浦和フットボール通信

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激動となった浦和の改革が正しかったと証明するために【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

勝負はここから!

ため息を吐くたびに、心がずっしりと重くなる。一体いつから浦和の歯車が狂ってしまったのか・・・。

ペトロヴィッチ監督体制で積み上げてきたものを進化させることができれば、こんなに苦しいシーズンを過ごさなくても良かったはずだ。

昨シーズン、4月30日の大宮戦(0-1)の敗戦からリーグ戦12試合で3勝1分け8敗の状況を考慮し、ペトロヴィッチ監督体制に見切りを付けて堀監督体制へと移行した。

だが、その堀監督体制も1年もたなかったのだ。就任当初の堀監督は「5年半(ペトロヴィッチ監督体制)やってきて、良いものはたくさんある。それをゼロにしてしまうのはもったいない。その部分をしっかりと継承しつつ、1試合1試合を重ねればいろんな課題が出てくると思うので、その部分を選手たちと良い方向に向かえるように進めていければと思う」と話していた。

そして守備面を強化するために、高さとスピード、対人に対して強さがあるマウリシオ選手を獲得し立て直しを図ったのだ。堀監督は「継承しつつ」と言いながらも、9月9日の柏戦から4DFへとシステムを採用した。馴れない4DFであったがACL優勝の栄光はつかみ、残りのリーグ戦14試合で5勝5分け4敗とチームは少しだけ改善されているように思えた。

だが、終盤の鹿島、川崎、横浜FM戦のいずれも0-1の3連敗は痛かった。ACL優勝したクラブが、ACL出場権獲得を失う屈辱を味わう結果になってしまったのだ。

闘えるチームを作るためには、しっかりとした戦術の落とし込みが必要である。監督が理想するビジョンの中で、ペトロヴィッチ監督は理想とするサッカーをするためにこの5年半で選手を獲得してきた。そのツケが、堀監督に回ってきたようにも感じる。

サイドバックのスペシャリストがいない状態で、次のシーズンを見込んでの4DFだったはずだ。だが、見方によってはシステムありきで、そこに適材適所の選手を起用していないようにも感じられたのだ。

その結果、高木俊幸選手や駒井善成選手、梅崎司選手、那須大亮選手、ラファエル・シルバ選手など、選手として計算ができて、闘える選手が浦和を去ってしまった。それでも補強をしながら今シーズン沖縄キャンプから堀監督体制で、時間を費やして戦術の落とし込みをした。しかし、リーグ戦の序盤からつまずき2分け3敗と下位に沈み浮上の切っ掛けがつかめずに、堀監督体制に終止符を打つことになった。しかも、15連戦の初戦となった4月1日の磐田戦(1-2)に敗れてだ。

3月18日に横浜FM戦(0-1)で敗戦を喫し、日本代表欧州遠征の中断期間の約2週間で堀監督体制がどのようにチームの立て直すのかを見ていた。言葉は悪いが、いわゆる執行猶予期間であった。そして、磐田戦で改善が見られずに苦渋の決断を下すことになったのだ。

正直なところ、今までの浦和であれば、ワールドカップ中断期間までズルズルと堀監督体制でいくだろうと予想していた。だが、違っていた。

15連戦のさなか、暫定ではあったが育成ダイレクターを務めていた大槻監督に任せたのだ。大槻監督は、選手たちに喝を入れ自信を取り戻させたのだ。その手腕は、劇薬のように効果てきめんであった。大槻監督の暫定期間からオリヴェイラ監督にバトンが渡るまで、浦和の対応は、まれに見る素早いものであった。

その1つが、強化体制の見直しである。立花副社長が強化部門を所掌し、浦和を良く知っている中村氏をプロ契約のゼネラルマネージャーとして招聘した。そして、浦和のフィロソフィーを再確認しながら、選手たちにも守るべき理念を明確にして新たな要素を付け加えたのだ。

激動の15連戦ではあったが、浦和がしっかりと前に進むためには本当に必要なことであった。欲を言えば、昨シーズンが終了した時点でやらなければいけないことであった。だが、遅くとも着手したことは、大いに評価すべき点である。

もちろんオリヴェイラ監督は、浦和のフィロソフィーを理解した上での就任であった。浦和の再起を誓い、自信に満ちあふれたオリヴェイラ監督は、選手たちのプレースタイルだけでなく、プレーに影響をもたらす性格まで理解するところから始めたのだ。

連戦中ということもあり、チームの大きな変化をもたらすのではなく、少しずつ改善を図った。まずは、守備面でしっかりと前からプレスを掛けて、パスコースを限定させることに力を注いだ。これは、ペトロヴィッチ監督体制でも、やっていたことであった。選手たちは、身に染み付いていたやり方を呼び戻すには、多くの時間を費やさずに守備を安定させることが出来たのだ。

さらにオリヴェイラ監督は、選手たちのそれぞれの特長を生かし、浦和が勝つためにどのようなサッカースタイルが良いのかを考えたのだ。勝つために必要なシステムに固執するのではなく、選手ありきなのだ。オリヴェイラ監督は「3DF、4DFの両方のオプションがある」とうれしそうに笑った。

1つのシステムに特化し、それをチーム全体で極めて強くしていくやり方もある。だが、対戦相手によって臨機応変に対応できる強さを極めるやり方もある。監督が代われば、当然やり方は変わる。現状の浦和に適しているのは、やはりオリヴェイラ監督の両方のオプションをもったやり方なのだろう。そして、臨機応変に対応しながら選手の特長を生かした1つのシステムへと特化していく時期を迎えることになるだろう。それが、来シーズンになるのか、今シーズン中に行われるのか、まだ全体像は見えてこない。

ただ1つだけ断言できることは、勝負はここからだ!

ワールドカップ中断期間に、YBCルヴァンカップと天皇杯が開催される。そこでオリヴェイラ監督は、選手をドンドンと試していくはずだ。そして、7月18日名古屋戦から再開されるリーグ戦にすべてをかける。激動となった浦和の改革が、正しかったことを結果として示すために、中断期間にあらゆる手腕で浦和を常勝軍団へとしていくはずである。

Q.フィールドプレーヤーでよく前十字靱帯損傷のため手術をしたと聞きますが、後十字靱帯損傷も手術が必要になってくるのでしょうか?

A.もちろん手術することもありますが、わりと筋肉でカバーすることができます。手術しない選手もたくさんいます。腿の前の大腿四頭筋でカバーします。前十字だと膝が前にずれているので、筋肉をつければつけるほどずれが大きくなります。後十字は、大腿四頭筋を鍛えることにより、後ろにずれているのが前に戻るので体重をかけた時に不安定な感じになりません。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科 http://www.kawakubo-clinic.jp/

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