浦和フットボール通信

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【This Week】フットボールトーク Vol.177「浦和フットボール通信10周年を迎えます」

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浦和フットボール通信が10周年を迎えます。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:しばらくお休みをしておりました。フットボールトークを今季から再開をさせて頂こうと思います。できれば毎月お届けできればと思います(笑)。皆様のお陰様で、3月2日発行の浦和フットボール通信が2007年創刊から10周年を迎える号となります。

豊田:いや、頑張って定期刊行としようではありませんか。周辺の方々からの要望もいただいていますし、地元埼玉のサッカーも浦和レッズも重要な岐路にさしかかっているので……。そもそもこのトークは浦和フットボール通信メルマガの創刊に合わせ、当初は私と椛沢編集長との往復書簡形式「浦和フットボール交信」で始まりました。その時点で我らがレッズは日本初のACL制覇を果たす絶頂期にあったのですが、対話形式のフットボールトークに切替えたとたん、まったくタイトルが獲れなくなった(笑)。告白するなら、この衰退を目の当たりにして「しばらく静観した方が良いのかも?」という気分があったことは事実です。

椛沢:創刊スタートの年にはアジア初制覇に立ち会えたわけですが、その後はリーグタイトルとは無縁。06年のリーグ優勝、07年のアジア制覇の際に感じたのは、浦和にあるクラブは、クラブ、チーム、街、サポーターが一体になった時にとんでもない力を発揮することが出来るということですね。タイトルに寸前の所で届かないのは、その部分において、まだ足りない部分があるからではないかと思ってしまいます。しかしながら、本当に紆余曲折ありましたが、我々が10年続けることができたのはサッカーの街の力なくしてはなし得ないことです。改めて感謝申し上げます。この街にはサッカーに対して理解する人が本当に多く、取材先はもちろんのこと、営業先でもそれは感じることができました。次代の変化も激しく我々がフリーマガジンを発行してから、現在ではフリーマガジンという形態自体が下火になり、WEB配信をするメディアが圧倒的に多くなってきましたが、紙で情報発信をすることはまたWEB配信では出来ない伝わり方があると思いますので、なんとか続けていければと思います。老若男女の読者の方に読んで頂いて、小学校の時から読んでいましたという高校生や大学生がいたり、小学校の校長室に生徒が出場していたと、FC浦和優勝号が飾られていたのも浦和のサッカー文化を少しでも形に残す事ができているのかと思い、嬉しい出来事でした。

豊田:サッカージャーナリズムの大御所・大住良之さんも「MDPとフットボール通信のバックナンバーが地元の図書館にそろっていなかったら、それはホーム浦和の恥だよ」とコメントされていました。創刊の折に本誌ネーミング案で討議した時、編集長と村田要さんが「豊田さん、この本誌名しかあり得ません」と強く提案してきたこともよく憶えています。私自身も、この本誌名を告げただけで一気に取材への道がひらけた経験が何度もありました。編集長判断は英断でしたね。

椛沢:その浦和フットボール通信3月号は「宿敵静岡」号以来の静岡取材を敢行しての杉山隆一さんのインタビューをお届けします。杉山さんは、私も現役時代の活躍は伝説として伝え聞いている存在でした。クラマー監督率いる日本代表で、左ウイングとして東京五輪ベスト8、メキシコ五輪銅メダルを獲得した名プレイヤーで、現役引退後も指導者としてヤマハ発動機(現ジュビロ磐田)の礎を築き、ジュビロ磐田をスーパーバイザーとして最強に導いた存在です。

豊田:巻頭に採用された東京五輪・アルゼンチン戦の写真には驚きました。自分自身、何年ぶりかで見る画像なのですが、ローカルメディアでこのカットの採用は10周年を飾るに相応しい選択と言えるでしょう。

椛沢:現代の素晴らしいIT化によって、過去の写真をオンライン上で探してライセンスクリアーにすることができるサービスがありまして、そこで東京五輪で活躍する杉山さんの写真を手に入れることができました。なぜ杉山さんが登場するかと言うと、何を隠そう浦和レッズの前身である三菱重工サッカー部OBでもあるからですね。豊田さんは以前の著作『浦和レッズ再生への序章』でインタビューをされて以来でしたね。

豊田:十数年ぶりでお会いしました。本誌66号のゲラ時点でサポーター仲間から「厳しく鋭いコメント」との声が出ましたが、それでも前回のインタビューの頃に比べると丸くなったなあという印象が強い。前回インタビュー・2001年時点でのジュビロ磐田は年間勝率8割8分、2シーズンでわずか6敗というモンスターチーム。そのクラブを牽引していた杉山さんの古巣レッズへの提言はさらに的確でシビアなものでした。

椛沢:日本サッカーの創世記を支えて、現在のサッカー界の土台を築き、Jリーグでもジュビロ磐田を最強に導いた経験を持つ杉山さんのお話は重みのあるものと思います。並大抵の努力では世界に立ち向かう選手、チームにはなれなかったことが分かりましたし、自分の所属チームである三菱重工サッカー部でもサッカーに向ける姿勢を伝えていたことがわかりました。

豊田:椛沢編集長には伝え忘れていたのですが、杉山さんは日本のトップリーグにあって「選手として日本一」「監督として日本一」「クラブフロントとして日本一」をいちはやく達成しているサッカー人なのです。彼のキャリアを追いかけて行くと、ことプロサッカーにおける「勝負強さ」は、決して監督選びや補強選手ばかりに委ねられるものではないことが分かる。興味のある方は拙著をご一読ください。現在のレッズにも通じる提言や、強豪ジュビロの総指・荒田忠典さんのレッズサポーターへのメッセージも収録されています。 【浦和レッズ 再生への序章 2002年 小学館刊】

椛沢:25周年を迎えた浦和レッズもミシャ体制6年目のシーズンを迎えました。リーグタイトル奪取が至上命題となったシーズンではあると思いますが、活性化し始めたJリーグの中で他チームも戦力補強をする中で一筋縄ではいかない戦いが待っているかと思います。その現状を象徴するような開幕の横浜マリノス戦となってしまいましたが。

豊田:つくづくシドニーから横浜まで、変わらずアウェイスタンドに駆けつけたサポーターに応えて欲しかったです。しかし、レッズ現況を見きわめることは「ホーム浦和の命題」でもある。杉山さん号の本誌扉ページに記した「ホームタウンは、ここ一番で勝てないクラブの現実から目をそらしてはならない」……。現状で私的スタンスを表すなら、この言葉がすべてです。

椛沢:チームは生き物ですから昨年良い結果を出せたチームが同じメンバーであっても同じ結果を出せるわけではないのがサッカーの難しい所です。火曜日にはACLソウル戦、土曜日にはホーム開幕セレッソ戦と、試合は立て続けにやってきますから、敗戦の経験を活かしながら試合で修正が求められます。

さて、先日2017 Jリーグキックオフカンファレンスに参加してきましたが、今回はJリーグの事業をプレゼンテーションする時間があり、「Jリーグが目指すフットボール」「JリーグとDAZNが目指す未来」「Jリーグの国際事業」「2017年のスタジアム動向」「2017年の選手育成について」「Jリーグが取り組む人材育成」の項目に分けての紹介がありました。皆さんご存知の通り、10年2100億円の巨大放映権契約をJリーグはDAZNと結びました。これによって予算的な余裕も出来たわけですが、一過性のものとするわけではなく、上記のソフト面、ハード面での事業が全てリンクしてきて、Jリーグが新たなステージに進んでいくのではないかという期待感を持つことが出来ました。村井チェアマンも「これからは競争の時代に突入する」と明言していますが、今年の優勝チームには巨額の強化支援金が支払われることになり、ビッククラブをリーグが仕掛けて作るという狙いがあるかと思います。

浦和レッズ創世記にフロントで活躍した”ミスター”佐藤氏は、Jリーグのスタジアム推進グループで活躍する。

浦和レッズ創世記にフロントで活躍した”ミスター”佐藤氏は、Jリーグのスタジアム推進グループで活躍する。

豊田:ホーム浦和のベテラン支持者の間からは田嶋幸三さん(浦和南OB、JFA会長、AFC理事)と村井満チェアマン(浦和高OB)が、ホーム浦和に課題をつきつけている……という声も出ていますね。レッズもサポーターの動員やグッズ売上に頼る目算では安泰とはいかない構造になりました。タイトルの報奨金を元手にしての運営や育成で、一気にクラブステイタスつまり強豪と弱小の下克上が起こるシステムです。

椛沢:派手に打ち上げ花火を上げるだけではなく「2017年の選手育成について」のプレゼンテーションの中では、Jリーグがベルギーのダブルパス社が開発した「フットパス」を導入して、Jクラブをチェックして、ユースアカデミーを経営、運営すべきかというガイドラインを示す試みをスタートさせているという話がありました。チェック項目は、クラブフィロソフィーの有無から、コーチの登用は一定の基準を持って行われているかなどのソフト面からハード面において、細かく厳しくチェックをされているようで、これによって各クラブの弱みが分かり、各クラブの育成環境、育成組織における改善が図られていくのではないかという期待が持てます。

豊田:このトークの休止前から編集長と話題にしていた「クラブライセンス制度」に関連するJリーグ規定の徹底、という動きに見えます。再びこの「フットボールトーク」を舞台とし、クラブとホームタウンの動きや将来指針を考えて行きたいと思います。

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