浦和フットボール通信

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「レッズ2012月刊ライブディスカッション」Vol.4後編

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2012月刊ライブディスカッション」。ミシャ監督が目指すサッカーは何なのか?EUROの試合を引き合いに出して、河合さんが監督に直撃したお話をお訊きしました。(浦和フットボール通信編集部)

Photo by (C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:世間では、欧州選手権(EURO2012)の話題も盛り上がっていますね。ワールドカップ最終予選で、日本代表のレベルが上がったなと思っていた矢先に、EUROでの試合を見ると欧州強豪国は更にスピードを加速させて進化している印象を受けてしまいます(苦笑)

河合:私も眠い毎日を過ごしています。先日行われたスペイン対イタリアの試合を見ていたら、イタリア代表はスリーディフェンスを行なっていて、そのスリーバックも守備の時は5バックになったり、4バックになったりと可変的なディフェンスを行なっていた。これはレッズの守備もイタリアに近いものがあるのではないかと、大原練習場でミシャ監督に聞いたら長話になってしまいました。

椛沢:ミシャ監督は、それについてどうお答えになったのでしょうか。

河合:ミシャさんは、イタリアの3バックを志向する上で、3バックのセンターを務めたデロッシの存在が大きいと言っていました。彼は攻撃能力があり、さらに典型的にストッパータイプで、彼は特に素晴らしかったと。そしてサイドハーフ、レッズで言うところの平川と梅崎のポジションの選手が高い位置でプレッシャーをかけている。我々も今後あのような可能性があると言っていました。

椛沢:世界の多くのチームが4バックで守る中で、イタリア代表は異質でしたね。しかも世界王者スペインを破ってしまったのでさらに注目が集まりました。

河合:私も世界のトレンドは4バックだと思っていたけれども、EUROのイタリア代表をみた時に、これからのトレンドは変わっていくのかなと思いました。あの戦術をとるには、1対1に強い選手がいないといけないので、デロッシのように攻撃力があって、守備能力が強い選手がいないとダメだとミシャ監督は話していて、将来はスリーディフェンスの傾向が強くなっていくかもしれないと言っていましたね。そしてレッズはイタリアの守備よりもベターなものを目指したい。レッズのディフェンス3枚が今後どのように変化していくのか見ていて欲しいと言っていました。

椛沢:イタリア代表よりもベターなもの……。もっと良いものをミシャ監督は作るという自信があるのでしょうかね。具体的にどのように変わっていくと思いますか。

河合: 例えば、平川や梅崎が高い位置でプレッシャーをかけた時に、3バックの横に出来るバイタルエリアが狙われるから、槙野がより高い位置を取って、永田が外に開いた所を埋めて、さらに阿部ちゃんが下がってきて3バックを形成するとか。そんなスライドした守り方をするのか。色々なやり方が考えられると思う。今は、阿部ちゃんが普通に下がってきて4バックになってスペースを埋めるやり方ですね。

Photo by (C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:なるほど。

河合:ミシャ監督は、日本代表のザッケローニ監督も3-4-3をやりたいと思うけど、日本人はなかなかやり方を変えることは難しいと感じているんじゃないかなと言っていました。日本はどのチームも同じ戦術を取ることが多いので、似たような戦術の形を取っていくことはJリーグを見ても多いので、その中で違ったやり方をチャレンジすることには価値があるという表現をしていました。確かにJリーグトレンドではないけれども、バルサが良いとなると、どのチームもバルサのようなことをやろうとする傾向があるとは思う。イタリア戦を見た時に、イタリアとは攻撃の仕方は全然違うけれども、守備の仕方を見た時にありだなあと思った。

椛沢:確かに日本では型にはめてその形を徹底させないと、戦術が浸透していかないことはあるかもしれません。

河合:3バックはカウンターも食らうし、裏のスペースを使われてしまう、リスクがあるし欠点もあるけれども、プラスの部分は攻撃的なところだとミシャ監督は3バックの長所短所について教えてくれました。単純に比較してもしょうがないけれども、どういう選手がチームにいるかが問題だと。デロッシはすごくインテリジェンスな選手で、スペインの選手の先を読むプレーを潰していた。それは凄く難しいこと。しかし、デロッシは頭の良い選手なのでしっかりやっていた。同じサッカーをしていてもデロッシがいなければ、スペインが5-0で勝っていたんじゃないかと。そうなるとレッズの中でもっとインテリジェンスな選手が求められてくるのかもしれないですね。

椛沢:ミシャ監督はどのようにインテリジェンスな選手を育てようと考えているのでしょうか。

河合:ミシャ監督曰く、インテリジェンスな選手というのは、トレーニングの中で培っていくもので、次のプレーを予測していくかを練習の中で繰り返しやっていけば出来る選手。能力がある選手は意識をもって出来るけれども、意識をもってトレーニングに望まなければ、能力があってもプレーができないし、それまでの選手だ。意識をもって反復することが大事だと、言っています。私は正直、ミシャ監督のサッカーは、時間がかかると思っていたけれども、イタリアの試合をみて、インテリジェンスな選手がいれば、その時間は縮まるのではないかと思います。

椛沢:ヨーロッパの選手の戦術理解度が高いですよね。日本代表の選手を見ても、欧州リーグで活躍している選手は、基本的な動き方いわゆる戦術理解度が高いと感じました。そのレベルにないと欧州リーグでは活躍できないのでしょう。

河合:ミシャ監督もずっと浦和で監督が出来るわけではないけども、インテリジェンスな選手を作って行かないといけないという話をしています。その話をしている時に、たまたま原口元気が横を通って、監督に座りなさいと言われ、インテリジェンスについての話になって、その日の練習の時のシーンを振り返って、動き方についてアドバイスをされ、出来る選手だから私は言っているんだということを伝えていました。相手の嫌がるところを狙うプレーをしろと。元気はそういうプレーが出来るプレーヤーだし、自分もそれが出来るんだと思って、理解をしてやらなければ、それまでの選手になるぞと。これは私が監督でなくなっても、同じ事を言われるだろうと言っていました。

Photo by (C)Kazuyoshi Shimizu

椛沢:比較的、元気は考えてプレーをするというよりも彼のフィジカル能力で、ドリブル突破が出来てしまったりして感覚でプレーができてしまった選手だと思います。

河合:だからこそインテリジェンスになれば、プレーの幅が拡がってもっと元気の良さが出て良い選手になれるはず。元気も咲きそうなつぼみだと思います。

椛沢:自分自身が気付けなければ本当には変わることは出来ないですから、本人がそれに気付けるかですね。ミシャ監督のサッカーは特殊なやり方なので、継続するのは本人以外でなければ難しいという話をよく聞きますが、監督としては長く続くレッズのサッカーを創って行きたいという考えがあるのでしょうか。

河合:それは、インテリジェンスな選手が増えれば、どんなサッカーでも対応出来るということなんだと思います。

椛沢:ミシャ監督としては、今やっているサッカーの形が全てではなくて、レッズの選手がインテリジェンスになることで、レベルが上がると考えているんですね。

河合:サッカーは判断力が求められる。クリエイティブで逞しい選手というのがサッカー選手。4バックだって、一枚上がれば3バックになるし、2バックになる時もある。常にサッカーは流動的に変わるものです。ミシャ監督も選手には次の展開を予測してプレーをする。相手を見て駆け引きをしてプレーをするということをずっと言っています。中断期間はインテリジェンスなプレーを鍛えるために、反復練習をずっと行なっていました。その中で、坪井は、インテリジェンスに変貌しつつあると思います。それは彼が培ってきたものがあるんだなと思う。啓太もすごく良くなってきていると思う。昔の働き蜂で、スペースを潰しまくっていた時のプレーが、ここにきてより活きてきて、啓太の良さが出てきていると思います。

椛沢:レッズの選手がどう変わっていくのかもミシャ監督の下でのレッズの変化として楽しみにしたいですね。有難うございました。

Photo by (C)Kazuyoshi Shimizu

 

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