浦和フットボール通信

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【ルヴァンカップ優勝コラム】ルヴァンカップ制覇はミハイロ・ペトロヴィッチ監督体制のチームが辿る夢の途上だ

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『ミシャ』の笑顔は、その凄みと共に、浦和レッズを率いる指揮官として頼もしき所作だと敬服した

島崎英純(取材・文)
2016シーズンのYBCルヴァンカップは、前身のヤマザキナビスコカップから数えて、浦和レッズが2003シーズン以来13年ぶりにタイトル獲得を果たした。浦和は2002シーズンに初めて同大会決勝に進出し、2003シーズン以降も3度決勝へ上り詰めたが、これまでたった1度しか優勝を遂げられなかった。また、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督体制が発足した2012シーズンからは各種タイトルの獲得がなく、浦和を取り巻く方々からすれば待望の戴冠だった。

浦和のルヴァンカップ獲得までの道のりは賞賛に値する。AFCアジア・チャンピオンズリーグへの出場でグループリーグを免除されてホーム&アウェーの準々決勝から出場した浦和の相手はヴィッセル神戸だった。その神戸とは直近のJリーグ2ndステージ第10節で完敗しており、下馬評は第1戦をホームで戦う神戸が有利とも目されていた。しかし浦和はレアンドロ、ペドロ・ジュニオール、渡邉千真の強烈3トップが発動する相手カウンターへの対策を施していた。試合開始6分にスピーディなアタックから高木俊幸が先制ゴールを決めて相手の出鼻を挫くと、前半終了間際にズラタンが追加点を決めて戦意を喪失させた。続く第2戦ではバランスを崩した神戸に容赦せずゴールを叩き込んで4ー0の快勝。リーグ戦で負った屈辱を鮮やかに払拭して、その力を内外に示した。

続く準決勝・FC東京戦では第1戦のアウェー、第2戦のホームともに先制を許しながら逆転勝ち。相手キャプテンの東慶悟をして「全ての面で浦和のレベルが上だと思う。浦和は僕たちよりもクオリティ、チーム力が高かった」と言わしめる、文字通りの完勝を果たした。

決勝戦はチャンピオンシップや天皇杯など、近年のタイトル争いで幾度となく行く手を阻まれてきたガンバ大阪が相手だったが、逞しさを増した浦和は一切怯まず、アデミウソンのカウンターゴールで先制を許す苦しい展開でも焦らずにチームの指針を貫いて途中出場の李忠成のゴールで同点に追いつくと、延長戦でも失点を許さず、最後はPK戦の末にG大阪を倒して頂点に登りついた。

近年の浦和は埼玉スタジアムが超満員になるようなビッグゲームで結果を残せず、勝負弱いと揶揄されてきた。そんな風評は当然監督、選手の耳にも届いていて、今回は汚名を払拭すべく不退転の決意で臨んだ跡がうかがえる。それは高木、関根貴大、森脇良太らが優勝決定直後に泣き崩れてピッチに突っ伏した仕草からも分かる。選手たちは多大なプレッシャーを受けながら、それでも浦和のために死力を尽くし、自らの尊厳をも保った。

一方、チームを束ねるペトロヴィッチ監督は戴冠直後も笑顔を浮かべたままで、最後まで涙を見せなかったのが印象的だった。おそらく最も厳しい目を向けられ、自らの進退をも賭けていた指揮官は今、感慨に耽るのではなく、次なる戦いへ向けて思考を巡らせている。浦和が行き着くべき頂はここではなく、目指すタイトルをすべて手中に収めるまでは安堵しない。その決意の表れのように見えた『ミシャ』の笑顔は、その凄みと共に、浦和レッズを率いる指揮官として頼もしき所作だと敬服した。

「今シーズンに入るにあたって選手には、『全ての大会で昨シーズンを上回る』と伝えました。昨シーズンはタイトルこそ獲れなかったですけども、素晴らしいシーズンでした。それをさらに越えていくのは我々にとって非常に高い目標であると思います。ACLではグループステージを勝ち上がり、昨シーズンを上回ることができました。ルヴァンカップではカップを掲げることができました。リーグに関しては、(昨シーズンの)72ポイントを取るのは非常に素晴らしい数字だと思いますけども、選手たちは間違いなくその目標に向かって突き進んでくれると思っています。天皇杯はまだ少し後になりますけど、選手たちは必ず、我々の目標に向かって戦ってくれると思っています」

2016シーズンのルヴァンカップ制覇。それはミハイロ・ペトロヴィッチ監督体制のチームが辿る夢の途上。この先にはまだまだ多くの障壁がある。しかし今のチームには、苦難と辛苦を乗り越えてタイトルを獲る覚悟が備わっている。

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