浦和フットボール通信

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河合貴子×椛沢佑一 浦和レッズ2013ライブディスカッション「レッズが育てた才能・原口が芽生える時」

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを毎月訊く「レッズ2013月刊ライブディスカッション」。早くも9試合を消化。成長著しい原口元気選手など、ここまでの各選手達の様子や評価について、お話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

ど根性男・那須大介は苦労人

椛沢:新加入選手では、那須大介選手はどうでしょうか?入団会見でも気迫を見せると言っていましたが、その宣言とおり、気合のプレーでサポーターの心を既に鷲づかみしています。プレイヤーとしてのレベルも高いですよね。

河合:彼は、ど根性男だよね。そしてクオリティーが高い。本人は中央でやりたいということだけどもサイドのポジションも出来る。計算できる選手だし、鼻を骨折していても根性で出場をしてしまうくらい永田充が帰ってきてもポジション譲らない勢いだよね。気持ちも熱いし、メディア対応もすごいしっかりしていて、自分の想いをしっかりと口に出来る選手。マリノス、ヴェルディ、ジュビロ、レイソルと4チームを渡り歩いているだけあって、苦労人だとすごく感じる。去年は、レイソルでもすごく苦労をして、なかなか出場が出来ずに、心が折れそうだったと言っていた。その折れそうな心を耐えて、最後は天皇杯決勝にも出場をして優勝を果たした。彼は、自分の想いを書いているノートがあるらしいんだけど、それを見せてもらいたいなと思う。以前、柱谷哲二さんがレッズのサテライトのコーチをやっている時に交換日記を全選手とやっていて、それをセルヒオが見せてくれたことがあるんだけども、そこには自分のプレーが良かったこと、ダメだったことなど、練習で感じたことを書いていて、それに対して柱さんが、コメントを全てに返していた。柱さんのあの行動には頭が下がったね。話は出来ても、書くという行動まではなかなか出来ないし、那須も言っていたけど文字にすることで、気持ちの整理が出来るんだよね。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

チームの主軸へと成長した原口元気

椛沢:特に今季は原口元気の活躍が目覚しいものがあります。先日、前レッズレディース監督の村松さんと話す機会があったのですが、村松さんはアカデミーセンター長を務められていて、元気をレッズのジュニアチームに入れたところから関わっているので、ようやく彼がチームの主軸になって嬉しいと言っていました。浦和レッズが手塩にかけて育ててきた才能がようやく芽生えようとしている瞬間なんだと感じたお話でした。

河合:実は、村松さんが原口を獲った時に、超わがままな彼をなんで獲ったんだと言ったことがあるんだよね。そうしたら、村松さんは「だからこそ、天狗の彼をサッカーは違うんだということを教えるんだ。サッカーは一人では出来ない。チームプレーが重要なんだということを教えて、彼がそれを理解してサッカーが出来たらすごい選手になるんだ」と言っていたのを覚えています。私も、嬉しくてしょうがない。頭と身体がもっとついてきたら、もっとすごい選手になる。

椛沢:レッズジュニアユースに入る際も、原口が浦和に行くなら行かないという選手がいたくらいだそうですね。それでもクラブは、プロに入ったらもっと競争が激しい中で、今そこで逃げる選手はいらないという意気込みで、原口をチームに入れて育てたそうですね。そんな彼も紆余曲折ありながら、精神面的にも大人になってきたように見えます。

河合:去年の途中から変わってきていると思う。精神面の成長は、今年の元気の笑顔を見ていたら分かるね。これだけ活躍を見せても、まだ本人は全く満足をしていない。そういう貪欲さは大事だし、それが芽生えている。元気は、以前から貪欲だったけれども、個人的な貪欲ではなくてチーム的な貪欲の中にプラスアルファが入っている風に感じている。色々なバランスが良くなってきていると思うね。

椛沢:ゼリコの時も活躍はしていたけれども、彼だけ特別な役割を与えられて守備をしないとか、そういう意味では、主軸という感じではなかったけれども、今は、チームの柱といっても良い選手になってきました。

河合:元気にすごい守備面も良くなったよねといったら、「いや違うよ。前から守備をしているよ。いいところがあると他も良く見えるんじゃないの?美化しすぎだよ」と笑われたけど、私は違うと思う。良いプレーが守備面にも出てきていると思う。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

興梠はガムシャラさに加えて冷静さを身につけて欲しい。

椛沢:今季から加入してワントップを務めている、興梠については、どうでしょうか。

河合:私は大好きだよ。鹿島時代は、大嫌いだった選手だけど(笑)。興梠選手に、ガムシャラと冷静さがついてきたら、もっと好きになる。練習でもそうだし、試合もそうだけど、すごく難しいシュートは決まる。それは冷静だから決まるのではなく、がむしゃらさで決まっているように見える。逆に、すごく簡単な場面で、インサイドで軽くあわせるだけのシュートが決まらない。それは練習中でもそうなんだよね。今日の練習でも普通決まらないだろうというゴールが決まってしまう。あれはもって生まれた野生の感性なのかと思う。

椛沢:鹿島時代も点が取れる時は、立て続けに取れるけど、取れなくなると途端に取れなくなることがあったと。その波はその部分に起因しているのかもしれないですね。勢いがある時は点が量産できるけれども、勢いがなくなると失速してしまうと。

河合:それは本人も言っていた。ちょっと野人岡野に似ている気がする。そこに冷静さが加わって確実に慌てずにビックチャンスを決められるようになって欲しい。もともとサッカーセンスはすごくある。彼が加入してすぐに優等生が来たといったけれども、ミシャサッカーに馴染むのも早かった。だから能力もすごくあると思うんだよね。あとは、ゴール前の冷静さと緻密さが加わったらもっと好きになる。

椛沢:福田正博さんは、ストライカーに重要なのは、ゴール前での落ち着き。ゴールが決められるようになったのは、プレーがシンプルになってからだと言っていました。簡単に決められるゴールがないとゴールは増えていかないかもしれません。

河合:福さんが得点王になった時に言ってくれたのは、シュートはゴールへのパスだと。もう一人得点王になったエメルソンは、シュートはGKもネットも全て打ち破る。そういう思いで蹴ると言っていた(笑)。二人のゴールシーンを見ても全然違うと思う。

椛沢:エメルソンのプレーは常人には出来ないものでしたからね。レッズ1000ゴールのDVDが出るそうですから、比べて見返してみると面白いかもしれません。

河合:興梠は、移籍初ゴールは難しいものだといっていて、それがずっとプレッシャーになっていた。初ゴールのチャンスとなった、PKも外してしまい。サッカーの神様が「そんなもので初ゴールをしても嬉しくないだろ。ちゃんと崩してゴールを決めろ」と言っていたんだと本人も言っていました。その後、湘南戦で無事に初ゴールを流れの中で決めることができました。今後の活躍に期待したいです。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

スランプと陥った柏木は調子を取り戻しつつある。

椛沢:柏木は一時期調子が悪かったですが、少しずつ調子が上向いてきました。

河合:「沈まぬ太陽」というコラムを悩んで書きましたが、落ち込んでいる選手に対して書くのはどうなんだろうと悩んだけども、柏木選手の気持ちをわかってもらいたいと思って書かせて頂きました。あの時に比べるとだいぶ戻ってきたと思います。柏木自身も「ミシャさんが監督でなければとっくに外されている」と言っていました。全北戦のアウェーの前には「自分が出ないほうが良いんじゃないか」というくらい自信を失って、敵がいるからパスを出しちゃいけないと思ってもパスを出していると言っていた。それを聞いた時に、以前レーサーの片山右京さんと星野一義さんを取材した時に同じ話をしてくれたことがあって、カーブのコーナリングの時により早く曲がるために、あと1ミリガードレール寄りにと思っていて、調子が良い時はコーナーに入る前にコースが見えて曲がれる。しかし調子が悪いとコーナーが迫ってきて、このままだとぶつかると思っていても、ハンドルが切れずに吸い込まれるように激突してしまうという話を思い出した。人間には、意識をし過ぎてしまって、頭で分かっていてもやってしまうことがある。柏木選手も、自分がもっとゲームコントロールをして、楔を入れないといけないとか、意識をしすぎて悪い方向へと進んでいってしまったのだと思う。

椛沢:チーム状態が良い中で、どうして、そこまで自分を追い込むことになってしまったのでしょうか。

河合:チームの調子が良いからこそ、皆が良いから自分も頑張ってやらないといけないと思ったのかもしれない。周りからどうしたの?といわれても自分がどうしたのか分からない。視野が狭くなって、サッカーが楽しくないという状況だったようです。私も、一生懸命切り替えてやるしかないと伝えても「俺はネガティブ思考だからさ・・・」という感じだったのだけれども、なんとかポジティブに何かを考えるということで解消をしてきた。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

森脇は今までのレッズにはいないタイプのイジられキャラクター

椛沢:森脇は全く別のキャラクターですが、如何でしょうか。

河合:彼は気持ちが入った時のプレーは、すごく良いということは、大宮戦と広州戦で見えた。しかし時々軽いプレーが見られる。プレーに安定感が出てくれば良いと思う。関口が言っていたんだけど「僕の後ろには森脇さんがいて、振り返ると顔が大きくてリラックスすると(笑)」。彼は周りに安心感を与えられるのかもしれない(笑)。

椛沢:彼が入ったことで攻撃的なサッカーが出来るようになった部分はありますね。特にビルドアップの部分で彼の位置からもスムーズに繋げられるようになったのは大きな武器です。

河合:梅崎も森脇も上がってしまって、その裏が甘くなって狙われてしまうところがあるとバランスが崩れてしまう。そこは注意をしてもらいたい部分だね。

椛沢:キャラクター的にはどうでしょうか。

河合:とにかく彼の話は長いよ。声もでかいし、ただ嘘はつけないタイプだと思う。チーム内ではイジられキャラです。森脇自身がイジって、イジってとなると、誰もイジらない。そんなキャラクターです(笑)。

椛沢:誕生日の試合でゴールを決めた後の試合後でも、ハッピーバースデーの歌を歌ってくれとサポーターに要求しても逆にブーイングをされて、しょんぼり帰っていこうとしたら、サポーターが歌を歌い。それに喜んで、また引き返してきたらブーイングをされると、あの時の感じがまさに森脇のキャラクターなんでしょうね(笑)。

河合:あのブーイングは嬉しかったそうだよ。「なんでブーイングされなきゃいけないんですかね?」と言いながら、顔はめちゃくちゃ嬉しそうだった。でも実は本人は傷ついている部分もあると思うよ(笑)。ただ、ハッピーバースデーの歌を歌ってもらってすごく嬉しかったですといっていた。あのキャラは今までのレッズにはいないキャラだね。今までのイジられキャラだとアレックス。でも彼とは全然違うタイプ。すべって、すべって、すべる、お笑いタレントのようだね。非常に良いキャラクターをしているので、あとはプレーでしっかり安定感のあるプレーを求めたい。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

加藤の特長であるフィードが安定をしない

椛沢:ひとつ心配な部分ですと、加藤順大のプレーが安定しません。シュートストップにおいては、集中力がありますが、彼が得意としているはずのフィードが安定していません。

河合:アウェーでの大分戦で、順大が永田にパスを出して、それを相手に奪われて失点をした場面。私は、一本のミスから崩れたんだと思う。一時期は、どこに出して良いか分からず、相手に奪われそうになるシーンもあったけども、啓太がボールを受けられるように顔を出してくれるようになって解消をした。加藤には後ろからのゲームのコントロールを自分は出来るんだという自信を取り戻して欲しい。

椛沢:良いリズムで来ているときに流れを乗り切れない要因のひとつではあったと思います。順大がビルドアップの起点だから、相手にコースを切られているということもあるのかもしれないですね。

河合:それはあるだろうね。受けて側が潰されていていることもあると思う。単純なミスは防げるところだから、ちょっとリズムに乗れていない選手がいたら、他の選手がカバーをしてあげる。楽にパスが受けられるように、動いて顔を出してあげることを意識して欲しい。

椛沢:相手をひきつけるプレーをするところもあるので、わざとリスクを冒して、チャンスを作るということもあるから、危ないところになぜ出すんだという人もいるけれども、それは狙いなところもあると思います。

河合:そこは駆け引きの部分があるからね。そこは難しいところもある。

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椛沢
:成長を感じる選手としては宇賀神もいます。最近は攻撃面での活躍が少なくなってきているようにも見えますが。

河合:その分、守備で目立っている。守備に課題があるといわれていた選手が成長をしているんだよね。槙野は「振り向けば宇賀が後ろにいてくれる」と話をしていて、そうしたら宇賀が「僕が気を遣って後ろにいるんですよ!」と怒っていた(笑)。宇賀神と槙野が上がった時は、阿部ちゃんが下がってフォローをしている時もある。そこでバランスはうまく取れている。宇賀には、もう少しセンタリングの精度を上げて欲しいのと、もう少し積極的にプレーをして欲しい。最近は打てる時に、槙野に戻したりしている。そんな宇賀を私は見たくない!ブロックが出来ている所に闇雲に打ってもしょうがないけれども、もっと積極的なイケイケな宇賀が見たい。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

直輝、矢島、小島、岡本。若手選手の突き上げに期待。

椛沢:左サイドで、宇賀神と槙野が積極的な攻撃をもっと見せてくれたら相手は怖いでしょうね。若手の中では、調理離脱をしている山田直輝の状況は如何でしょうか。

河合:直輝はようやくスパイクを履いてボールを蹴りだした。取材をしていても「僕のこと忘れないでね・・・」と寂しそうにしていたけれども、ずいぶん明るくなったと思う。

椛沢:直輝がシャドーに入ると彼は仕掛けられる選手なので、面白い存在になる気がします。

河合:直輝と元気の2シャドーみたいね!柏木、マルシオ、梅崎もいる中で激しい競争になるだろうけども、直輝の復活は楽しみだね。

椛沢:矢島はどうでしょうか。

河合:見ていて面白いのは、矢島がミニゲーム中に良いパフォーマンスをサブ組で見せるとベンチに入る。ちょっとでもパフォーマンスが悪いとベンチに入らない。そこはミシャさんしっかりと見ていると思うから、しっかりとアピールをし続けて欲しい。

椛沢:小島秀仁はどうでしょうか。

河合:まだチャンスがなくて、本人が一番苦しんでいるとは思う。でも、小島はメンタル的に強い子だから大丈夫だと思う。

椛沢:同じプラチナ世代の岡本拓也はどうでしょうか。

河合:紅白戦をやっている時にメンバーに入れない選手がいるわけだけども、岡本は入れる時もあるし、入れない時もある。私は悪くはないと思うけどね。ストッパーの位置でプレーをしていますが、どこかでチャンスは回ってくると思う。彼は練習を見ていても1対1が強くて激しい。前にコラムで狼と評したけども、狙った獲物は逃がさないという感じのプレーをしている。課題はフィードの部分だと思う。ミシャさんは、まだ若いということで焦らずにいこうということだと思う。このあたりの若手が伸びてきてくれないと、けが人も出てきている中で苦しくなってくるので、奮起を期待したい。

椛沢:これから中盤戦に入っていきますが、レッズに対しての期待の言葉を最後にお願いします。

河合:上を目指して一歩一歩行こう!浦和レッズのつぼみは、一部くらい咲いたんだけど、そこからまだ変わらないね。広州戦の勝利は大きかったので、精神面の成長が見えたのではないかとミシャさんに聞いたら、その評価はまだ早い。大宮戦のあとに見せた広州戦での良いパフォーマンスの後に、清水戦で広州戦と同じようにプレーが出来たら成長したと言えるだろうと言っていた。今後は、引いて守ってくる相手をどうするかというのも課題のひとつになってくると思う。

(2013年4月、浦和にて)

清水戦には敗戦を喫してしまい、精神面での成長が見えるとは言えない結果となってしまった。セレッソ戦では復帰した原口元気のスーパーゴールなどで勝利に近付くものの勝ちを寸前にしての引き分けと課題は見えている。ミシャサッカーはまだ成長曲線を描いている段階。たかねえが言うとおり、一歩一歩階段を登っていくしかない。

Photo by(C)Kazuyoshi Shimizu

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