浦和フットボール通信

MENU

9年ぶりベスト4進出!!【河合貴子の試合レビュー】天皇杯準々決勝 ヴィッセル神戸戦<槙野、興梠、李、武藤、青木、西川、相馬、高橋(神戸)、ペトロヴィッチ監督コメントあり>(2015/12/26)

今日のポイント!!

前半に、いかにも浦和らしいコンビネーションプレーで試合を決定付けた。槙野選手が「後から見ていても、神戸の選手も「敵ながら上手い」と褒めるぐらい上手かった。ボールの無い選手の質が上がってきている。危険な走りも出来ている」と言うぐらい、3点ともビューティフルゴールであった。

そして、その後は次の準決勝を見据えた闘い方が出来た。ただ、後半にも数的優位を生かして点が欲しかったことは事実だ。

ミシャ監督は、ハーフタイムにも試合後にも「もっと点を獲りに行け。メリハリを持って遣れ!」とロッカールームで怒ったそうだ。だが、無理して相手の狙うカウンターに嵌らずに、ピッチの中で選手たちが上手くゲームコントロールをしていたことが、公式戦において10試合ぶりの無失点に繋がったと言える。試合全体を通して、大人のサッカーをしたと言っても良いだろう。

安定した闘いで3-0の完封勝ち

チャンピオンシップの惜敗から約1か月、心身共にリフレッシュして念入りに準備してきた天皇杯・準々決勝神戸戦を迎えた12月26日、浦和はヤンマースタジアム長居に乗り込んだ。

2ndステージ最終節・神戸戦では5-2と快勝した浦和であったが、3点リードしてからのゲーム運びが問題点であった。2ndステージとチャンピオンシップの反省を生かして浦和は、天皇杯に向けて取り組んで来た。新しい取り組みの1つとして3バックの真ん中を永田充選手を起用してきたが、試合前日練習で永田選手のふくらはぎを負傷に伴い、リーグ戦と同じ那須選手を中心とするDFラインとなった。

射し込む日差しを考量して神戸が陣地を選択し、浦和のキックオフで始まった試合は、3分に三原雅俊選手が早さを生かしたドリブル突破を見せたが、立ち上がりから主導権を握ったのは浦和であった。

神戸は、レアンドロ選手をワントップにして5-4-1とブロックを作り守備を固めてきた。浦和は、ボールを保持しながら、DFラインを高く保ち、何度もしつこく攻撃を仕掛けていった。

興梠慎三選手は「最初は、ボールをもらおうと思ったが、入って来なかった。相手が5DFで守ってきたので、動き回って崩した方が良いと思った。動き回ることでついて来る選手が掴み辛くなると思った。チュン君と武藤を呼んで「動き回ろう!」と話した。ローテーションで受けて、ポンポンと崩せた」と嬉しそうに話した。

リズム良く流れるようなコンビネーションで先制点が生れたのは、22分のことであった。退き気味にポジションを取った武藤雄樹選手からペナルティアーク付近の興梠選手へ、興梠選手が李忠成選手とのワンツーで上手く抜け出し、左足でゴールへと流し込んだ。

ミシャ監督は「非常に試合に上手く入れた。良いコンビネーションから得点が生れた」と満足そうな笑みを浮かべた。先制点を決めた興梠選手は「決めるだけだった」と笑った。

そして、23分には那須大亮選手が後方から持ち上がり、興梠選手へと楔のパスが入るとそこからの展開が早かった。宇賀神友弥選手の横パスを柏木陽介選手がスルーし、李選手が上手く合わせて左足を振り抜き2-0と神戸を突き離した。

李選手は「結果が出ましたねぇ~。ゴールを獲れたことは、嬉しい。今年に入って年末にフィットするとは思っていなかった。30歳になって、初めての公式戦でゴールが獲れた」と幸せそうな表情を浮かべた。

そして「相手が守備を固めていたので、様子を見ていた。1点獲れば、神戸は前掛りになるし、2点を獲れれば試合は決まると思っていた。ポンポンって獲れた」と話した。

2点リードした浦和は、その後も攻撃の手を緩めることなく仕掛けていった。32分には、個人技で李選手がDFの裏を突こうとした瞬間に、三原選手が思わずファールで止めてこの日2枚目のイエローカードで退場。浦和は数的優位に立ち、更にゲームを支配していった。

1人少なくなった神戸だが、無理に前線からプレスを掛けずに4-4-1とブロックを作り、奪って縦に早い攻撃を狙っていたが、チャンスを作れないでいた。

槙野智章選手は「1人、相手が退場したので、ボールを動かすことが出来た。前からプレスを掛けるところとブロックを作るところで、「僕達の後ろの声を聞いてくれ」と前線の選手に話していた。上手く、前線の選手のコントロールを後ろが出来たと思う。攻守のバランスが良かった」と話すように非常に良いバランスが保てていた。

浦和はペースで展開する中、44分には李選手がドリブルで仕掛けて武藤選手へと楔のパスを入れたと思いきや、武藤選手が上手くボールをまたいでスルーし、宇賀神選手が豪快に右足を振り抜き、試合を決定付ける3ゴール目を叩き出した。

スルーした武藤選手は「宇賀神ゾーンだし、スルーしました。上手くボールを隠したら、開幕以来のゴールを決めてくれた」とニヤリと笑うと、その武藤選手の発言が聞こえた宇賀神選手が「すいませんねぇ~開幕戦以来のゴールで!!」と言い返しながらも嬉しそうであった。

前半、浦和が放ったシュートは10本に対し、神戸は僅かに1本と浦和のワンサイドゲームとなった。

苦しい展開を強いられた神戸のネルシーニョ監督は「中央にバランスを取りながら、カウンターを仕掛けて行こう。行く、行かない時の判断をしっかりと」と指示をだし、後半の頭から藤谷壮選手に代えて高橋峻希選手、石津大介選手に代えてブエノ選手を投入し、3-3-3としながらも、守備の時は両ワイドが下がり5DFとしてきた。

一方、良い流れを掴んだ浦和のミシャ監督は「ゲームをコントロールしながら、ボールをしっかり動かして、仕掛けるところは仕掛けて行こう。もう少し、攻守の切り替えを早くし、後半も落ち着いてプレーをしよう」と選手たちをピッチへと送り出した。

後半も立ち上がりからゲームを支配したのは、浦和であった。しかし、前半で試合を決定付けた浦和は、ゆったりとボールを保持しながら試合を進めていった。

相馬崇人選手は「関根は、良い選手だね~」と対峙した関根選手を褒めて「全体的に、前からプレスを掛けていけば良かった。完全に浦和ペースだった。まぁ~ゆっくりしますよ」と悔しそうに話した。

後半から起用された高橋選手は「厳しい状況の中で、後半の最初からだったけど、大阪にサポーターが来てくれている中で何とかしたいと思っていた。森岡からのパスも周作君が飛び出して来たから止まってしまった。勿体無かった。足元、足元でボールを獲られる形が多かったので、前からプレスを掛けて行き、カウンターを狙った。どちらもチャンスは在ったけど、僕達は嵌められていた。やっぱり、試合の流れを読んでいるところは、上手いなぁ~と感じた」と話していた。(余談であるが、高橋選手はオフを浦和で過ごすそうだ)

上手くゲームコントロールしていた浦和であったが、61分に高橋選手のクロスをレアンドロ選手と競りながら、森脇選手のヘッドでクリアーしたボールがクロスバー直撃!あわやオウンゴールを献上するところであった。

62分には、武藤選手に代わりズラタン選手を投入し、興梠選手をシャドーへと下げて、ズラタン選手のワントップにした。更に、68分には、宇賀神選手に代えて梅崎司選手を投入し、那須選手に代えて青木拓矢選手を入れボランチの阿部勇樹選手がDFラインに下がった。

ミシャ監督は「中2日で次の準決勝、更に勝ち上がれば中2日で決勝だ。リードしていたし、1人多いことを考えての交代だった」と余裕を見せていた。約1カ月ぶりの公式戦と言うこともあり、試合勘や中2日と決勝まで試合が続くことなどをコンディションを考慮した交代であった。

72分、身体を張った梅崎選手のスルーパスは興梠選手に合わず、チャンスを作るものの追加点を奪えずにいた。

青木選手は「相手が1人少なく、3点リードしていたが、もう少し点を獲りに行けば良かった。ゆっくりと入ろうって感じだった。自分たちのミスも増えていった。ただ、ゲームコントロールと言った点では、上手くいった。全体を見て、ボールが回し易い位置と獲られた後の守備のことを考えてやっていた。失点はしなかったけど・・・」と少し物足りなそうに話していた。

後半、ゲームを支配しながらも浦和が放ったシュートは、柏木選手が直接狙ったFKの1本だけであった。一方、神戸の放ったシュートは、渡邉千真選手が放った1本だった。

西川周作選手は「良いゲームの入りが出来て、素晴らしいゲームが出来た。前回の神戸戦で3-2とされたから、前半と後半の終わりを意識した。無理に楔のパスを打ち込むこともなく、良いバランスだった。失点しなくて良かった」と公式戦で10試合ぶりの無失点を感触を噛みしめていた。(9月11日柏戦以来の無失点)槙野選手は「何よりも勝てたことはもちろんだが、0で押さえたことが嬉しい。何カ月ぶりかなぁ?FC東京の練習試合でも良いイメージが出来ていた。一緒にプレーしていた永田選手が抜けて、マキ、ナス、モリのコンビで何が何でも0で押さえようと話していた。本当に良かった」と安堵の表情を浮かべた。

前半の3ゴールで試合を決定的にした浦和が、崩れることもなく安定した闘いで3-0で神戸を下し、準決勝へと駒を進めた。

ページ先頭へ