浦和フットボール通信

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「レッズ2012月刊ライブディスカッション」Vol.1

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2012月刊ライブディスカッション」。Jリーグ開幕を控えるレッズの現状、新しく指揮を採るミシャがここまで、どのようなチーム作りを取り組んできたのかをお聞きしました。

■ミシャの下、レッズのサッカーはどうなる?

椛沢:浦和レッズは、ミシャ、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督を新たに迎えて始まるシーズンですが、ここまでの練習をみて、浦和レッズの今季はどんなサッカーを展開していくと思いますか。

河合:どんどん人が動きまわって、ポジションチェンジをどんどんして、超攻撃的なサッカーに期待したいと思う反面、対戦相手によっては5バックの守備的なサッカーになりかねない所も否めないです。

椛沢:それはどういうことでしょうか?

河合:帰郷するために愛媛に行った時に、ちょうど愛媛が浦和と練習試合をやった後だったので、練習場に行って愛媛の選手に試合の印象を聞いたら『浦和はインターセプトをする位置が低いから、こちらが前からプレスをかけて浦和が横でボールを回す時、縦に入るときを狙って、前からプレスをかけたら、うちのやりたいことが出来た』と愛媛の選手が笑顔で答えていたんですね(苦笑)。
そのような問題がまだあって、攻守が両極端になってしまうことがあるという危機感もあります。それはミシャのやりたいことがしっかりと浸透をしていないからで。
3バックは、右と左のストッパーの選手がマイボールになった時に外に開いて上がっていく。その時にボランチ1枚が下がって3バックを形成するのですが、ストッパーの選手が上がっていった時に縦パスを狙われると相手にとっては高い位置、こちらにとっては低い位置で奪われて、数的不利な状況でカウンターを食らってしまうので、そこをうまくサポートなり、動き出しを早くして対処することが重要になってきます。
練習中に、ミシャのやっていることがよく分かったシーンがあって、槙野がボールをもらって開いた時に、縦の梅崎にボールを入れようとして、そこで梅崎にマークが付いていて、ボールを奪われた時を想定した練習をしていた。ミシャはこのシステムのなかで、サイドのところでボールを奪われることが多いと言っていました。サイドハーフがタッチラインに張っている中で、そこに入ることを相手も狙ってくるので、その時は横のパスを使う選択が必要だけれども、横、横にならないように縦の意識は常に持てと指導をしていました。

椛沢:ボールの入れ方、ボールの受け方など、その感覚が身体に染みてこないと、ちょっとしたズレで危険な状況を作り出してしまうということなんでしょうかね。

河合:選手の判断力がすごく求められると思います。何のために動いたのか、相手ディフェンスを釣るために動くのか、釣れたらそのスペースを誰が使うのか、同じ位置に走れば自分達でスペースを潰しているよねとか。このサッカーにおいては、攻守にわたって運動量が求められて、テンポよくパスを繋ぐことが生命線になってくる。レッズの選手もようやく繋げるようになってきているけれども、まだまだの部分が多い。もう少し時間が欲しいなあと正直思う。昨年までと全く違うサッカーをしているので、時間がかかると思う。

椛沢:具体的に、まだ足りないと思う部分はどこでしょうか。

河合:縦パス、楔のパスのタイミングとか、動き出しのタイミングが遅かったり、そこは縦に入っただろうという展開でも横パスで逃げてしまったりしている所がある。逆に紅白戦で、簡単に縦パスが入った時に、なぜそこで入れられたんだと時間を止めてミシャが指導をしているケースもあります。攻守の切り替えが遅れて、ぽっかり中盤が空くことがあるので、そこを注意しているケースもあります。レイソルやグランパスという成熟したチームとやった時に中盤を支配されてやられるケースが多いと思う。あとは引いた相手に対して、どのように崩すのかも見てみたい。それは横パスで揺さぶりながら、縦パスを入れるタイミングを見計らって攻撃するか、相手をおびき寄せる動きをして空いたスペースを狙うということだと思うのですが。

椛沢:そこでミスをするケースも最初はあるでしょうね。広島時代も最初は、GKの西川のミスで失点するケースが多々あったと聞きました。GKの加藤のミスで失点してしまうケースも出てくるのは覚悟しないといけないでしょうね。

河合:それはあるでしょうね。練習が終わった後の加藤君の声はガラガラですよ。今までもGKの指示が大事だったけれども、余計に神経を使う部分になってくる。GKも横パスを受ける位置にいるので、加藤君を使ってラインを上げたり、ストッパーが開く時間を使ったりするので、GKの足技が求められる。その意味では加藤君はその足技があるので活きるとは思う。

Photo by(C) Kazuyoshi Shimizu

■相当な覚悟で復帰した阿部ちゃん

椛沢:その他、戦術に既にマッチしている選手はいるのでしょうか。コラムでは、平川が抜群の順応性を見せていると書いていましたが。

河合:平さんは、大きい。彼は頭が良いですよ。今年は期待できると思います。峻希や野田、宇賀が彼をどう越えていくのかのも楽しみ。サイドハーフでは、左の梅崎はディフェンス能力が決して高くないけれども攻撃能力に関しては素晴らしいものがある。左サイドであの運動量は効いてくると思う。

椛沢:ボランチでは小島が起用される可能性があるようですね。2年目のシーズンとなる彼についてはどうでしょうか。

河合:小島は、果敢にトライをしていると思う。どのタイミングでスタメンで使われるのかという期待感はある。練習では、いつも監督から怒られていますね。AチームにいてもBチームにいても、ちょっとタイミングがずれるようなプレーとか、動きが遅かったりすると、時間を止めて、今どんなシーンだったかを指導されているシーンがある。それだけ重要なポジションの選手ということなんだと思います。

椛沢:そして阿部勇樹が戻ってきてくれました。相当な覚悟で浦和に帰ってきたのだと思いますが、阿部ちゃんについてはどうでしょうか。

河合:阿部ちゃんは『戻ってきた、帰ってきたと言うな』と言ってますね。自分は浦和でなにひとつ結果を残していないし、何も功績を上げていないから、戻ってきたわけでも帰ってきたわけでもなく一からのスタートだと言っていました。そんな阿部ちゃんがキャプテンですから、人一倍気持ちが入っていると思う。

椛沢:正直、阿部ちゃんは、声を出してチームを引っ張っていくというキャプテン像はないのですが、どのように振舞っているのでしょうか。

河合:阿部ちゃんは、1対1だとすごくよく話をしてくれるんですが、基本的シャイなんですよね。キャプテンについては、口であれこれ言うのではなくて態度で見せますと言っていました。私は昔、アウェイの大分で負けた試合の後に、阿部ちゃんが両膝をついてごめんと手をあわせた姿をずっと覚えている。あんな思いを選手達にもさせたくないと思いました。新しい浦和を創り上げないといけないとも言っていて、それは選手だけじゃなくてサポーターも一緒の気持ちでやっていきたいと言っていました。

椛沢:昨年末に問題を起こしてしまった原口元気については、どうでしょうか。

河合:原口は一時期、自分の中でドリブルを封印していたと思う。パスのスピードを活かしていくということを自分の中で意識していたと思う。ストッパーの一枚がドリブルでつっかけた時に、スペースを開けるために、中に入ってボールを受ける動きもあるし、ディフェンスの裏をついて、ペナルティエリアの外側を使うような縦に仕掛けて、第2のパスを受ける動きをしてみたりして、様々な動きをしている。
態度についても元気は変わったと思う。レッズフェスタで、サポーターの皆の前に出てきて謝罪を入れた。あれはすごく勇気がいった行動だったと思う。だいぶ大人になってきたかなと思う。私も元気に宣戦布告したんです。私も口うるさいおばちゃんになるからね!と。そうしたら、宜しくお願いしますと言っていました(笑)。今回の件で、良いお勉強になったんじゃないかと思う。選手としても、まだまだ伸び盛りの選手だから期待したいと思う。

椛沢:直輝については、怪我もしてしまい、出遅れてしまっている所があります。

河合:練習できない直輝が寂しそうに見ていた姿を多々見ますね。毎回リハビリを終えて、いつも練習を見ている。オリンピックで抜けていて自分は出遅れているんだと言っていたし、そんな思いもあるんだと思う。焦って戻ってまた同じ怪我をしてしまっては仕方ないので、大事にしてもらいたい。

椛沢:その他、気になった選手はいますか?

河合:山さん(山田暢久)は相変わらず。彼は鉄人だよね。サッカー頭は抜群。いざ何かあった時に彼は力になると思う。ボランチも最終ラインも出来ますから。

■サポーターは、どうレッズのフットボールを楽しむべきか

椛沢:ミシャは大原練習場に見に来て欲しいというコメントも残していますが、面白い選手を実際にしているのでしょうか。

河合:練習は見ていて楽しい。ワクワクする。ちょっとダメな選手がいるとドンドン変えたりするし、練習内容も面白い。時間を止めて選手に求めていることがよくわかるし、その後に選手が理解してやっているなとか、理解出来ていないかなということも分かったりする(笑)。この間の練習でも達也がなかなか動きが良くなくて、逆にBチームのランコが良い動きを見せていたら、途中でランコに変えたりしていました。ミシャは、その時に良い選手を起用してくる。これは面白いと思いました。ミシャは名前ではプレーできないんだと言っていた通り、練習でも実戦しています。

椛沢:サポーターには、どのようにチームを見て行ってもらいたいと思いますか。

河合:ピッチに立っている選手と同じ目線で見てもらいたい。選手がピッチで同じイメージが共有できたというように、サポーターも同じようにイメージを共有して応援してもらいたい。ミスパスが起きた時に、なんだよミスパスして!というのではなくて、なぜミスが起きたのかを考えて見ることが出来ると、何が出来てきているのかも分かるだろうし、選手が何を考えてプレーしているのかを想像すると、より一緒に戦っている感が強くなるかもしれない。縦パスを入れるタイミングがなかった時に、スペースを作って横パスを使って時間をかけている時に、早く縦に入れろよ!とサポーターが言うと選手も焦ってしまって、無理して縦パスを入れて取られてしまう。そうではなくて、サポーターも状況を理解しながら、レッズがゆっくり回さないといけない時間と、早く行く時間をうまく使い分けることが出来るようになったら面白いサッカーが出来るようになると思う。選手と同じ絵を描いて応援をしてもらいたい。

Photo by (C) Kazuyoshi Shimizu

椛沢:いよいよ、開幕戦となるサンフレッチェ広島戦が10日(土)に開催されます。どんなことを期待していますか。

河合:カンファレンスで、森保、佐藤寿人、ミシャ、柏木と並んでいる姿を見たら、情けない気持ちになって絶対に勝ちたいと思った。広島のことをミシャは熟知をしていると思うので、スカウティングはいらないかもしれない。そこは監督の手腕を期待している。広島からブーイングの嵐があるんでしょうね。それも勝って心地良いブーイングだったと言えるようになれば良い。試合では、とにかく焦らず、慌てず、怠らず。速い攻めの時とゆっくりの時と作りなおす時を、うまくやっていけば勝機はあると思う。槙野が上がったスペースを寿人に突かれたりしないようにしてもらいたい。相手も分かっているでしょうからね。開幕から鹿島戦までに、自分達の戦い方を確立できるか。最初に結果が出なくてもステップアップしている姿が見られれば良い。やっていたことが間違っていないんだと選手達も思えること自体がすごく大事なことになるから。95年のオジェック監督の時がそうでした。最初に結果が出なくてもこれで良いんだと選手が思えたから、最初に結果が出なくても辛抱できて、その後結果を出すことが出来ましたから。

椛沢:我々もステップアップする姿を楽しみながら応援をしていきたいところですね。開幕が楽しみです。ありがとうございました。

≪2012年3月 さいたま市内にて≫
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