浦和への伝言2012 大原ノート – vol.10 みんなで遊ぶ
浦和一女高OGのおふたりが、駒場~大原~浦和美園を巡る郷土の自然や史跡を楽しく散策します。
■ちょっとまじめに書き出してみようと思います。以前「保育界」という保育園向けの冊子に書かせていただいた文章を一部抜粋してみます。
「集団遊びについて」集団で遊ぶなかで人間関係の基礎が育まれます。
【地球上にいまや何十億という個体が生息し繁栄をきわめる「ヒト」に対して、食物連鎖の頂点に立ち「個」では最強の哺乳類のひとつである「トラ」は絶滅が危惧される種族となっています。「個」としての頂点を求めた種族と「群れ」として生き延びる戦略を選んだ種族と、とても対照的です。ですから人間にとって集団として力を発揮できるかどうかは、種族としての根本にも関わることです。
「集団遊び」は、そのような種族としての特性、人間として生き抜いていくための能力を育てる基本です。子どもたちは
・お互いの存在を認識し
・互いの存在を好ましいものと感じ
・そのうえで正当な競争をし
・互いの能力を認識し、
・さらに違いを、個性を認め合い
個の力を集団としての力に昇華させていくのだと思います。】
【仲間への信頼感、優れた能力への素直な賞賛、負けた悔しさを新たな挑戦への意欲とする勇気、全体の目的を理解してそのために力を発揮できる責任感、こうしたことが単に個として優れている以上に人間にとって必要な力であり、集団のなかでしか養われない能力ではないでしょうか。】
■それで、まあ、みなさんすでにお察しのとおり、これを書いている間イメージしていたのは「フットボール」です。子どもたちの遊ぶ様子を思い描いているうちに、やたら共通項が多いなあと思われ、こんな文章になりました。そもそも子どもたちの「遊び」が厳しい現実に臨むまえの訓練をかねた疑似体験であるなら、その延長線上にあるスポーツと共通する部分が多いのは当たり前かもしれませんね。
■先日黒木カメラマンと取材をかねて浦和の街をブラブラしていたとき、二人の共通の友人宅前を通りました(地元育ちですからね)。「『あそぼ』っていってみようか」と意見が一致し、アポなしで呼び鈴を押してみました。う~~ん、残念。お留守でした。昔はみんな家の前に行き「○○ちゃん、あそぼ!!」で遊べたものですが、今どき小学生でもアポなしなんてあり得ないみたいです。みんなで遊ぶのも大変な時代になりました。
■それでも「ヒト」が人間になっていくためには、「みんなで遊ぶ」ことがなんとしても必要なのではないでしょうか。付け加えられた「間」という字がなにを表しているのか、考えてみたいです。「客間」と「客室」、「居間」と「居室」は何が違うのでしょう。やはり「間」には単なるスペースではない、そこにいる人々の関係性みたいなものを含んだ「空間」の意味があるように思います。「間が悪い」なんて微妙な言い回しもありますね。そうだ! 今年のレッズにはぜひとも「間が良い」フットボールをしてほしいなあ。
■スタジアムに行けばいつも仲間がいて、アポなしでもみんなで遊べるって幸せです(遊びじゃないっていう人もいるかもしれませんが、本当の戦争・紛争とは異なる世界だから)。街の中に、地域にそういうテーマをいくつ持つことができるか、それがいくつ企業を誘致できるかよりも大事な時代になるように思います。スカイツリーのような人が集まる施設を誘致できなかったのは残念ですが、集まった人たちに関係性を作れるような有形無形の「間」をたくさんつくりたいですね。
ももせ・はまじ
東京都生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、多摩美術大学卒業後、(株)世界文化社に入社。保育園、幼稚園のための教材企画、教材絵本、保育図書の編集に携わる。ワンダーブック等の副編集長などを経て、現在同社ワンダー事業本部保育教材部副参与。保育総合研究会会員。蕨市在住。
くろき・ようこ
川口市生まれ。埼玉大学附属中学、浦和一女高、千葉大学工学部写真光学科卒業。大学在学中から研究テーマとしていた撮影技術を生かしフォトグラファー、イラストレーターとして活躍。セツ・モードセミナー勤務を経て、現在フリーランス。川口市在。