浦和フットボール通信

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柴戸海が阿修羅のごとく見える理由【河合貴子のレッズ魂ここにあり!】

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

この3試合でみせた多面性

「つらい時こそ、成長するチャンス!逆にサボった時の方が、つらいことの方が多かった。できるようになれば、もっと上のレベルにいける!」

酷暑が続いた平成最後の夏、誰もいなくなったピッチで自分の課題と向き合いながらひたすらボールを蹴り続けていた選手がいた。柴戸海選手である。ルイスコーチと池田コーチに見守られながら、しっかりとボールの芯を捉えられるようにボールを蹴り続けていた。

練習でもスタメン組を相手に「慎三さん(興梠選手)は、Jリーグの中でも動き出しはトップクラス。練習の中で、対峙できるのは素晴らしいことで、自分が一番成長できている理由だと思う。その中で、センターバックとしっかりコミュニケーションを取りながら受け渡しをしたり、厳しくマークにいくのはマストだ。

プラスアルファーで、(中盤に)入った時に意図的にボールが奪えるようにしたい。奪ったらチャンスだし、「慎三さんからボールを奪えるようになったんだ」って自信をつければ、成長のスピードは速いと思う」と非常に高い意識で取り組んでいた。

大卒ルーキーとしてピッチで活躍する夢を描くだけでなく、浦和を愛する人々の大きな期待を背負い浦和に加入した柴戸選手。だが、ベンチ入りさえも叶わぬ苦悩の日々を、「監督が求めるプレーは?」「自分に何が足りないのか?」をずっと最善の道を模索してきたのだ。その模索こそが、柴戸選手の選手として成長させた。

そして、自らの手で試合出場チャンスをつかんだのだ。4-0と勝負が決まっていた神戸戦のピッチに81分に送り込まれると、神戸に1点でもやるものかと言わんばかりに全力でプレーし短い時間ではあったが躍動した。

久しぶり5万人を越えた埼玉スタジアムが、柴戸選手のワンプレー、ワンプレーに熱い視線を送ったのだ。

柴戸選手は「自分がサッカー選手として生きていく中で、本当に価値のある一日だった。自分が今までやってきたことが出せたのは、すごく自信になった」と目を輝かせて神戸戦での約10分間を振り返った。

そして「自分の中での理想は、何でもできること。一番の長所は、守備だ。攻撃も長所にしていかなければいけない。求められることを100%やった中で、プラスアルファーを公式戦でも練習でも出せればチャンスの幅は広がる。練習をした分、それが自分に返ってくると思う。まだまだだけど、スタートが切れたのでもっと上を目指してやっていきたい」と意気込んだ。

満員の埼玉スタジアムでのデビューは、柴戸選手にとって大きな1歩になっていた。神戸戦を皮切りに、柏戦、仙台戦と短い時間ながら3試合連続出場を果たしたのだ。柴戸選手は、この3試合で多面性を見せた。試合の流れを読み、何がピッチで必要とされているのかを把握する力がある。本当にクレバーな選手である。

「ゲーム状況や点差を含めて、自分が出たときにどうするかを考えながらチームの勝利に貢献する。練習の中から味方とのコミュニケーションを含めて、どういうイメージをもってやっているからだと思う。1週間を試合に向けて準備をすることもそうだが、もっといえばその前から試合に出たときに「どういうプレーが求められるのか」「自分がすべきプレー」を考え、どんなことがあっても対応できるように準備することで、途中出場でも試合にスムーズに入れる」と少し照れた表情を浮かべて笑った。

そして「勘違いしないことだ。ちょっとした勘違いで良い方向も悪い方向に行ってしまう。自分のプレーだけなら良いが、チームに悪い影響を及ぼす。汚れた空気をもってきてしまう。勘違いをしないことに気をつけている。

残り時間が少ない中で試合に出られているが、スタメンを張れるかといえばそのレベルに達していない。もっとやることはある」と身を引き締めて話したのだ。

普段は非常に穏やかな柴戸選手であるが、いったんピッチに入ると本当にさまざまな表情を見せる。冷静沈着かと思えば、ゲームの流れによっては大胆不敵なプレーを見せる。まるで闘いに挑み続ける三面六臂の阿修羅のようだ。

インドの神話では、阿修羅はもともと正義の神であった。神々を統率していた力の神である帝釈天に娘を奪われて、何度も諦めずに闘いに挑んだそうだ。闘いを挑み続けるうちに阿修羅は、赦す心を失い天界を追われることになってしまった。

ただ柴戸選手の心の底に秘めるものは、阿修羅の正義感だ。浦和のためにピッチで闘い勝利する強い思いだ。そのためには、どんな労も惜しまない。それは、おのれとの闘いでもある。柴戸選手は公式戦だろうが練習だろうが、浦和の阿修羅になってピッチに立つ。

Q. 他にもどんな骨折がありますか?

A. 指の亀裂骨折やボールをキャッチしてバランスを崩し後ろに倒れたときに、腰を強打して腰椎を骨折した例もあります。GKではないですがブラジル代表のネイマール選手が、相手選手との接触で腰を強打しおう突起骨折しました。おう突起は、腰椎の横に左右に飛び出している骨です。ここを骨折すると約2~3ヶ月はプレーできません。

Q. GK特有の怪我をまとめると?

A. やはりコンタクトが多いGKは、外傷の怪我が多いです。ボールをキャッチングする手、横飛びジャンプでセービングしたりしたときの臀部の打撲、接触で後十字靱帯損傷が多いですね。GKは、一番接触が多いポジションです。ラグビー選手のようなコンタクト外傷がよく見受けられます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。

川久保整形外科
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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