浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.109(10/12)

シーズン終盤、問われる力

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末の札幌戦は、J2降格が決まったばかりの相手に対してまさかの敗戦となりました。このような相手に弱い歴史があるレッズですが、この試合でも同じ歴史を繰り返してしまいました。柏レイソル戦での劇的な勝利を繋げるためにもこの試合をモノにしようとサポーターも意気込んでのサポーティングでしたが、スタジアム全体が相手を見下していた雰囲気があったことも事実だと思います。「なぜそれが決められないんだ」という雰囲気が続いて、この試合を勝ち取るんだという雰囲気が作れなかった。この部分においても札幌に隙を与えてしまった試合だったと思います。

豊田:ガンバ戦の件もあった。選手のこころにスキがあったとは思いません。でも、優勝争いのさなかの重要ゲームで、降格が決まっているチームに負けを喫した事実は変えられない。ディフェンス陣に消耗があり、判断が甘くなっている場面が多々見えます。2失点ともに前節のレイソル戦では見られなかった球ぎわの「プレーの軽さ」から守備破綻が起き、失点に直結してしまった。特に追加点に持ち込まれた流れは、優勝争いをしている立場を考えれば「勝点ロス」が決まってしまう勝負どころ。慎重な火消しの技術が保てなければポイントは拾えません。二人続けて入れ替わられて欲しくなかったな……。札幌は今季アウェーでの初勝利だったそうですね。つくづくサッカーの不条理を体現し続けてくれるクラブです。帰り道で幼稚園くらいかと思われる女の子がママと珍妙な会話。「ママ、レッズは、いっつもエーッだね」「そうね、毎週毎週、エーッだね」……教えてあげたくなりました。あなたが生まれるずっと前からの伝統なんだよと。

椛沢:試合を振り返ると、原口、マルシオに幾度も決定機があったわけですが、それを決めきれなかった。原口はこの試合で魅せようという意気込みは見えてきましたが、マルシオと共にどこか本調子ではないように思えます。決めるべき時に決めないとしっぺ返しがやってくる。後半にカウンターから2発を決められて、フットボールのセオリーのような展開になってしまいました。

豊田:マルシオは停滞期間が長くコンディション維持が難しくなっているように見えるし、元気はワントップを「こなそうとしている」印象。苦しみながらではあるが、前線でボールを収めるスキルにトライしています。ゴールに繋がらない以上、批判があるのは当然でしょうが、いまのレッズにはこれをポポとの併用でこなして行く以外の選択肢がありません。元気個人として見れば、ミシャ戦術の範疇では本領を発揮する段階には至らないままこの終盤まで来てしまっているのが実情と思う。となると首位を争う厳しい局面でポイントを積み重ねるには、他の攻撃陣も含めてセットプレーやミドルレンジからの一発などの飛び道具が条件になるのですが……そのタスクがこなせる駒がないのが辛いところですね。

椛沢:センターフォワードの部分は、「補強」よりも「成長」を取ったポイントだと思うので、その点では結果を求める上では多少のハンデになるのは致し方ないのかもしれません。試合終了後のコンサドーレサポーターのコールばかりが印象に残った悔しい敗戦でした……。

豊田:ひさびさに「ウィ・アー・サッポロ」という違和感万点のコールを聞く羽目になりました。ここはレッズ支持者として、アウェースタンドで掲げられていた札幌サポーターメッセージをそのまま借用したいです。「クラブはこの変わらぬ愛にこたえる覚悟はあるのか」……(苦笑)。タイムアップの時に感無量の表情を見せた札幌のゲームキャプテン・河合竜二選手(元浦和レッズ)と、退任が決まっている石崎信弘監督の笑顔が印象的でした。河合選手はJ2時代のレッズをウェスト・シドニーへの移籍が決まった小野伸二選手や城定信次選手(浦和レッズ ハートフルコーチ)とともに若手の一角として支えたベテラン。このゲームでは中盤で柏木を追い、ゴール前ではマルシオに食らいつき、勝利に貢献する働きだったと思います。で、そのJ2時代に昇格の椅子を争った大分トリニータを率いていたのが石崎監督。Jファンにはもはやおなじみのベテラン監督ですが、コンサドーレ退任に際して「次の仕事を探している」とのコメントも発したとか。出身の広島県工高時代は金田喜稔さんや木村和司さんのチームメイトだったのですね。現役プレーヤーとしての頂点だったJSL時代は、堀孝史さん(現浦和レッズコーチ)とともに東芝を引っ張った名DFでした。

椛沢:河合選手といえば、2004年のマリノスとのチャンピオンシップの第1戦で、決められたヘディングでの決勝点ですね。あれは悔しかった。彼は西武台高校から入団してフィジカルが強く期待された選手でしたが、レッズではなかなかチャンスを掴めず、トライアウトで岡田監督に拾われて活躍をした選手でした。浦和を離れてから芽生えたところはあったみたいですね。札幌でもキャプテンとしてチームを引っ張りJ1昇格に貢献している姿は正直、驚きのところもあります(笑)。

さて、ミッドウィークには天皇杯3回戦のカマタマーレ讃岐戦が行われました。会場はよくある”国体仕様”の佐賀県陸上競技場。福岡空港からさらに車で2時間かかるレッズとしても初めてのスタジアムでした。会場の1583人の内、300人くらいはレッズサポーター、カマタマーレのサポーターも30人弱でした。試合は札幌戦同様に、レッズ対策を施してきたチームに対して大苦戦。相手のレベルは関係なく抑え込まれてしまうと何もできないのかとジリジリする展開でした。後半矢島が入ってから彼が絶妙なポジショニングでボールを引き出しながら受ける矢島のプレーでリズムができて、同点ゴールも矢島が決めました。しかし試合を通じてカマタマーレに自信を与えてしまったこともあり、諦めずに攻め続けるカマタマーレに終了間際に同点ゴールを決められてしまいます。延長戦を覚悟しましたが、ラストプレーで、ポポが柏戦に続く劇的決勝ゴールを決めました。これでなんとか4回戦進出。しかし試合内容としては札幌戦に続いて苦しい展開でした。シーズン終盤となった疲労が見える攻撃陣の奮起が求められます。

幸い今週末は代表マッチデーのためリーグ戦はお休みということで、しばらくの準備期間を終えてから敵地に乗り込んでのベガルタ仙台との一戦です。頂点を狙うためには、もちろん勝利しかない一戦。前線からのプレッシャーと堅い守備を武器として、鋭いカウンターでチャンスを伺ってくる仙台のやり方は、レッズが不得意な相手。この相手をどう攻略出来るかが、頂点を狙うに相応しいチームになれるかどうかを試される一戦にもなると思います。

豊田:まさに正念場。不得手といっても負けを引きずっている暇はない終盤戦です。直接対決ですから、ここで3ポイントを取り戻すレッズらしさを演出して欲しい。次なるレッズの「エーッ」は、敵地で躍り上がる「エーッ」にしなくてはなりません。

椛沢:浦和レッズは、良くも悪くも「エーッ」と思わせるチームですから、仙台では思いっきりぶつかって、周囲を驚かせる試合をしたいところですね。我々サポーターも鋭気を養ってしかるべき対戦をひかえましょう。

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