浦和フットボール通信

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新日本型サッカー文化の創成で世界五大リーグ入りへ Jリーグが2030年ビジョンを示す。


取材・文:椛沢佑一

新日本型サッカー文化の創成で世界五大リーグ入りへ

2月7日東京都内にて「2020Jリーグビジネスカンファレンス」が開催された。次期チェアマンとして4期目を務めることが内定した、村井満チェアマンが登壇して、Jリーグが2030年に実現したいビジョンについて語った。

まずJリーグはW杯周期(4年単位)での中期計画と、その時点から12年先のビジョンをローリングする経営サイクルを採用。「長期ビジョンを持った上で、中期計画で方向性の確認や見直しを入れることで実現への角度が高められる」とした。

その中で「Jリーグの経営構造は、事業・フットボール・社会連携の団子三兄弟。ファンづくりが串となり、お皿が経営基盤となる。一つが回ると、すべてが回り始める。一つが止まると全体が止まる」として、下記4つの領域(だんご)別アスピレーションを掲げた。

社会連携:想いを共有し、仲間のチカラを借りて地域とクラブの繋がり&笑顔を増やす。
フットボール:日本型人材育成システムで世界の5大リーグに名を連ねる。
toC:熱狂のスタジアム、国内最高のスポーツエンターテインメントへ
事業強化:事業の選択肢を増やし、Jリーグの多様な価値をマネタイズする。
経営基盤:自律的な経営と人材育成で、地域に愛される存在となる。

その領域の未来設計をしていく上で、だんごに共通する思想は、Japanesque Football Society(ジャパネスク フットボール ソサエティ)―新日本型サッカー文化の創成―を掲げた。

「サッカー先進国から謙虚に学びつつも、単なる追随ではなく、我々の強み(固有の歴史・文化・風土・価値観など)をしっかりと踏まえた、世界を驚かすぐらいの新たなスポーツ文化を創成したい。回顧主義でもなく、閉鎖主義でもなく、未来に向けてオープンに世界と協働し、日本の持つ潜在力を地域社会に、アジアに、世界に堂々と発信していきたい」と語った。

日本版EPPPが完成。近々リリースされる。

フットボールにおいては「日本がもっている良さを引き出して、世界のトップ5に割って入りたい」として、その重要テーマである育成においては、イングランドから招いているテリー・ウェストリーJリーグテクニカルダイレクターと、アダム・レイズJリーグフットボール企画戦略ダイレクターの二人が、イングランドが2011年から推し進めたEPPP(Elite Player Performance Plan=エリート選手養成プラン)と呼ばれるプログラムによる育成改革の日本版を作成。日本が世界一の育成大国になるためのシナリオが描いてある。日本には日本の強みがある。このアカデミー改革プロジェクト「Project DNA」を推し進めるとした。

より魅力的なJリーグになるために

4つの領域については、それぞれの責任者から詳細の説明があった。

社会連携については、米田惠美常勤理事が「2030Jリーグ社会連携ビジョン」について説明があり、世界で最も地域を愛するリーグへ~私たちができることを目指すとした。現在Jクラブが各地で年間20,000回超のホームタウン活動を展開しており、これをさらに増やしていくのは人的リソース的にも限界がある。Jリーグを様々な人に使ってもらおうと「シャレン!」を立ち上げて活動をスタートさせている。

フットボール領域については、原博美副理事長から「2030Jリーグフットボールビジョン」について説明があり、世界で最も人が育つリーグを目指すとした。「世界の五大リーグに割って入りたい。アジアのプレミアリーグに位置づけを目指し、アジアの良い選手がJリーグにきて活躍したいと思ってもらえるリーグになりたい」とした。

そして「Jリーグは激しく、インテンシティにあふれて、フェアで、エキサイティングなリーグにしたいと、各クラブ、選手会、レフェリーに伝えた。どういうプレーをみんなでしたいかと問うても同じような意見が返ってきた」とリーグとして目指すフットボールの姿を共有したと説明した。

今季からJ1リーグでは全試合などでVARを導入する。「哲学としては最小の干渉で最大の利益を得ること。期待効果は、VARによって試合がクリーンになること。明らかな間違いを取り除くためであり、最良の判定をみつけるためではない。具体的にVARが介入できる事象は下記とした。

・得点か得点ではないか?
・PKかPKではないか?
・退場かそうではないか(2枚目の警告は除く)
・人間違い(反則を犯したチームの違う選手を退場、警告)

「オンフィールドレビューは、レフェリーが見ている映像をスタジアムのビジョンにも移して、みんなで見てもらえるようにしたい」という構想を明かした。

事業部門においては、木村専務理事から「熱狂のスタジアム。国内最高のエンターテインメントへ」を目指すとして「Jリーグ、J1は昨年平均観客数が20,751人となり18クラブがプラス1000人 or 10%の比率で入場者数が増えている。現状はドイツ、イングランド、スペイン、メキシコ、イタリア、フランス、アメリカ、中国、Jリーグという立ち位置だが、J1全試合で満員となれば、24000~25000人となり、三大リーグ入りができる」とした。そのための施策の一つとして、ファン指標配分金を導入することを明かした。これはファンの力による、新配分金制度で配分金は、各クラブ別でスタジアム来場者やライブ配信を行うDAZNの視聴実績を数値化。開幕から5月上旬まで目安とする数節分で、各クラブの数値の比率に応じて原資となる5億円を分配する。

より魅力的なJリーグを目指して、Jリーグがこれまで積み上げてきた実績と、現在持ちうるポテンシャルを明確なビジョンの形として示したと感じたビジネスカンファレンスとなった。

個人的には、各々の土地の歴史や風土にあわせたフィロソフィーをもって、選手育成を推進していく部分と、社会連携活動「シャレン!」は大きな可能性を秘めているのではないかと感じている。その街で育った子どもがピッチで輝くことが地域の誇りを示すことの大きなファクターになることは間違いない。その街らしいフィロソフィーをもって育成した選手が出てくれば、各クラブのカラーも出て魅力的なものになるだろう。

社会連携においては、地域密着で地道に活動してきたJクラブが全国各地に存在し始めている中で、各クラブがそれぞれの街での社会の問題に対して、その街の人たちと関わることができれば、その地域に存在することの価値を多くの人たちが感じることができ、その街の本当のアイコンになっていくことができるだろうと思う。

いよいよ、来週からルヴァンカップ、21日からJ1リーグも開幕する。今年もどんな筋書きのないドラマが展開されるのか楽しみにしたい。

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