浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.89(5/23)

王国対決・清水戦勝利と、浦和タウンミーティングから、文化にするためのクラブ作りを想う。

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末は、清水エスパルスをホーム・埼玉スタジアムに招いての試合でした。清水といえば、古くからフットボールのライバルとして争ってきた土地です。“サッカーで清水に負けてはならない”ゴール裏で見つけた、浦和でサッカーをやってきたという高校生に話を聞くと、しっかりとその歴史は教えられてきたそうで、「清水には負けたくない」と力強く話をしていて、今の若い世代にもしっかりと伝承されていると嬉しくなりました。ゴール裏スタンドも「王国浦和」のメッセージ幕を掲げ、ゴール裏全体を覆う、巨大なメガ旗を久しぶりに試合前に掲げてこの一戦はスペシャルであることを示して、勝利を求めました。そして、清水を相手にホームでは実に6年ぶりの勝利。公式戦でも4年ぶりの勝利でした。

豊田:ホームで6年ぶりですか。ううーん、王国対決と銘打つには負け過ぎていたと思う。ある意味さいたまダービーよりも客席の対抗意識は高く、対戦カードとして将来的にも重要な意味を持つ一戦と思えるだけにこの勝利は大きいです。バックスタンドの最上段近くで観ていたのですが、タイムアップと同時にゲート近くの通路で「24 HARAGUCHI」のレプリカ姿の親子が「やった、やった、清水に勝った」と狂喜して抱き合っている光景にぶつかりました。あれは半世紀近くも前、「藤枝に勝ったのよ~」と大はしゃぎで私に浦和高校群の活躍を解説してくれた亡き祖母ちゃんの姿に被りますね(苦笑)。個人的には女性サポーターまでが大きな打楽器を抱えてリズム隊に加わって、相変わらずのブラジル調サポートを続けるエスパルス応援席には親近感を感じました。レッズゴール裏との対比で言えば、Jの開幕年の秋に国立競技場を赤とオレンジに塗り分けた時(93年11月 ニコスシリーズ 浦和0-2 清水)の構図とほとんど変わりはなかった。あの時のこちらの震源地には現役時代の吉沢君や相良君が臨んでいたわけですが……。まあ良し悪しは別として、世代を越えての伝承がフットボールに地元ならではの味わいを添えてくれることは間違いないです。で、こういう場の雰囲気とか熱とかは、確実にピッチ上に伝わって行くようですね。アフシン・ゴトビ監督は言うにおよばず、埼玉スタジアムでの本格的デビューとしてフル稼働したエスパルスの新鋭・大前元紀選手や高木俊幸選手も、あの雰囲気のピッチ上でかなり悔しい思いをしたのではないかな。必勝を期して乗り込んだのに零封されたわけですし。そしてそういう今回のイメージがモチベーションとなって、さらに次回対戦を盛り上げてくれるのでしょう。

椛沢:チームもこの埼玉と静岡の対戦歴を知ってか知らずか、ホームで久しく勝利をしていなかったということもあり、勝利を求めた試合展開をしたのかと思います。とにかく清水のサイド攻撃を抑えて、敵の生命線を完全に断って相手の良さを消して、勝負を決めました。試合後に敵将ゴトビ監督にも「ホームで11人で守ってカウンターを仕掛けるよりも我々のような攻撃的なサッカーをファンは求める」と皮肉を言われたようですが、それだけ清水に対して何もさせなかったということの裏返しの発言でもあるのかと思います。確かに、清水のアレックスが退場して数的優位になった時には、1点を守りきることを考えるよりも、2点目のトドメを刺す姿勢がもっとあっても良かったのではないかとも思いましたが、とにかく、この試合は結果優先で、勝利したいという姿勢だったのかもしれません。

豊田:インタビューした限りでは、監督のミシャは埼玉と静岡のサッカー史程度は把握してくれていると信じます。それを踏まえた上で清水相手にホームで1勝し、まずは周囲を落ち着かせる足場を築きたかったのでは? 大宮戦の敗戦を重く捉えたとしたら、そういう段取りがミシャの心中に存在したのではと思います。編集長言うように、非常に分かりやすいリスクマネジメントもありましたし……。近年のレッズからはそういうゲームコントロールは伝わらなかった。もしくはコントローラーを手にする試合運びさえできない状態だった。ミシャはそこを問題視しているではないでしょうか。そして敵将のゴトビ監督の批判コメントは私的にも非常に印象に残りましたね。あれはそもそも数年前の広島時代に、ミシャの口癖だった見解そのもの。「結果しか考えない指揮官が率いる2チームが相対したら、そこで行なわれるスポーツはサッカーではない」という……。

椛沢:ミシャは、魅せることを重視するロマンチストのような一面もありながら、結果もしっかり求めるリアリストでもあるのではないだろうかというのが、ここまでの試合を見ての印象です。その意味でも浦和レッズというクラブにマッチしているのかもしれません。さて、今回配信は第2回タウンミーティングレポートの前編。スタジアム環境、埼玉スタジアムと街の盛り上がりをどう作るかというテーマについてのお話になります。清水戦も3万5000人程度の来場者ということで、観客動員数を取り戻すには相当な時間と努力が必要になるのではないかという印象です。ヨーロッパなどのクラブがそうであるように、環境作りについてもレッズがこの街の象徴になっていくような存在になっていき、自治体、街、市民との協力体制の中で、環境整備をしていかないと根本的な解決にはなっていかないのではないかという思いを受けました。

豊田:そういう指摘は様々な立場の地元支持者の面々が口にするようになりました。今回ミーティングにも多くのファンの方が立会い貴重な意見も述べて下さいましたが、こういう場を共有することは、クラブチームとその支持者の重要かつ基礎的な努力と思います。会場の雰囲気と皆さんの発言を聞いていて思い出したのは、フォルカー・フィンケ監督が就任した2009シーズン初頭に刊行された『浦和フットボール通信』のスチュワード特集号。インタビューに応えてくれたスチュワードの佐藤亜紀子さんが言われた「自分自身がレッズのために活動できるうちに、他の誰もが同じ活動ができる環境やノウハウを作っておきたい」という言葉ですね。<編集部注:浦和フットボール通信Vol.25 2009年3月号>
このURAWA タウンミーティングもそういう存在になり得るよう、皆さんとともに努力して行きたいと思います。

椛沢:皆でこの街のクラブを創り上げるという体制は、今後“浦和レッズ”をこの街のフットボール文化にしていく上でも重要な要素であることは間違いないですね。さて今週末もこちらも盛り上がる。2年ぶりの味スタでのFC東京戦です。すっかりアジア気取りなトーキョーに対して、一泡食らわせるタイミングがやってきました。大挙押しかけて、トーキョーを黙らせましょう。

豊田:え、FC東京さんはもう「アジア気取り」なんですか? おっと、ここで反応すると都内の仕事場近くの東京支持者の方々に総出で叩かれてしまうので(笑)私も粛々と味の素スタジアム参戦の用意をしたいと思います。

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