浦和フットボール通信

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「ダイヤモンドサッカーとアジア制覇をした光景に思う」フットボールトーク Vol.181

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椛沢佑一(本誌編集長)×豊田充穂(コピーライター)

ダイヤモンドサッカーとアジア制覇をした光景に思う。

椛沢:久しぶりのフットボールトークです。レッズが見事にアジア制覇しましたね。今季はミシャ体制が終わるなど、バタバタしたリーグ戦の中でACLはアウェイで苦戦するもホーム埼スタでことごとく大逆転劇を演じて、最終的にはホーム埼スタ無敗でのアジア制覇となりました。フリーマガジン浦和フットボール通信では、戦前に水沼貴史さんに語って頂きましたが、水沼さんも語っていたように、ペトロヴィッチ監督が解任されてからのアジア制覇とはなんとも皮肉な結果でもありますが、ペトロヴィッチ監督が築いたものを堀監督がうまく短期決戦で勝負できるチームに仕立てたという見方もできるかもしれません。

豊田:堀采配にさまざまな論評が加えられていますが、ミシャの戦術をベースにして巧みに独自色を加えたと思います。リーグ戦においては成果が出しにくい部分はあったと思うが、ここ一番で見せる堀さんの勝負に対するリアリズムはACLのトーナメントの修羅場においては見事に嵌った印象をうけました。

椛沢:2013シーズンに敵地でスーパースター軍団だった広州恒大に完膚なきまでに敗れた時は、中国の地で、アジアの勢力図の変化を感じてJリーグ勢が優勝できるのは数十年無理なんじゃないかと思っていましたが、まさかこんなにも早くレッズが2度めの制覇を果たすとは正直思っても見ませんでした。準決勝ではフッキ、オスカル、エウケソンと海外のスター選手を揃えた上海上港を破って、決勝でも中東のスーパースターチーム、アル・ヒラルを破っての王者ですから、立派な成果ですね。

豊田:フロンターレを2点差からひっくり返した場面までは「勝ち運」を引き込んだムードを感じましたが、その後の修羅場、セミファイナルあたりからは守備の再構築をベースにして勝ちを掴み取るセオリーが徹底されました。中心はやはり長澤の発掘でしょう。彼が前線で精力的に刈り取ることによって、課題とされていた切替えのスピードや攻めに転じるリズムがぐんぐん上がって行った。拾ったボールから縦へのパスや強引なミドルレンジからのシュートも出てきて、柏木や武藤が自由に動けるスペースも生まれて来ましたね。ここはやはりミシャ時代には見られなかった攻めでしょう。知り合いのマニアたちの間からは「長澤は浦和のマスチェラーノ」なんていう声も上がっていました。

椛沢:印象的だったのは、試合開始前のレッズサポーターのビジュアルサポートを中心とした応援の様子ですね。敵地サウジアラビアで大アウェイを受けてのホーム戦ということで、THIS IS URAWAを見せつけてやろうと、スタジアム中が闘う雰囲気だったかと思います。最近は空席が目立つスタジアムの中で、これが浦和だというシーンが久しぶりに垣間見ることができました。浦和レッズが目指すべき道というのは、この光景から感じるものがあるんじゃないかと思います。

豊田:やはり埼スタは満員にならないと……。さっそくに当日のスタンドビジュアルをSNSで見たマンチェスターのマーク・ラッセルやミラノの宇都宮基子ら海外のフリークたちからも、現地のサッカー好きたちからの反応の声が伝えられました。「クラブW杯での浦和とレアルの対戦が楽しみ」とのメッセージです。

椛沢:5万人を越えたら勝てない……というジンクスも長らく言われていましたが、埼スタのあの大観衆があって、それに応えるチームがいる。それがこのサッカーの街に相応しい光景だと思います。勝利のために浦和レッズに関わる全ての人が一体になる。そうなった時の強さは過去も06年のリーグ優勝、07年のACL制覇でも感じたことです。アジアの頂点を目前にして久しぶりにその機運が出たかと思います。

豊田:事実、当日現地に行けなかった人、行かなかった人は私の周辺に数多くいるんです。本領さえ発揮すればレッズの大一番のホームタウンの熱は、まだまだこんなものではないということでしょう。これも皮肉な裏話なのですが、実況中継が行われたBSはタイムアップ直後に放送が打ち切られ、場違いな歌番組に切り替わってしまったのですが、そこで歌われていた曲が「分かれても好きな人」だったらしい。局に対する怒りとともに、苦笑いの輪も広がったそうです(笑)。

椛沢:すごいオチが待っていましたね(笑)。色々な理由でスタジアムを離れている人も今回の優勝を喜んだという声は各所で聞きました。これは上の話につながってくることかと思います。ACL決勝が行われる前の23日(木)には日本サッカーミュージアムで開催されたダイヤモンドサッカー放送50年記念トークショーに豊田さんとお邪魔してきました。ダイヤモンドサッカーで長らく番組を務めた金子勝彦アナウンサーはもちろんのこと、元日本代表、三菱重工監督の二宮寛さん、大仁邦弥日本サッカー協会名誉会長など懐かしの顔が勢揃いをしての会となりました。今回は縁があって、浦和フットボール通信にも登場頂いた二宮さんが登壇されるとのことで、二宮さん登場のバックナンバーも会場に置いて頂けることになりまして、約100人の来場頂いた皆さんに手にとって頂いていました。

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豊田:古いサッカーファン世代はもちろん、若いプレーヤーやサッカー好きの方たちにもぜひお伝えしたかったイベントです。とりわけフットボールの報道に関わるスタッフにとっては必見の内容が含まれていたと思う。金子勝彦さんも、日本サッカーの次の飛躍のためにはマスコミの役割が非常に大きいとの認識を強調されていました。初期のイングランドリーグの放映権料がわずが数百万円だったとの当時のプロデューサー氏の証言も非常に興味深かったのですが、そんな会場に二宮さんの手によって本誌が置かれていたことには大きな感銘を受けるとともに責任の大きさも感じました。

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椛沢:日本のフットボール文化を作ったダイヤモンドサッカーの皆さんのフットボールへの真摯な思い。真摯にフットボールを伝えることの重要性は肝に銘じて我々もやっていかなければならないことですね。最近の報道はどうしてもビジネス側面が強く出てしまうことが多々見受けられます。もちろんビジネスですから、そこも無視できない部分ですが、それによってフットボールそのものがしっかりと報道されなければフットボールの魅力が正しく伝わらない。フットボールが盛り上がらないということに繋がってしまっては本末転倒。フットボールが盛り上がる情報を発信していかなければならないと思い、「原点」を知ることの大事さをここでも感じることができました。

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