浦和フットボール通信

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榎本哲也選手がケガでの苦悩と、新体制での守備構築でチャンスを窺う【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

自分のプレーを追い求めて

「やらなくちゃヤバいんでね。俺の場合は!」と榎本哲也選手は、照れ笑いしながらいつも居残り練習にひたすら取り組んでいたのだ。ピッチをあとにするのも、一緒に居残り練習をしていた岩舘直選手と一番最後であった。

今シーズンの榎本選手は、ケガとの闘いから始まったのだ。ワールドカップでの中断期間前には、長いリハビリを終えてようやくチーム合流を果たしていた。練習を見ていても順調に回復し、いつでも試合に出場できるように見えた。シュートストップも、足の運びが良くしっかりと身体の正面でガッチリとボールを抱え込む好セーブをするシーンもあったのだ。

それでも榎本選手は「パワーも戻していかないといけないし、足の運びも自分ではシックリときていない。本当は、身体が伸びるはずなのに伸びない。いつもの踏切の場所なのに、身体が遠くにいかない。そういうのが足りない。GKの動きは細かいんですよ。3人の中での比較ができる。その悔しさもある。トレーナーと尚史さん(土田GKコーチ)と話しながらやっている。GKは受け身のポジションだから、その準備の段階だったりとか差がある。遅いんだよ。早さとシュートに対して正面。どれだけ足が運べるかに掛かっている。GKは足が運べないとダメだ。1歩目に対して試行錯誤している。無の境地もあるが、1歩目の力強さだ。今は力が余計なところに入ってしまい、力が伝わっていない。シュートに対するフィーリングは自信があるから、スッーっとできれば。細かいところができれば100%とは言わないが、自分がやりやすいプレーになると思う」と苦悩の表情を浮かべた。

榎本選手は、自身のプレーに対して決して妥協せずに、細かいところまでこだわって練習に取り組んでいた。

そして、「俺は、もっとやらないといけない。試合に出ていた人と同じような酸素でいてはいけない。取りあえずキャンプまでには、ちゃんとした身体にしないと。休んでいる場合じゃないんだ。オフもあるけど考えながらやっていきたい」と険しい表情を浮かべた。

そして「出遅れたって感じだよ。今シーズン、キャンプでは状態的には悪くなかったから余計にって感じで、もう少し早めにケアしていれば良かった。それがあったから、悔しいし、思うようにいかない部分が多い。イライラしながらやっている。2か月ぐらい休んでいて、なんでこんなに治らないんだって、しょうがないも言っていられない時期になってくる。午後の練習に備えるためにも、できることはやる」と歯がゆい思いを話していた。

過酷な2部練習でも、午前の練習が終わっても居残り練習で身体を追い込む榎本選手の姿は、リハビリをしていた時間を取り戻しているように見えたのだ。

横浜FMの下部組織で育ち、横浜FM一筋に15年。「もっとうまくなりたい」と自分自身のスキルアップを目指して2017年に慣れ親しんだ横浜FMを後にして浦和へとやってきた。浦和には、守備範囲が広く足技が光る攻撃的な西川周作選手という正GKがいた。

榎本選手は横浜FM時代からシュートストップに定評があった。それでも自分にないものを求めて、移籍を決めた。30歳を過ぎたベテラン選手の大きな決断であった。そして、西川選手と一緒に練習をすることで攻撃的な要素を取り入れて、更にプレーの幅を広げることができた。

しかし、ペトロヴィッチ監督も堀監督も浦和を去りオリヴェイラ監督体制になると、GKに求められるプレーも変わっていった。

「今は、どちらかというと守るGKって感じだ。僕が来た当初から真逆になった」とニヤリと笑った。オリヴェイラ監督体制で4DFへと移行すると、榎本選手が今まで培ってきた経験を生かすことができるチャンスがやってくる。

「4DFだったら、守備の受け渡しの部分が重要だ。難しいところだ。浦和は、受け渡しの部分がうまくない気がする。DFは、個人の能力だけではない。これからキャンプもある。GKと連携して獲る。僕が、浦和に初めてきた時には、そういう関係ではなかった。今の監督だったら、DFとGKが一緒になってコースを限定していくやり方だ。浦和からしたら新鮮だよね。そっちの方が、失点も減ると思うよ。良いタイミングでキャンプがある」と目を輝かせた。

だが、すぐに険しい表情に戻り「今は、シュートを止められる気がしない。そういう状態なんだよ。ゴールマウスに立った時に分かるんだよ。自分のコンディションの兼ね合いだ。なかなかそういう感じに陥ることはないんだけど・・・。今は、復帰したばかりで良い状態ではないんでね。でも、止められる気がしてくる段階が、自分の中で分かるから、こういう時があったなとそこに近づけるためにやっている。
この中断期間に身体を動かせる状態までいきたい。その分、ちょっとメンタルもケガしてからキツかったしね」と話し「これを乗り越えないとまずいですよね。何しに浦和に来たんだ!」と自分自身を鼓舞するように喝を入れたのだ。

長く苦しいリハビリから解放された榎本選手は、シュートに対してスムーズに身体が動けるクオリティーを上げていく。6月27日から始まるキャンプまでには、しっかりと身体を仕上げてくる。守備陣との連携が重要になる4DFは、榎本選手の得意分野である。攻撃型の西川選手もうかうかしていられない。今までとは逆に西川選手が、榎本選手から学ぶことが多くなるだろう。

たった1つのポジションを巡り、切磋琢磨していくGKの思いがあった。榎本選手は、細部に神経を尖らせて、どこまでも自分が求める究極のプレーを追い求めていた。

Q. GKといえば突き指などが多いと思いますが、指の怪我について教えて下さい。

A. 指の先の関節はDIP関節(第一関節)といって、ボールが当たって腱が切れてしまったり、また骨折と一緒に指を伸ばす腱が切れてしまい指先が曲がったままになってしまい伸びなくなります。これはマレット指(槌指)と言います。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科 http://www.kawakubo-clinic.jp/

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