浦和フットボール通信

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ハーフタイムにチームを落ち着かせた興梠の一言。宇賀神「優勝経験がある選手のチームをまとめる一言が大きかった」

(Report by 河合貴子)

興梠「今までの傾向だと失点したら2点目を決められてゲームを終わらせられる展開があった」

YBCルヴァンカップの決勝の舞台は、浦和の本拠地である埼玉スタジアム。5万1248人が、勝敗の行方に息を飲んだ。

前半、ボールを保持しながらもしっかりと浦和対策を練って来たG大阪のボールに対する素早い寄せに手こずった。そして、たった一発のカウンターで失点。ボールの失い方も悪く、そのあとの対応も悪かった。正直、「一体何をしているんだ。情けない」と怒りを覚えるほどであった。

ミシャ監督は「ファイナルの戦いで我々は勝負弱いと言われてきた。私も監督として、選手たちも含めてメディアにも出ていたが、それも事実であり、そういう過去がある中での戦いだった。そういったプレッシャーの中で戦うのは決して簡単なことではなかった。そういった過去の経験が選手たちに対してプレッシャーになったのか分からないが、前半は決して我々が狙いとするサッカーができなかった。特に後ろからの攻撃の組み立ての部分でなかなかうまく狙いとすることが出せない、そして一つ一つの球際での相手との争いで負けている場面が多かった。ああいうシーンは典型的なわれわれがカウンターを受けるシーンであり、長い間、そういったシーンは作らせないで戦っていたが、残念ながら今日の試合は我々の典型的なミスで相手にカウンターを与え、失点してしまった」と振り返っていた。

G大阪に先制されて、試合は難しくなった。だが、浦和に焦りが無かった。ハーフタイムにミシャ監督は「私は選手たちを叱った。なぜなら、何人かの選手はわれわれが求めている戦い方ができていなかったからだ」と檄を飛ばしていた。

しかし、チームを落ち着かせたのは興梠慎三選手の一言であった。「後半は、自分たちの方が多くチャンスが来るし、そこを冷静に決めるかどうかだ」と興梠選手はチームメイトを鼓舞していた。

負傷交代していた宇賀神友弥選手は「優勝経験がある選手のチームをまとめる一言が大きかった。慎三君は、あんまりそういうこと言わない。近いポジションの選手と話すのは、見ますけど、チームを鼓舞する形の言葉は、なかなか無い。大きな一言だった」とロッカールームでの様子を見ていた。

遠藤航選手も「後ろはこれ以上やらせないというのを、槙野君と森脇君と話してやっていた。追う展開になって、焦ってカウンターを食らって2点目が最悪なので。慎三さんも、ハーフタイムに「これ以上失点しなければ絶対にうちの方がチャンスが来るし、点を取れる」と言っていたので、それを信じるだけでした」とDF陣はしっかりと守り、必ず味方が点を獲ってくれることを信じていた。

だから、浦和は焦らずに崩れることは無かったのだ。

チームメイトを鼓舞した興梠選手は「いや僕はしてないけど、とりあえず今までの傾向だと失点したら2点目を決められてゲームを終わらせられる展開があったので、「0−1でもこれ以上失点しなければ絶対にFW陣が1点取るから、0−1で耐えていてくれ」、「バランスを崩さずにしっかり守ろう」とDF陣には言った。でも結果的にチュン(李)が入ってきてチュンが取ってくれたので、DF陣が耐えてくれたのは良かった」安堵の表情を浮かべていた。

ハーフタイムにチームを落ち着かせた興梠選手の存在は大きかった。

そして、後半になり明らかに浦和の動きが変わって行った。

柏木陽介選手が「相手によっては、マキやモリが高い位置に行って、やる試合もある。こうやって、カウンターが恐いチームでフラフラしている選手がいるときに3DFが掴み辛い。そういうところで、あの変更が俺が多少前に行けたひとつでもあるし、回しも相手がプレッシャー掛け辛くなった」と話したように、ボランチの阿部勇樹選手や柏木選手がDFラインに入って後方からの攻撃の組み立てに参加せず3DFがしっかりとラインをコントロールしながらボールを回すやり方に変えたのだ。

その変更により柏木選手が高めのポジションを取れたことも良かった。柏木選手は「優勝したからと言って、イケイケドンドンにならないことが、ひとつ大事。ゲームコントロールするところで、前に行くところと後ろに下がって回すところのメリハリをしっかりつけながら、今日はわりと中を固めながら、サイドを使いながら攻撃を組み立てたつもりやし、真ん中が空いてきたら、終盤の方は結構慎三とかズラとかチュン君とかに入れて、使い分けが自分の中で上手く出来た。後ろ向きに来ている相手に対しても、自分の中では冷静に落ち着いてプレーが出来ていた」と嬉しそうに話した。

後半に同点に追いつきチャンスがある中でも決めきれず、今までなら攻め急いで崩れていたが、2失点しなかったことが大きかったと言える。もちろん、90分でしっかりと逆転勝ちして優勝を決めたかった。だけど、どんな形であれ勝ったのは浦和だ!

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