去り行く夏の惜しみながら、GKの試練の夏を思う【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
GKにとって過酷な季節
一雨ごとに秋の気配が近づき、今年の夏が終ろうとしている。今年の夏は、ギラギラと照りつける太陽が恋しくなるぐらい日照時間が短い夏であった。太陽の日差しを遮った灰色の雲で蒸し暑く、空気が重く感じられて息苦しくなる。
8月23日に開催されたACL・準々決勝川崎戦は、気温29.1℃で猛暑日ではないにしても、雨でもないのに湿度が87%であった。そんな夏を、選手たちは過酷な過密な日程を良く闘ったと思う。
もちろん選手たちは、闘える身体を作るために、纏わり付くような蒸し暑さの中でも水分補給をしながら、ボールを追いかける日々を過ごしていた。練習が終わるころには、まるで頭から水を被ったように、汗が滴り落ちていった。
一番、過酷なのはキーパーグローブを付けているGKたちだ。練習が終わり、キーパーグローブを外し、指に巻かれたテーピングを解いた手は、白くシワシワにふやけていた。
榎本哲也選手は「蒸れると言うよりも、グショグショになっちゃうんですよ、汗で。プレーにも影響がある。グローブが濡れているし、ボールも汗かいて濡れているし、雨の日状態ですよ。逆に、夏は雨の日の方がやりやすいかも知れない。雨だって分かっているから、そういうプレー判断をする」と雨の日と同じ状態であった。
そして「雨の日と一緒。最後までしっかりとボールを見て、キャッチングするところと弾くところの判断だ。カラカラの天気の時は、キャッチする前にフィードのところを見ても大丈夫だが、優先順位を間違えるとポロッとしてしまう。それは、未だに経験していてもそう言うときはある。練習でも気を付けているが、練習中でもキャッチはチャレンジしないとね。試合では、判断だ」と練習ではチャレンジをすることを忘れず、試合では経験を活かした判断力を研ぎ澄ます。
西川周作選手は「もう、ビショビショですよ。夏場はどうしても指先はふやける。晴れていても、芝が濡れていなくても、夏場ってボールが湿気で湿っている。グローブも濡れているので、簡単なボールほどしっかり正面に入って取る。取る、弾くのところは気を付けている」と話した。
岩舘直選手は「自分の汗で、ビチャビチャですよ。雨降ったみたい。雨が降っていれば割り切ってプレーできるが、勝手にスリッピーになっている。練習でもグランドに水を撒いているので、雨の中でやっている感覚に近い滑り具合だ。ボールを取る、弾くの判断だ。ただ、弾いてばかりになっちゃって、自分のプレーが小さくなって安パイでは、自分の技術の成長を高まるを止めてしまうと勿体無い。少しでもキャッチできる範囲やボールの幅を増やすようにトレーニングしている」とチャレンジする意識で練習していた。
福島春樹選手は「練習でも試合でも、いずれグローブの中はグショグショで濡れた状態でやっている。その中でも、後ろにボールを零さないようにする手の角度や出し方だったり拘ってやっている」と自分なりの拘りをもっていたのだ。フィールドプレーヤーたちとは違う、GKの苦労があったのだ。
そして、指先の感覚が大事なGKにとって、キーパーグローブ1つでプレーの感覚も違ってくる。また、汗防止対策などもさまざまである。
榎本選手は「冬用と夏用ってメーカーによってはあるみたいだが、俺はいつも普通のやつを使っている。俺は、ビチッとした手のヒラ感覚のほうがやりやすい。スパイクもそうだが、ギュギュウのほうが好きだ。俺は、余っているのが気持ち悪い」と指先に遊びの隙間のない、手にピッタリとしたキーパーグローブを使っていた。
「汗防止は、練習して慣れることだ。最近は、自分で水に浸けて練習をしている。キーパーグローブのまま水に浸けて、わざとビジョビジョにして練習したりね」と笑ったのは、西川選手であった。
敢えて、最初から悪条件を作り出して練習していたのだ。西川選手は「僕もいつも使っているグローブだ。試合では、前後半でグローブを変えていたんだけど、今は同じ物をずっと使っている。そっちのほうが、慣れる感じだ。埼スタでは、アップのときは芝を濡らしてないですし、試合のときは濡らしている状態なので・・・。アウェイチームのキーパーのほうが、嫌だと思う」と話し「以前は、ちょっと余裕があるキーパーグローブを使っていたが、モデルチェンジをしてタイト目と言うか自分の手のサイズの物を付けてる感はある。ちょっとデカいと、汗をかくと余裕があるぶん重く感じていたが、今はタイトなので僕は好きですね。みんな、それぞれの拘りがあると思う。森脇選手にみたいに、リストバンドをすることも考えたんですが・・・。やっぱりないかな?!森脇選手は、リストバンドをしているけど、それで拭いているところを見たことがない」と笑いながら、そのときの状態に慣れることを大切にしていた。
汗っかきの岩舘選手は「グローブを外して汗を拭くことができないから、練習中にタオルで、表面に付いた水分とか小まめに拭く。途中で、グローブを変えたいぐらいだ。あと、自分はテーピングを冬場とかあまりしないが、肘から汗が垂れてくるので手首とかテーピングをするようにして、テーピングで塞き止めてもらえるようにしている。リストバンドは、邪魔になるし気になる。手首の固定も兼ねて少し多めに撒いている。グローブは、遊びがあると少し嫌な感じがするのでピッタピッタって感じじゃないが、少しピッタリ目が良い。榎本さんのグローブは、凄いですよ。感覚が素手に近い感じだった。俺とか哲さん(榎本選手)は、汗をかく量が尋常じゃないので、余計にグジョグジョだ」と話した。
福島選手は「僕は、緩すぎず、締めすぎずだ。グローブ事態のサイズは普通だが、手首のところをキッチリ締める。キツく締めないと、なんかシックリとこない。テーピングで抑えるよりも、バンドのところでしっかりグッと抑える感じだ。最近は、実戦を意識すると拭くタイミングがないので、意識的にタオルで拭かないかなぁ。最初に水に浸けるのは1つの手段だが、僕はその時々の状態で臨機応変でプレーを意識している。だいたい1時間半で、僕はそんなに指先がふやけたりしない」と体質的に指先が汗でふやけて感覚が鈍ることがないようであった。
だが「地面に水を撒いた時とか、より一層濡れるので確実なことを確実にするようにしている」と話した。
浦和に在籍する4人のGKたちの話しを比較すると、なかなか面白い。選手の体質の違いや拘り、性格などが見え隠れしている。それぞれの置かれた立場の違いがあるにしても、ゴールを守る最後の砦であることには違いない。彼らたちの苦労は、必ずピッチで報われるだろう。本当に今年の夏は、GKたちにとって試練の夏であった。その夏が、もうすぐ終ろうとしている。
Q. 肉離れの3型で、手術が必要な場合もあるのでしょうか?
A. 肉離れの多くは、安静にしていれば治ります。しかし、中には3型で完全に腱断裂してしまったプロ選手の場合などは、アンカーと言って骨に特殊な錨を埋めて糸で結合させます。アンカーは、チタンでできていて0.5mmほどの小さいものです。手術が必要とされる肉離れは、本当にごく希なケースです。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/