浦和フットボール通信

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「レッズ2012月刊ライブディスカッション」Vol.6

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2012月刊ライブディスカッション」。リーグ戦も余すところ7試合。浦和レッズは首位の広島と勝ち点差5の3位。十分頂点も狙える位置で終盤戦に突入する。その浦和レッズは、現在どのような状況なのか。お話をお訊きしました。(浦和フットボール通信編集部)

ジグザグな山道を登るように着実にステップアップをしている。

椛沢:ダービーに引き分けたあと、横浜に2-1、ガンバに0-5、柏に2-1で勝利といろいろな変化があった9月だったと思いますが、どんな印象を受けますか。

河合:ミーシャ監督も選手もよく口にしている言葉だけども、「我々は負けた試合のあと、引き分けた試合のあとに必ず成長をしている」ということ。試合の中から学んでいることがあるということを口にしていて、横浜戦の勝利の前は、悔しい引き分けのダービーがあった。ガンバの試合は本当の完敗だったけれども、そのあとに劇的なレイソル戦があった。ガンバ戦では、遠藤のゲームコントロールのうまさが際立っていましたね。

椛沢:あの試合は、ガンバに完璧に研究をされて抑えられた印象です。最終ラインの永田、阿部を前線のチェイスで押さえ込まれてビルドアップをさせてもらえず、中央を絞められたかと思うと、スライドしてサイドも抑えられてしまった。手も足も出ない試合でした。

河合:本当に、あの時のガンバはすごかったね。二川のいやらしい動きとか、家長が引いて降りてきた時に、レッズはマークの隙ができたり、なんでこんなチームが残留争いをしているんだろうと思った。悔しいけど、“ガンバあっぱれ”だった。レッズとしては、あの試合から学んだことが絶対にあるだろうし、その学んだことがレイソル戦の劇的な試合に繋がったと思う。

椛沢:レイソル戦の劇的な勝利は、ガンバ戦の教訓が繋がっていたものであることは間違いないですね。

河合:矢島選手が試合後に「気持ちという言葉をあまり使いたくないんだけど、気持ちで勝った試合だった」と言っていました。まさにそんな試合だったと思います。今、レッズは、成長過程の中で、負けて痛い想いをしないと気づかないことがあるということでしょう。

椛沢:前半に良い試合をしても、後半に課題が残る試合が続く中で、マリノス戦は前半低調な出来ながらも同点ゴールを決めて、後半に逆転が出来た。これでレッズも一皮むけた試合が出来たと思った矢先に、ガンバ戦では完膚無きまでに叩かれてしまったと、なかなか右肩上がりに成長をするわけにはいかない感じですね。

河合:登山に例えると、真っ直ぐ登ろうとしても無理だよね。例え真っ直ぐの道を作ったとしても、それはすごく険しいし、時間がものすごくかかる。そこをジグザグに登っていくことで、それは遠回りをしているようだけども、必ず頂点につく。今は、ジグザグに登りながら、この道じゃないかもしれないと一度降りて、やり直したりしながら登っていて、その過程の中での3位なのかなと思う。

椛沢:今季、その意味でもチームが徐々にステップアップをしていると感じることができるシーズンだと思います。

日々の練習と試合によって学んで成長をしている。

河合:大原の練習でやっていることは変わらないんです。例えば今日は、シュートまでのパターン練習をしていて、攻撃は3人で数滴優位の状態で攻める。守備は2人で数的不利な状況で守る、という練習をやっていて、その中でマークを外して如何にフリーでボールを受けるのか、受け手と出し手の意思が合わなければ、もちろんインターセプトしてしまうし、パスミスをしてしまう。その練習を今日もやっているという感じ。そんな繰り返しをずっとやっている。

椛沢:繰り返し同じことを練習する中で、熟練していくという狙いなのでしょうか。

河合:そうですね。何度もここでお伝えしている通り、選手は判断力が問われている。今日もミーシャ監督が「お互いの意思を合わせよう!動き出しのタイミングと走る方向、必ず空間をうまく利用しよう!」ということを口酸っぱくして言っていた。ずっと練習を継続している中で、タイミングがあわないとすぐに監督は修正をする。そうやって同じ練習の中からステップアップ練習をして、選手たちの意識も高く保たれている感じだと思います。レイソル戦の最後の形も絶対に点を獲って勝つんだという姿勢と判断力が生かされたプレーだった。カウンターを狙うときの練習でもGKから前線に当ててということはやっていたので、その意味では狙い通りの形でもあったと思います。

椛沢:あのプレーでは、加藤と矢島、ポポが絡んでいたというのは、色々なストーリーを感じるプレーでしたね。それぞれの選手の想いが合わさって生まれたプレーだったように思えます。

河合:試合後に、矢島くんには厳しいことを言っちゃったんだけど、あの競ったあとはボールの行方を見るだけじゃなくて、前線に走り込んで欲しかった。でも彼の活躍は嬉しかった。柏戦で彼にベンチ入りをして活躍してもらいたいと思ってコラムを書いたので、その通りなってくれた。選手の底上げという部分でも成長をしてきていると思います。岡本拓也もベンチにすら入れない日々を過ごしているけれども、いつ使ってもできるレベルに上がってきていると思う。

椛沢:チーム全体が努力している姿は外からも感じることができますね。柏戦では、原口があのような態度を取ってしまった反面、ポポがプロフェッショナルな姿勢を見せてくれた。ポポのようなベテラン選手が試合に出られなくても日々練習を積み重ねて試合で結果を出したというのはチームにも良い影響を与える気がします。

河合:その意味でも、レッズは選手層が厚くなっていると私は思う。レッズはクオリティの高い選手が揃っていると改めて感じているところです。

椛沢:今季は、宇賀神選手の成長も目を見張るものがありますよね。何か彼を成長させているのでしょうか。

河合:やっぱり練習だね。ポポも練習が全てだと言っていた。練習は、基本の繰り返しをやっていて、その基本がある中で、ブレずに継続をしているので、選手も迷いがなくなって、自信をもってプレーができているんだと思う。おどおどしてプレーをしている選手はいない。レイソル戦の前に、柏木選手も俺がボランチをするということは啓太さんのような守備ができないから、みんなに迷惑をかけるかもしれないけど、その分、攻撃の部分で貢献したいと言っていた。実際は守備だって頑張って、あの位置でボールを奪えていた。各々の選手が自信をもってプレー出来ていることが良い影響を与えていると思います。

椛沢:そんな中で現状の課題はどこでしょうか。

河合:今の課題は前半の失点ですね。マリノス戦では、マリノスが前半から前がかりになってきた所でリズムを奪われて、そのまま失点をしてしまった。

椛沢:ガンバ戦も同じくガンバに前がかりに来られた所で、バタバタして失点をしてしまったところがありました。このような状況でも落ち着いていなせるようなになれば、さらに上のステップに行けるということなんでしょうね。

河合:そのように安定したプレーができるようになればレベルアップ。あとはチームのリズムが悪い時に、ピッチの中で締めるような雰囲気が欲しい。コーチングの部分で激を飛ばす選手がもっと出てくると良い。啓太が少しやっているけれども、もっとやってほしい。闘莉王的なハートの強さでカツを入れる選手の存在が出てきて欲しいなあ。あの試合ではお前たちは、まだ優勝する力はないだろ!ということをガンバに突きつけられた。もっと足元を見つめてやらないといけないんだということを振り返えさせてくれた試合だったのかな。そのあと、あの柏戦があったわけだからね。

椛沢:マリノス戦では、よし!これで行けるぞ!という雰囲気がゴール裏のスタンドにもありました。そこで浮かれたわけではないけれども、ちょっとした隙がそれによってできてしまったのかもしれない。逆にレイソル戦ではガンバの試合を受けて非常に締まった雰囲気がスタジアムにあったと思います。

河合:今の浦和レッズは練習のベースがあって、必ず試合で学ぶことがあって、それを力にしているということを感じるね。

残り7試合をどう戦っていくべきか

椛沢:次の札幌戦では、J2降格が決まった相手となりますが、多くの浦和支持者は、このような試合にレッズは弱いということも分かっていると思います。ガンバ戦の教訓があるので、気が緩むことはさほどないのかなと思いますが、サポーターも緩んだ雰囲気にならないように注意したいところです。

河合:平川選手が「うちは優勝争いをしていた時にJ2降格が決まっていた横浜FCに負けたことがあるからね」と言っていた。選手たちもそのことはしっかりと意識していると思います。札幌には、元レッズの河合竜二がいる。本当に竜二はレッズ戦の時は別人のようになってくるので注意したい。

椛沢:札幌にも意地があるし、J2に落ちたから残り試合はどうでもいいという姿勢ではないと思う。逆に失うものがなくなった強さが出てくる可能性もあると思います。

河合:侮ったらやられるのは間違いない。気を引き締めて闘いたい。

椛沢:そのあとは、仙台、広島との直接対決もあります。この2試合は優勝するならば勝ちがマストになります。広島は開幕戦で完敗してからの試合となるので、レッズの成長度合いを測れる試合で、さらに優勝を争う試合になる可能性が高いので、注目の試合です。

河合:ミーシャ監督が作ったベースを森保監督がうまくコントロールしてパワーアップしたチームがサンフレッチェ広島ですから、開幕戦から戦ってからの月日のあいだの中で成長しているチームですから、お互いに成長した中で、どんな試合になるのか楽しみ。

椛沢:むこうにも俺たちはもっと長い日をかけてこのサッカーを作ってきたんだというプライドもあるでしょうからね。

河合:そのような苦しい試合の中で、コラムにも書いたけど、これからラッキボーイのような存在が出てこないといけないと思っています。

椛沢:バックアップの選手もしっかりと練習をしているので、ポポの活躍も矢島の活躍もそうでしたけど、そんな存在はしっかりと出てきてくれるのではないかという期待はあります。

河合:本当にそうだよね。ポポは頭が下がります。ランコも同じでコツコツ練習をしている。今は怪我をして別メニューです。練習でもミニゲームの紅白戦でBチームが強い時もありますからね。ランコ、ポポ、達也がいて、矢島、宇賀神がサイド、ボランチに小島、野崎、最終ラインに野田、水輝、岡本、GKに山岸か大谷。どの選手も力をつけてきている。それを寂しげに眺めている山田直輝もいます。。仙台の前は代表戦が入ることでの中断期間があるので、その間にどう準備ができるかも重要ですね。

レイソル戦での原口元気の態度について

椛沢:レイソル戦での原口の態度についてですが、これについても色々と議論がされるところだと思いますが。

河合:あの試合で、元気が良いプレーをしていなかったことは誰もが感じていたことだったと思う。それはピッチに立っている本人が一番感じているはず。それで、あの時間で変えられたことで、もっと時間をくれればもっとやれるんだという気持ちがあったんだと思う。そういう気持ちは選手である以上はあってしかるべき。私はあの元気の不満な態度は、元気らしいなとも思えるんです。あれでしょぼくれて帰ってくるようであれば元気ではない。でも、そのあとにとった八つ当たり的行動はいただけない。本人も自分のプレーが情けなかったことを分かっていると思うけども、それであれば己に怒れと思う。ミーシャ監督と話をしたら、「柏木陽介だって、そういうことがあった」と話をしてくれた。そしてミーシャ監督は試合に集中をしていたから、気付かなかったと不問にした。そこはミーシャ監督の人間性、監督としての器の広さだと思う。元気の気持ちも痛いほどわかるんだと思う。加えてミーシャ監督は「彼は悪いプレーをしても、怒る人がいなかったのかもしれない。そこまでの中では90分使っていればワンプレー良いプレーができるかもしれないという指導者の期待があったからなのかもしれない。でも元気は次のステップに行くためには今回のことは必要なことだったと思う」と教えてくれた。選手の気持ちが分かってくれる監督がいて良かったと思う。それに元気も応えようと思っているはずです。ただサポーターに挨拶に行かなかったことを私は怒る。自分に甘えちゃいけない。自分たちが情けない試合をしてもサポーターには頭を下げに行かなければいけないと思う。大分で、惨敗したあとに阿部ちゃんが、膝まづいてゴール裏に手を合わせて謝ったことがあるじゃない。あの時にサポーターは誰も責められなかったと思う。選手の気持ちがどんなものだったかわかるから。元気に対しても自分が良い時も悪い時も一緒に戦ってくれているサポーターに挨拶をして欲しい。

椛沢:元気はまだまだ子供なんでしょうね。そうやって経験をしながら大人になっていって欲しい。もう普通の若手選手ではなく浦和を背負っているプレイヤーなわけですからね。

河合:今回の件は、良い勉強になると思う。サッカーもミスしたあとが大事だからね。
このあとの試合で、元気は必ずやってくれるでしょう。

椛沢:達也と山岸も原口に次が大事なんだと伝えたそうですね。ミーシャ監督は人心掌握術として、彼を代えたのかもしれないですよね。

河合:「これで元気は大丈夫ですね」とミーシャ監督と話をしました。他のメディアには甘いんじゃないかと言われたけれども、問題をほじくり返すよりも元気がチームのために如何に仕事をするかの方が大事。元気はフェルナンド・トーレスの試合を見たりして、ワントップの試合のゲームを見て勉強をしている。ピッチの外でも見えない所で、努力を続けている。もともと元気はワントップのプレイヤーではないと思うけど、そこをこなせるようになればサッカー選手としての広がりも出てくる。ワントップをモノにしようと努力しているところは評価してあげたい。

椛沢:必ずそれがピッチのプレーに見えてくると思います。そしてリーグ戦も残り7試合ですが、皮算用をあまりしても意味がない。1試合、1試合を戦って、その先に何かが見えるという姿勢が一番良いのかと思います。

河合:ミーシャさんも「常に1試合、1試合。その積み重ねなんだ」と言い続けています。レッズのつぼみは、花は咲きたいけど、まだまだ。満開になっていない。ちょっとずつ花は咲いているところもある。元気なんてまだつぼみだもの(笑)。彼ももっとできる選手。その花を少しずつ咲かせて行き、最後に良い結果となるように応援しましょう。

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