【This Week】週刊フットボールトーク Vol.90(5/31)
浦和タウンミーティング、駒場ネーミングライツと、激闘のFC東京戦を振り返る。
椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)
椛沢:VIPインタビューでは、「浦和タウンミーティング」のレポート第2回を掲載します。
豊田:クラブスタッフは畑中本部長以下の皆さんが、現状でできうる限りの回答を誠意的に示されたと思います。また、マーチャンダイジング部の丸山課長が「忘れてはいけない意見が出ているので、メモしておかないと」と手帳を手に慌しく席を回られている姿も印象に残りました。また、古くからの知り合いのサポーターも複数同席してくれたのですが、「あえてレッズには馴染みが薄いはずの分野から意見やアイデアをぶつけてみたが、それらをヒントとして受け止めてくれるクラブの姿を見て希望が持てた」という声がありました。つまり「レッズの経緯を知らない」「現状にそぐわない」というハードルでファンからの意見を排除し過ぎてはいけない、という意図と思います。
椛沢:レッズが“地域の存在”として成り立っていくためには、“レッズの世界”だけで活動していくだけでは、それはなし得ないと思います。今回の会でも地域の存在になることで解決できる部分もあるという意識をお互いに持ったと思いますし、クラブ側の参加者も真摯に様々な声があることも理解をしてくれたと思いますので、“膝を付け合わす会”としての役割が果たせたのかなと思います。
豊田:同じ意味で、締めのコメントをお願いした『砂時計』マスターの言葉も、胸に響くというか……よくぞあのメンバーがそろった会場で言ってくださったなと(笑)。我々レッズ支持者には耳の痛い部分があるのですが、そこに耳を塞がず、そういう現状に向き合うところから自分たちの努力を再確認する姿勢が求められているのでは?
椛沢:相良さんの何でも「クラブに要求ばかりする傾向が高まるのは良くない」というコメントも、そういう意図を含んだ裏返しの表現と思う。自らクラブを知り、創ろうとする意欲の芽を摘んではいけない。正しくホームタウンとクラブが互いを高めあう情況に導くためのメディアの姿を模索したいと思います。今回の討議を経てのクラブの経過を確かめ合うミーティングも必ず開催したいと思います。
さて、「駒場」のネーミングライツも公募によって決まり、「浦和駒場スタジアム」に決定しました。サブグラウンドが「レッズハートフルフィールド駒場」です。一見すると何が変わったのか?という感じを受けるかと思いますが、下記4点を確認して、『浦和レッズが「駒場」に対する姿勢や具体的な取り組みを示し実現していくことが最も大切」との考え方を共有しました。』とのことです。
・「駒場」を浦和でのサッカーにおける「過去」と「現在」、そして「未来」を繋ぐ懸け橋とする
・「駒場」を「浦和とレッズ」、「市民スポーツとプロスポーツ」が融合する拠点とする
・浦和レッズの設立20周年や法人名変更といった取り組みと共に、浦和の歴史と伝統を改めて育み、絆を築いていく
・「サッカーの街・浦和」の発展につなげ、新たな成長に貢献していく
名前を獲ることではなく、「駒場」を浦和レッズとしてどう位置づけて、展開していくのかということが重要だと考えての結論だったと思います。「駒場」は浦和サッカーの歴史でもありますから、レッズという名前を入れなかったことは英断だったと思いますし、拍手を送りたい。その分、駒場にレッズのエンブレムはしっかりとつけられるそうです。今後の展開にも期待したいと思います。
椛沢:先週末は、味スタで2年ぶりのFC東京戦でした。東京なんかにサッカーで負けられるかという意識がこの試合を特別な雰囲気にしていますね。この試合も33836人がスタジアムを埋め、アウェイスタンドを中心にレッズサポーターも約5000人が駆けつけて、スタンドの一角を赤く染めていました。試合前には東京お決まりの「You”ll never walk alone」の大合唱に対して、レッズサポーターから大ブーイングが巻き起こり、熱唱をかき消して試合前から白熱の一戦を予感させる空気でした。普段は斜に構える様子の東京サポーターもレッズサポーターの存在に発奮して、いつも以上に熱を帯びた味スタになっていたのではないでしょうか。テレビ実況でも欧州のスタジアムに負けない雰囲気と称されていました。この雰囲気もあって魅力的なゲームが表現されたと思います。
豊田:例によって相手サポーターも間近に見渡せるシートに潜入していたのですが(笑)。それはもう東京サイドはユルネバへのブーイングの遥か前から、斜に構えるどころの意気込みではなかったですよ。飛田給駅から続くスタジアムロードの人波の中では、一見なごやかに見えたファミリーサポの親子が「今日だけはぜ~ったい負けるな!」と声を荒げるシーンもあって驚いた。このところ味の素スタジアムでも長らくレッズに勝てていない東京は、ミシャとポポの対決図式も加わって相当のボルテージで臨んだゲームだったのでしょう。古くからのレッズサポーターはご存知のはずですが、当初の対戦ではレッズはFC東京にまったく勝てない時期が続いていたのです。その頃との対比が現在の対決ムードにも繋がっているようで何ともディープな側面を持つカードと思いますね。とにかく最初の駒場スタジアムでの対決が、いろいろな意味で大変なゲームだったわけで……。当時の情況を『スポーツナビ』で書かせてもらった観戦コラムが以下のURLで読むことができるので、よろしかったら。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jtoto/column/2001/ZZZKT89YT1D.html
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/soccer/jtoto/column/2001/ZZZD429YT1D.html
実はこの記事に対する感想というか反論のメールをもらったのを機に、いまだに情報交換のご縁がある東京サポーターの方もいます。まあ、それほど互いの初対面の印象が尾を引く関係ということと思います。
椛沢:初対戦での駒場のFC東京戦は、インパクトがありましたね。アウェイのサポーターが唯一入場を許されるエリア“出島”から発せられる応援は、彼らなりのユーモアだったのかもしれませんが、当時、東京に所属していた福田健二に対して“ゲットゴール福田”の応援までされたら、それはレッズサポーターへの挑発としか受け取ることが出来ない。試合後に出島を多くのレッズサポーターが囲んだのは多くのサポーターが覚えている出来事だったと思います。そんな経緯を経ての今回対戦も、場内のボルテージに押されて、両チーム気持ちの入ったプレーを90分間通して行ったと思います。試合内容もオシム後継者のミシャとポポヴィッチが指揮するチームの対戦ということもあって、どちらのサッカー哲学が上かを競うかのような展開。お互いボールを大事にするサッカーですが、ショートパスを駆使する東京に対して、浦和は長短パスを使い分けてカウンターを鋭く発動させるサッカーと、色が出ていて面白い内容でした。
豊田:あのサイドチェンジは「東京のノリ」が出かかった場面をみはからったように、効果的にくり出されてゲームのペースを取り戻していましたね。ミシャの意識浸透の手腕は手馴れたものだなと思います。記憶をたどっての印象に過ぎないのだが、フィンケ監督時代はあのようなアクセントがなかなか出せなかった気がする。
椛沢:終了間際の88分にマルシオが先制点を決めて、劇的勝利と行きたいところでしたが、ロスタイムにセットプレイから同点弾を許し、引き分けに終わりました。素晴らしいゲームをしたと思いますが、最後のセットプレイの場面でのマーキングの緩さ。これはここまでのシーズンを通して課題となっているポイントですので、猛省しなければ勝ち点を積み上げていくことは出来ないと思います。もうひとつ原口元気について、彼の負けん気と気持ちは理解しますが、試合後に嘆いたり、イライラする姿をサポーターに見せるのはいい加減卒業した方がいい。ピッチで魅せるのがプロの選手の役割ですから、感情を出すのはせめて裏でやって、ピッチでの活躍でサポーターを黙らせるくらいの気持ちを持ってもらいたいと思います。
豊田: おおっと、そうだったのですか……。試合後の表情までは追えていないので、論評はひかえます。ただ編集長の印象を聞く限りには、本誌インタビューに答えてくれたミスターレッズ・福田正博さんの「ストライカーは点が取れないときに、どういう時間を過ごすかが大事」という言葉を思い起こしますね。タイムアップ寸前のポストに当たったヘディングは、赤い応援席も一瞬躍り上がるほどの惜しい場面だっただけに、結果が出ていない現状では悔しさもひとしおだったのでしょう。次にピッチに立つときまでに、彼自身があるべき「時間」を過ごすことを希望します。