が決まる緊張感溢れる中、5人目のキッカーは浦和の若き23歳遠藤航選手!

遠藤選手は「蹴る5人は監督から指名されて、そこに僕も入っていて。あとはその中で立候補で順番を決めて。最初は阿部さんが蹴るなと思って、僕はACLで2番目を蹴ったので、そんなイメージをしていたのだけど、慎三さんとかズラが手を上げて、自分はタイミングを失ったんだけど(笑)。4番目か5番目なら5番目の方が良いかなと思って。まあ、なんとなくというか。試合を決める状況になる可能性が高いですし、その方が蹴るイメージがしやすい。4番目はつなぐイメージなので。決めたら勝ちか、決められなかったら負けかという割り切りがあった方が良いと思った。両方イメージしてましたけど、周作君が止めたところから自分が決めて勝つなというイメージをしていた。蹴る瞬間は落ち着いてましたし、サポーターの皆さんの声援とか、選手が声をかけてくれたこととか、そういう思いを色々と考えましたけど、それが自分に蹴る勇気を与えてくれた。そこで決めるのが、僕の仕事だったかなと」と話した。

そして遠藤選手は、ふっ~と息を吐き肩の力を抜いてゴール右隅へとしっかりと叩き込んだのだ!!「決まった瞬間は、やっぱり最高でしたし、みんながつないでくれたので。5番目を任されて、決めるしかないと思っていた。決めて、みんなで喜びながら抱き合えるのが優勝した時の醍醐味だと思うし、一番うれしい瞬間なので。監督もスタッフも、みんなで喜びを分かち合えてよかった」と振り返った。

PK戦を5-4で浦和が征し、浦和が13年ぶりにYBCルヴァンカップ優勝を決めた。

ページ先頭へ