浦和フットボール通信

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西川周作が最後尾から守備の安定を図るために意識することは?【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

守備範囲広く飛び出せ!果敢に攻めろ!勝利を目指し吠えろ!

「クリアー!」「中、しぼれ!」「マーク、ハッキリ!」「ライン、上げろ!」

西川周作選手の声が、大原練習場に響き渡っていた。普段の穏やかな西川選手とは、別人のような鬼気迫る声であった。まるで土田GKコーチの現役時代を感じさせるものがあった。また、味方が良いプレーをすると「良いね~」と笑顔を見せたりと、アメとムチをうまく使い分けてチームを統率する姿があった。

今シーズン開幕してからリーグ戦4試合とYBCルヴァンカップ2試合を戦い、1勝3分け2敗と好スタートを切ることができなかった浦和。リーグ戦では、勝利に見放され失点を重ねてしまっているだけに、西川選手は浦和の守護神として自責の念に駆られていた。だからこそ、代表ウィークのリーグ中断期間の2週間で守備の修正面をしっかりと見直し、有意義な時間にするために、より積極的に声を出していた。

3月26日に行われた順天堂大学蹴球部とのトレーニングマッチは、代表選手たちが不在とはいえ主力組で闘った1本目は、攻守のバランスも悪くピッチの中で同じイマジネーションを描くことすらできなかったのだ。トレーニングマッチは、結果が全てではない。そこで何かを感じ取り、この先の練習や公式戦に生かしていくことが大切なのだ。

西川選手は「順大との練習試合はうまくいかなくて、課題がハッキリと見えた試合になった。代表組がいない中でも、課題が出たことは良かった」とポジティブに捉えていた。

そして「戦術面というよりは、相手とガッチャンコする場面がなかなか無かった。それは、距離感が悪かったからプレスに行けてないのもある。前と後ろのプレスに、行く、行かないのギャップが読まれてしまって、縦パス入れられた時に守備の間でやれてしまうシーンが見受けられた。距離感をコンパクトにし、後ろのDFラインを上げていかないといけない。DFラインを上げられない時は、前を下げる。その使い分けは、しゃべることでクリアになる」とチーム全体のバランスを後ろからの指示で統率していく重要性を感じていた。

そして、トレーニングマッチで出た課題を真摯に受け止めて練習に取り組んでいった。

DFラインを高く設定し、前線からプレスをかけてパスコースを限定しながらボールサイドに素早くスライドをする守備で、中盤でボールを奪うことを試みた。また、前プレスが嵌まらない時は、しっかりとブロックを作る。だが、このときもDFラインがズルズルと下がらないように西川選手は、細心の注意を払い的確な指示を出していた。それにより、ボールの奪いところがチーム全体として明確になった。

「ポイントを決めてコンパクトにして、攻守のバランスを意識してやれた」と充実した表情をみせた。

だが、DFラインを高く設定すると、敵陣からDFの裏を狙い一発でカウンターに持ち込まれる危険性も否めない。「コンパクトにしてもファーストディフェンスがプレスに行けてないと、簡単に背後を狙われる。相手に隙を与えないように、みんなで前線からの守備をやっていきたいですし、球際のところで相手とガッチャンコするぐらいの距離感を詰めていかないと、結果は出ない。

球際にいく意識を練習でも、試合でもやっていかないと。まずプレスに行けてなければ、球際に勝つ、負けるはない。後ろとしては、中途半端に対応するよりは、プレスに行って抜かれる方が整理しやすい。カバーリングをすれば良い。人がいるけどプレスに行けてない状況にならないように、声掛けをする。後ろからお尻を叩いて、前にいく守備をする」とカウンターの危険を頭に叩き込んでいた。

そして「開幕してなかなか勝利をつかめていない状況だが、4月から15連戦という非常にハードな闘いが始まる。1つ勝てば、波に乗って行ける良いチャンスだ。磐田戦をしっかりと無失点で勝って、スタートできるようにしたい。これまでのリーグ戦を生かしていけるように、キックオフと同時に闘っていく!」とリーグ再開となる磐田戦の完封勝利を、西川選手は誓った。

最悪なチーム状況を打破するためには、15連戦の初戦が本当に重要だ。完封勝利で飾ることができれば、自信につながりチームの方向性も定まるはずだ。過酷な連戦で、勝てば心地良い疲れで済むが、負ければ疲れが重くドッと押し寄せる。

西川選手は「連戦をやっていく上で、フィールドの選手たちは頭も身体も自分で感じない疲れがプレーで現われてしまう時が来ると思う。そこは、想定してGKがしっかりと守ることで疲れも飛んで、味方の良いプレーにつながると思っている。この15連戦で、自分がどれだけチームに貢献できるのかを、第一に考えながらコツコツとやっていく」と身を引き締めた。

西川選手のGKとしてのプレースタイルの特長の1つに、守備範囲の広さがある。そこに、的確な指示が加われば、浦和が試合の主導権を握れるはずである。

ビルドアップには、もともと定評がある西川選手だ。勇気をもってDFラインを押し上げ、守備範囲を広く飛び出し、攻守に渡りアグレッシブな姿勢を貫き、的確な指示で浦和を勝利へと導く。背中に背負った背番号1は、浦和の守護神だとピッチと魅せる。

Q. なぜ、GKの怪我で後十字靱帯損傷が多いのでしょうか?

A. 接触してガツンとぶつかったときに、膝が後ろにもっていかれてしまいます。交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたときと同じ状態です。前十字靱帯の後ろにある後十字靱帯が損傷してしまうのです。酷いときは、切れてしまいます。捻って切れる前十字靱帯とは違い、膝が後ろにずれることで後十字靱帯が切れるのです。都築龍太氏は、現役時代に右膝の後十字靱帯損傷しました。膝を曲げてボールを取りにいくGKは、どうしても相手との接触で後十字靱帯を損傷しやすくなります。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科 http://www.kawakubo-clinic.jp/

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