浦和フットボール通信

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【This WEEK】週刊フットボールトークVol.64(11/24)

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は、浦和レッズの重要な一戦、仙台戦。高校サッカー決勝が行われました。まずは仙台戦から。リーグ戦も残り3戦、勝ち点を失うことは絶対に避けなければならない試合でした。サポーターも試合前から一体になってサポートをしようと呼びかけを行い、選手入場時には、ゴール裏、メインスタンド、バックスタンド、スタジアム全体がスタンディングで選手を迎えて、昨年から肩を組んでみんなで飛び跳ねる「男なら」の大合唱がスタジアム全体で行われました。これは初の試みで、スタジアム全体の気持ちを強く感じることが出来た光景でした。

豊田:凄い天候で、さながら今季のレッズの道のりを象徴していたような……でもスタジアムの雰囲気には納得しました。気合いが入った声が少なくとも私の周囲の指定席組からも上がっていましたし、遅まきながら「佳境のゲーム」に臨む埼スタのスタンドが見えてきたように思います。

椛沢:試合は、最少失点のベガルタ仙台が相手ということで、しっかり守ってくる相手に対して崩す術がなかなかないまま時間が経過をしていく展開が続きました。しかしこの日のレッズは、気持ちがこもったプレーで相手にもほとんどチャンスを与えませんでした。特に久しぶりの登場した坪井慶介のプレーぶりには涙が出ました。本人も試合勘がないことを心配していたようですが、そんな不安を吹き飛ばすようなプレーぶりで、ベテランらしい読みと気持ちを全面に出したディフェンスで後ろからチームに勢いを与えていたように見えました。このような追い込まれた状況では、ベテラン選手の経験は大きな力になると感じた試合でした。

豊田:坪井に関しては同意ですね。彼が機能すればバックラインの役割分担はかなり整理されると思う。守備に関しても一定の理想形が見えてきた印象を受けました。永田も落ち着いて自分の持ち味で守れていたと思うし、自分なりの手ごたえも掴んだのではと思います。攻めあぐねたゲームであることは間違いないけれど、攻撃に関してもコンパクトに収められた新システムを基盤にして「意図した展開」が少しづつ出せてきているのでは?

椛沢:サポーター中心部も選手達の気持ちに応えて、凍える寒さの中上半身裸になってのサポートで意気込みを見せていました。浦和一体になって勝利を目指した試合でしたが、最後まで仙台の守備を崩せずスコアレスドローに終わりました。しかし残留争いにターゲットとなる甲府が破れたために、勝ち点差は3に拡がりました。次節の福岡戦でレッズが勝利することが出来れば、甲府の結果関係なく、最終節に勝ち点3差の状況になるので、得失点差を考えると事実上の残留が決定します。既に降格が決まっている福岡だから、これで残留は決まったようなものだと安堵しているサポーターはいないと思いますが、過去の経験上、少しの気の緩みは非常に危険。特に福岡は失うものなく戦ってきますから、簡単に勝てる相手ではないと思って、全力で相手に立ち向かう姿勢が必要だと思います。最終節の相手は優勝を狙う柏ですから、一歩間違うと一気に危険な状況に足を突っ込んでしまうことになります。既にビジター自由席のチケットが完売をして多くのサポーターが福岡に乗り込むと思いますから、観光気分は後に取っておいて、この試合にすべての力をつぎ込んで、事実上の残留を福岡で決める覚悟で乗り込みましょう。

豊田:福岡でしたたかに勝利を収めるようなことになれば、堀監督のマネジメントは高く評価されるべきと思う。それこそどん底状態から持ち直しての残留処理ですから。ただ編集長の言われるとおり、こういう修羅場においても「結末はレッズサポーター次第」という浦和レッズの性癖は忘れてはいけませんね。アウェー参戦、最終戦参戦のサポーター諸兄とはとことん一緒に闘いたいです。
99年終盤のファイブファイナルズでも残留を争っていたジェフ市原との直接対決に勝ち、湘南に連勝したところでモチベーション維持が難しくなった……という悔やみきれない経験がある。こういう経験を無駄にしてはいけません。ひとまず勝点差は忘れて、90分間ひとときも気を抜かないサポートで行きましょう。

椛沢:一方日曜日には高校サッカー埼玉県予選決勝が行われました。武南と浦和東の対決となった決勝は、多くの予想を覆して浦和東が2-1で勝利をして全国への切符を手にしました。試合後に浦和東の野崎監督に握手を求めた時に「みんな予想外だっただろうね」と笑うくらいに、武南が決勝までの道のりを完璧な試合で勝ち上がってきたために、今年の武南は強いというイメージが私にもありました。さらに序盤から押し気味に浦和東が攻めながらも、前半の早い時間で武南が先制をしたので、これで圧倒的な展開になってしまうかなと思いましたが、全く浦和東の選手は怯まずにPKで追いつくと、そのまま逆転ゴールを決めて決着がつきました。

豊田:武南は決勝トーナメントに入ってから無失点、複数得点の快進撃で来ていただけに、失点のショックが大きかったように見えました。同点に追いつかれただけで焦りのような気配があり、以後は自慢の中盤からの展開を浦和東の粘り強いチェックに摘まれ尽くした印象です。ただ気の毒だったのは、序盤のレフェリングの判定基準に一部の選手が苛立ってしまったように見えたこと。
それほど抜け目なく東高のチェックが効いていたということでしょうね。夏にこのメルマガにも登場いただいた大山照人先生も、密かに「今年は近来の総決算」と位置づけていたイレブンでしたから悔しさもひとしおと思います。一ファンとしては、あのサッカーで全国でどこまで通用するかを期待したいレベルでしたから。

椛沢:武南の選手たちは浦和東が思いの外、前に出てきたということで面食らった部分があるようですね。加えて武南対策として、コンパクトフィールドで、前を向かせないという守備を徹底させたことが、勝因につながったと野崎先生もお話していました。それにしても圧倒的な強さを見せていた武南に対して、試合を通じて、全くサッカーをさせなかったのは驚きました。当日の試合中継を行い、長らく高校サッカーを取材している上野晃さんも「正直まさか浦和東が勝つとは思わなかったよね。それくらいに準決勝までの武南が強かった。浦和東が全国でどこまでやれるかが楽しみだ」とお話していました。

豊田:浦和東は野崎監督を中心にとことん大山戦術の心臓部を研究していたのでは? このカードはいつも独創的なサッカーを仕掛けてくる武南を、浦和東高校が知力体力の限りをつくしたリアクション戦法で対抗するという図式で展開されてきました。今回の勝利を手に入れた野崎さんのサッカーって、昔ながらのURAWA流に深く根ざしているものに思えてなりませんね。客観的に見ればジュニア年代からの系列を整えている大山・武南の方が、個人の能力育成も含めて近代的な環境にあることは明白です。そこに公立高校である浦和東が可能な対策をすべて注ぎ込んだチームの和で戦いを挑む。これは、かつて地域ぐるみの育成システムを完成させていた清水東や清水商業らの静岡勢を大勝負で打ち破ってみせた浦和の高校群の戦い方にそっくりです。野崎先生にすれば
まさに「してやったり」の心境と思いますね。

椛沢:全国選手権の一回戦は12月31日に埼スタで、那覇西との対戦が決まりました。昨年、西武台が国立にあと一歩足りませんでしたから、浦和東には“国立”を目指して頑張ってもらいたいと思います。

豊田:下馬評を覆して武南にサッカーをさせなかった東高校イレブンのチームワークにはおおいに期待したい。浦和南と武南以外は果たせていない聖地国立のピッチへ、是非とも勝ち上がって欲しいです。

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