浦和フットボール通信

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ミシャなき後の堀レッズが迎えた総決算の戦い。 ACL決勝に「浦和の命運」を感じる。 水沼貴史

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J初の制覇以来、10年ぶりにアジア王座に挑む浦和のファイナルが迫っている。ミシャ政権の後を受けた堀監督率いるレッズイレブンは、ホーム埼スタを埋めるサポーターの前で今季最後のタイトルチャンスに挑む。相手はサウジアラビアの古豪アル・ヒラルFC。サンフレッチェ時代からの連携スキルを糧にレッズを牽引してきた西川、柏木、槇野らの主力メンバーは、レッズをアジア王者に返り咲かせるプレーができるのか…… 平坦ではなかった浦和のクラブ指針も踏まえ、サッカー解説者の水沼貴史氏に訊いた。(浦和フットボール通信編集部)
Text/Mitsuho Toyota、Interview&Photo/Yuichi Kabasawa、Photo:Kazuyoshi Shimizu/Yuichi Kabasawa

水沼貴史 Takashi Mizunuma
1960年、埼玉県浦和市出身。本太中、浦和市立南高では全国制覇を経験。法政大入学後、79年にユース代表としてワールドユースに出場。83年に日産自動車サッカー部に入り木村和司、金田喜稔らと日産の黄金時代を築き、95年で現役引退。国際Aマッチ32試合出場7得点。引退後はメディアで活躍。06年に横浜F・マリノスのトップコーチ、監督に就任。その後、法政大で指導を行い、現在はサッカー解説などを行っている。

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勝敗の分岐点は埼スタの雰囲気。

UF:いよいよアジアチャンピオンズリーグ(ACL)が埼玉スタジアムで最終戦を迎えます。

水沼:決勝の相手アル・ヒラルの監督は元マリノスで僕のチームメイトだったラモン・ディアス(笑)。中東を代表する強豪だったサウジアラビアの名門ですね。もちろんアウェイ戦の厳しさはハンパないでしょう。でも最終戦の舞台はホームの埼玉スタジアム。逆に中東の選手たちにホーム浦和の怖さを思い知らせるサポーターの声で雰囲気を作って欲しい。もちろん選手にはそれに応えるプレーを望みます。

UF:事実レッズは実にきわどいホームのセカンドレグを制して勝ち上がって来ています(注:済州戦は0-2、川崎F戦は1-3からの逆転)。時代は変わっても、おなじみの埼スタ神話が生きている(笑)。ファイナルはどんな展開を予想しますか?

水沼:レッズは組織的なだけでなく、コンパクトなサッカーも出来るようになってきています。そのポイントは上海上港戦のような「魂の守り」。いかにゴール前で身体を張れるか、シュートブロックしてガッツポーズが出せるか……。メンタルが充実していないとこういうシーンは出てこないんです。これらがクールにできるようになれば今の浦和は相当に強い。勝機は十分にあると予想します。

UF:言われ続けた「勝負弱さ」を払拭するチャンス?

水沼:テクニックよりもメンタルで決まる激戦になります。つまるところ技術も戦術もコントロールするのは心とか気持ち。シュート場面で冷静さがあるか、守りの場面でも「来い、来い」というくらいのハートがあるか。届かないと思うボールも諦めずに食らいついて触る。ミドルを撃たれそうなら一歩前、半歩前にふみ出す。そういう強いメンタルを持ち続けなくてはならない。タイトル戦ではそこにすべてが掛かって来ますから。綺麗にやって勝てるゲームにはなりません。

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ミシャの功績と皮肉な結末。

UF:長かったミシャ政権時代が終わり、チームも随分と変化しました。堀監督はトーナメント戦のリアリズムも感じさせる采配をしています。

水沼:当たり前ですが指揮官交代はリフレッシュ効果だけではなかったですね。システム、選手の配置、起用選手も変えてチームの弱点克服が見えてきました。そしてそれは選手個々の能力がアップした、というペトロヴィッチの功績に行き着きます。場数を踏んで展開を読み、試合をコントロールできる選手が増えている。堀監督はそこを上手く引き出していると思うけど、やはりそこまでの地力を育てたのはミシャに他なりません。彼の手で育てられた選手も多いから、ACLタイトルに賭ける思いはアル・ヒラルに引けをとらないでしょう。

UF:サポーターたちにとっても是が非でも10年ぶりのACLタイトルが欲しい試合です。

水沼:レッズの将来を切り拓くためには、ここで勝てるか否かはとてつもなく大きい。文字どおりレッズの歴史に刻まれるし、久方ぶりにクラブが変われるチャンスではないでしょうか。

UF:それほどにレッズ史上最長の5年半監督を務めたペトロヴィッチの交代劇は、大きな意味をもっていた?

水沼:就任時はギリギリで残留にすべり込む状態でバトンを受けたのですから。そこからよくぞ魅力的かつ内容も伴ったチームを作ったと思います。しかし(昨年のルヴァンカップ制覇以外は)タイトルが獲れなかったというプロセスは、やはりサポーターの思いと重ね合わせるといかにも足りない部分だったのかも……。

UF:残念ですが、その印象は否めません。

水沼:前監督にとってもクラブにとってもタイトルから見放された流れの中で、受け継いだ堀監督がACLを獲る可能性がある。海外も含めていろんなクラブの盛衰を見てきたが、サッカーの命運って皮肉なものですよね。

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(今後のレッズへの提言は、フリーマガジン「浦和フットボール通信」で掲載中。
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