浦和フットボール通信

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河合貴子×椛沢佑一 浦和レッズ2015ライブディスカッション 「2015シーズンの選手たちを振り返る」

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ボランチ起用で覚醒した柏木陽介

椛沢:各選手も振り返っていきたいと思いますが、今季目を見張る活躍だったと思う選手では、柏木選手は、今季からボランチを任されて、覚醒をした印象があります。

河合:ボランチを任せられる時に、最初は「俺はボランチではなくてシャドーの選手だ」と言っていたけれども、気持ちも変わって素晴らしいプレーを見せてくれたと思う。彼がよく言っていたのが「自分のプレーの出来次第で、チームの勝敗が変わる」というくらい責任感を持ってプレーをしていた。失礼ながら足の速い選手ではないけれども、本当に必死になって追いつかないだろうというボールも追いかけて、奪うんだという気持ちを持って走っている姿を見ると、彼はもう浦和の子だって思える選手になってきたと思う。

椛沢:役割を与えると人は成長すると言いますけど、まさにそれが当てはまる所があるのかもしれませんね。活躍が認められて、久しぶりの日本代表にも選出をされました。

河合:あれはミシャ監督の今季の大きな成果の一つといっても過言ではない。本人もロシア大会の出場を本気で狙っているからね。ただ、腰の状態や足の状態が悪くてFKが蹴れないこともあった。彼が万全な状態でプレーをすれば浦和はこんな結果にはならない。浦和の8番は良い。今季は本当に良かったと思う。

椛沢:阿部選手のブリスベン戦の叫びが今季大きなターニングポイントの一つにもなりました。バラバラに成り掛けたチーム状況を留めた態度だった。たかねえがコラムでも書いていましたが、湘南戦では試合中にずっと選手を鬼気迫る雰囲気で叱咤し続けていたそうですね。

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河合:試合後に宇賀神選手が「あんな阿部さんを初めてみた。いつもだったら俺の背中を見ろというタイプなのに、すごい雰囲気だった。阿部さんにあそこまでさせてはいけないんだよ」と言うくらい、彼には鬼気迫るものがあった。その態度に心を鷲掴みにされたよね。

椛沢:湘南もJ1昇格の勢いそのままに開幕戦を向えて、湘南らしいボールを奪ってから多くの人数をかける迫力ある攻撃を仕掛けて、序盤にレッズが失点を仕掛けた場面もありました。あそこで仮にも負けていたら全く違う展開になっていたことも予想されます。

河合:大きなタイミングだった試合だったと思う。阿部選手は本当に頼りになるキャプテンだよ。

椛沢:阿部選手は、浦和にきて優勝したいという思いがあるだけにCSの敗戦後の寂しげの表情が印象的でした。

河合:柏木選手だって、槙野選手もそうだよ。槙野選手は、どちらかというと印象で色々と言われてしまうことがあるけれども、練習中からもそうだけども、ピッチの中では、すごく声をだして味方を叱咤をしている。サッカーに関してはすごくこだわりもあるし、見えない努力もしていると思う。

昨年の悔しさから選手たちは少しずつ変化した

椛沢:その他、変化が見えた選手はいたでしょうか。

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河合:興梠選手も2年連続で最後の最後に試合に出られなかった。代表にも呼ばれたけれども、怪我でダメになってしまった。それから意識が変わって、練習が始まる前にトレーニングルームで体幹トレーニングをやったりして、周りの選手が驚くくらいだった。

森脇選手も始まる前はボールを蹴って遊んでいたのが、今季の途中に怪我で離脱した時に、ウカウカしていられないと、練習が始まる前に、ピッチを一人黙々と走って、自分の身体と向き合って、この部分が張りがあるなとか、疲れているなと、アップをする前に自分のコンディションを確認するようになった。少しずつみんな変わってきている。それだけみんな優勝がしたかったんだと思う。

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椛沢:昨年の悔しさもあったでしょうから、少しでも変わりたいという気持ちがあったのでしょうね。

河合:青木選手も普段は、ぽわ~んとした青木ワールドがあるけれども、スイッチが入った時はすごい。永田選手も同じ所がある(笑)。槙野選手が「充君の良さもある。守備能力はチームでも優れている。ただしポカさえなければね」とコメントをしていたけれども、たまにポカするんだよね。それは、考えすぎちゃってプレーが遅れるということがあったりするのかもしれない。プレッシャーを感じるような選手だとは思ないんだけど……。フィードはものすごく上手いからね。リベロの争いでは、どちらが迫力があるかと聞かれると那須選手なのかなと思うけれども、永田選手もスイッチが入るとディフェンダーの恐さを持っていると思う。

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椛沢:ディフェンスでは、守護神としてゴールを守った西川選手はどうでしたか。

河合:西川選手はセカンドに入って少し崩れたような気がして、今までだったら止めていたんじゃないかなと思う場面もあった。もちろん彼で救われてきた部分もあったけれども、常に無失点をやりたいと言っていたのが、逆にプレッシャーになっていたのかな……。セカンドに入って、プレーに波があったような気がしてならないんだよね。

椛沢:確かに、ファーストに比べるとセカンドは西川選手の存在感がそこまではなかったかもしれないですね。代表の正GKにもなって二足の草鞋を履く難しさもひょっとしたらあったのかもしれないですね。

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河合:全然、試合に絡まなかったけれども、茂木選手、斎藤選手もビブなし組にも入れずに、ミニゲームをする時は天野コーチの下で目的意識をもって練習をやっている。彼らも試合に出たいという思いが強い中で、我慢強くなった一年だったと思う。同じ年の選手は他のチームではピッチに立って活躍している選手もいる中で、それを越えられない自分たちは、まだ課題があるからだと思い聞かせていた。U―22選抜で、試合に出ることもあったけれども、チームでやるのと向こうでやるのでは、システムや考え方、コンビネーションがうまくいかずに結果という意味では残らなかったのかもしれないけれども、良いチャレンジにはなっていた。練習試合でも、茂木選手はボランチ、ワイド、ストッパーと様々なポジションを試されていた。ただ、彼らはまだレギュラー、ベンチ組を越えるだけの信頼を勝ち取れていない。時間が掛かるんだろうなと思う。それで我慢して続けられるか、我慢できずに外に行ってしまうのか、という所かなと思う。

椛沢:選手は、試合に出ないと伸びないと言われている中で大事な時期にどういう判断をするかは選手たち次第ですね。

河合:平川選手のように、常に試合のことを頭の中に描いていて、自分の出番があろうが、なかろうが準備をしていて、突然出番がきても、あれだけのパフォーマンスが出せる。ファーストステージのガンバ戦は見事だった。あの守備力といい、すごいなあ、やっぱりと感じた。そういうのを見習わないといけない。

椛沢:経験があるから出来る部分もありますからね。

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浦和魂を持っている選手とは

河合:それは間違いなくあるね。鈴木啓太選手に関しても、不整脈さえなければという思いもあるけれども、今は最後の1月1日までレッズの選手だからと必死に取り組んでやっている姿をみると胸が熱くなる。

椛沢:最後の挨拶の時に、サポーターへの気持ちを伝えてくれたのは初めてだったように思います。言葉にしなくても理解している選手だとは思っていましたけど、やっぱり良く理解してくれていたんだなと思いました。先日は、力にも飲みにきていたようで、Twitterで「このクラブが進むべき道を感じた気がした」と呟いていて、何気ない言葉だけど重い言葉だなと思いました。

河合:挨拶では、浦和の男だと言われたことが一番うれしかったと言っていたよね。浦和の街で、みんなの気持ちが改めて分かったんじゃないかな。昔は選手が浦和の街に普通にいたからね。そういうことをどれだけみんなが感じてくれたか。生え抜きじゃなくても、それは感じることが出来るはず。阿部選手も興梠選手も柏木選手だって生え抜きじゃない。那須選手だって浦和魂を持っているような人だし、サッカー選手としてどうあるべきかということが分かれば自ずと答えは出てくると思う。

浦和の魂はなんだろうと思うと、サッカーの魂なんだろうなと思う。それなんじゃないかな。へらへらしているようだったら戦えないでしょう。

椛沢:たかねえが言う浦和魂は、真摯なサッカーへの想いという所ですかね。

(了)

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