鹿島戦での騒動について阿部が森脇に掛けた言葉とは【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
ピッチの中の出来事は、全てピッチの中で終わる
鹿島の勝利を讃える意気揚々とした歌声を耳にしながら、埼玉スタジアムを包み込んだ重たい空気を胸いっぱいに吸い込んで、思い切り溜め息とともに吐き出した。
ボールは保持するものの決定機が作れない、言換えればボールを持たせれて鹿島にゲームをコントロールされた。悔しくって、情けなくって・・・。でも、頭の中に浮かんだ言葉は「完敗」であった。素直に鹿島の勝利を認めざるを得なかった。
だが、試合後に小笠原選手が発したことにより、後味の悪い試合になってしまった。
ことの発端は、0-1で鹿島がリードする展開の中で78分に浦和陣内の右コーナー付近で土居選手と槙野智章選手のせめぎ合いでの出来事からだった。
浦和側からしたら当然鹿島にCKを与えたくない。興梠慎三選手がサポートに戻り、そこへ伊東選手も絡み4者がもつれ合う形となり、間近で見ていた副審の旗が振られ鹿島側のファールの判定の笛がなったのだ。
残り時間を考えれば早くリスタートをしたい思いが興梠選手にはあったのだろう。興梠選手が土居選手を突き飛ばしてしまったのだ。これに関しては、反スポーツ的行為として興梠選手にはイエロカードが提示された。
興梠選手の行為に、小笠原選手とレオ・シルバ選手が詰め寄りもみ合いになったのだ。この時に、森脇良太選手がレオ・シルバ選手に「「くせいな、お前」と言う言葉を発した。以前、うちに居たカイオやダヴィにも同じことを繰り返した。言葉の暴力だし、差別として捉えてもおかしくない。検証して欲しい。レオ・シルバ選手が近づいた時に鼻を押えるジェスチャーもしている」屈辱的な発言をしたと小笠原選手が試合後に主張した。
しかし、森脇選手は「興梠選手が鹿島の選手といざこざになった時に、興梠選手を守ろうという思いで止めに入ろうとした。その時に、小笠原選手が「お前は入って来るなボケ」と言われたので、それに対して「うるせい、ボケ」と言う感じで返し、鹿島の選手が3~4人加わってかなり詰め寄っていろいろと言ってましたけど・・・。その時に僕の顔にたくさんつばが散ってきたので、小笠原選手のつばも散ってきた」と話し、一呼吸いれるように「すみません。子供みたいな喧嘩で、恥ずかしい」と下を向き「彼に「口が臭いんだよ」という発言をして、チームメイトに止められてその場を後にした」と話した。
そして「子供みたいな喧嘩だなと思って反省している。小笠原選手が何を勘違いしたのか分からない」と悲しげな表情を浮かべていた。
両者の主張は、全く食い違いを見せていた。
浦和に森脇選手が移籍して来て5年目を迎える。日頃から森脇選手を取材していると、彼の純真な心に触れることがある。声を掛ければ、どんなに疲れていても嫌な顔をひとつ見せることなく紳士的に対応してくれる。弄られキャラクターのところはあるが、チームのムードメーカーにもなっている。良い意味でも悪い意味でも、森脇選手は純粋な選手である。ずる賢いことをするタイプではない。
ピッチの中で起きた揉め事は、上手く時間を使うだけでなく、森脇選手を利用して冷静さを無くさせ集中を切らす鹿島側の目論見があったようにも思え、それを正当化する為だったのではないかなどと考えてしまう。ひょっとしたら、熱くなりすぎて小笠原選手が誤解したのかも知れない。
しかし、これはあくまでも浦和を愛するが故の思いだ。鹿島側の立場になって考えると全く違う意見になるだろう。上手く時間を使ったのでも、森脇選手を利用してのでも、正当化しようとした訳でもない。屈辱的な発言や態度は絶対に許されるものではない。遺憾に思い、断固として抗議するべき問題であった。
ただ、フットボールを愛する者の1人として感じることは、ピッチの中で起きたことは主審がジャッジすることである。相手競技者またはその他の者につばを吐く。乱暴な行為を犯す。攻撃的な、屈辱的な、または下品な発言や身振りをする。これらの行為は、レッドカードが提示されて退場処分となる。全ては、主審の判断である。
松尾主審は、興梠選手にイエロカード提示しただけである。もみ合いとなる中に入りことの収拾を図り、食い下がる小笠原選手にも肩に手を置き宥めるように話して、ゲームを再開させた。両者の主張の食い違いはあるが、松尾主審が下したジャッチに従うことがルールである。
キャプテン阿部が森脇に掛けた言葉
鹿島戦の翌日、クールダウンのためにピッチに姿を見せた森脇選手に「頑張って~」とファン・サポーターから声が掛かった。
森脇選手は「嬉しいですね。こういう状況で、チームも結果が出ていない中で熱い声援なので励みになります」と笑顔を見せた。
練習前のミーティングでも森脇選手は、迷惑をかけてしまったことに謝罪をしていた。「一夜過ぎて、今日になって、いろんなことの重大さ、僕が発した言葉でたくさんの人に迷惑をかけた。浦和に関わるファン・サポーター、スポンサーさん、クラブの人たち、チームメイトに迷惑をかけてしまった。僕自身、大いに反省しないといけない。自分の取ってきた行動を振返る時間にしなくてはいけないと強く感じた。今、言えることは、本当に浦和に関わる全ての人に、謝罪したい」と神妙な面持ちで話していた
クールダウンのランニングでは、森脇選手にそっと寄り添う阿部勇樹選手の姿があった。
「阿部ちゃんも僕の性格を分かってくれていて、今日も気を遣って寄り添ってくれていたと思っている。キャプテンとか人生の先輩の話はタメになる。キャプテンにも心配掛けさせてしまった」と悲痛な表情を浮かべ「自分自身に苛ついた。『何やっているんだ、俺は・・』と言う気持ちにもなった」と俯き下限に話した。
阿部選手からは「もったいないじゃない。プレー中にそういうことがあっても良い方向にいくことはほとんどない。それよりは、プレーを迅速に始めた方が良い。チームのためにもなるし、モリのためにもなる」と言葉を森脇選手は掛けてもらっていた。
森脇選手は「試合中でも冷静さを保ってやりたい。今後は、そういう選手でありたい。負けている状況だったので、速やかにプレーを再開させることが必要だった。それが、自分の思いのままに行動を起こしてしまった。未熟だった。学んでいかないといけない」と真摯に受けとめていた。これを機に森脇選手の試合中のメンタル面もスキルアップしていくだろう。
試合会場に於ける全ての出来事に関してマッチコミッショナーが、最終的な判断をしてJリーグに報告を行う。鹿島側は、マッチコミッショナーに話をしている。
浦和側も他の選手に話しを聞き事実確認をしたが、森脇選手本人が話したこと以上のものは無かったそうだ。そして当然、マッチコミッショナーに話しをする。今後は、Jリーグで検討されることになる訳だが、ピッチの中で起きたことは、ピッチの中で全て終ることが理想である。
試合終了の笛が鳴ると両チームが一列に並び、闘いを見守り、自分たちと共に闘ってくれたファン・サポーターに感謝の気持ちを籠めて一礼し、お互いの健闘を讃えて握手をする。もちろん、主審と副審にも敬意を表して握手をする。それぞれの立場で思いやり、お互いをリスペクトすることが大切なのだ。それが、フットボールだと思う。
Q.精神的な疲労について教えて下さい。
A.運動をし過ぎることにより精神的に疲れると、身体の中のホルモンのバランスが崩れて筋肉の回復を遅らせてしまいます。オーバーユース症候群中には、精神的疲労もあります。意欲が落ちれば、ホルモンの分泌が悪くなりパフォーマンスが落ちてしまいます。軽いトレーニングをしながら、リフレッシュすることが大切です。トレーナーさんたちが、メニューを作り食事管理し、乳酸値を図ったりケアーをしていきます。40℃ぐらいのお風呂にゆっくりと浸かりリラックスして疲れを取ると良いでしょう。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/