浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.147 (7/12)

中断明けの連戦、甲府、FC東京戦。「フットボールは誰のものなのか」

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:一気に梅雨明けが宣言されて夏に突入。猛暑の中で選手にとってもサポーターにとっても過酷な季節がやってきました(苦笑)。まずは先週末の甲府戦から。甲府はレッズサポーターの動員を期待して、国立競技場でのホーム開催を選択してくれたので、ほぼホームのような雰囲気でのゲームとなりました。収入を考えての判断ということですが、ホームタウン制度を大事にするJリーグの理念を考えると如何なものかという気がします。Jリーグが盛り上がらないと言っている今、このようなことを大事にするべきではないでしょうか。

豊田:同業者の中に都内ヴァンフォーレサポーターがいて、彼らも国立で同席していました。「交通の便も敵の方が良いし、ここで開催しちゃあ甲府ホームが作れるわけがない。こうなる(客席動員の浦和優勢)ことは分かっているけど仕方ないんでしょうね」と、歯切れの悪い感想でした。浦和サイドが戦いやすいことは嬉しいが、まあ諸条件をクリアしてもらってアウェー戦はきっちり敵地の空気を感じたい思いも強いです。かつてレッズとその支持者だって同じ情況だったし、山梨は韮崎を中心に根づいたサッカー土壌を持ってるエリアでヒデ(中田英寿)の故郷でもある。地元の支持者が手弁当でクラブ存続を訴えた歴史も考えると、早く満員の敵地・中銀スタジアムでレッズ戦を観たいです。

椛沢:試合は、レッズをリスペクトし過ぎるくらいにリスペクトしたサッカーを展開して守りを固め続ける甲府に対して、攻略の糸を見出せないまま、試合時間が経過していく展開となりました。スコアレスドローで終わってもおかしくない試合を勝利に導いたのは、那須大亮でした。「80分過ぎに俺が決めようと思っていた」という強い気持ちで、最終ラインからオーバーラップを仕掛けて、梅崎のクロスを得意のヘディングで決めて、これが決勝点になりました。彼の存在は日に日に頼もしくなっています。

豊田:まさに均衡をぶち破る豪快ヘッドでした。いまや彼はマリノス時代を上回る、プレーヤーとしての最高の充実期を迎えているのではないでしょうか。啓太が出られなかったアテネ五輪予選リーグのパラグアイ戦の痛い失点シーンがこびりついていたのだが、これはもう那須選手に謝るしかないです。赤いユニフォームもすごくサマになってきている。夏場の膠着状態を切りひらくこの決定力の収穫は本当に大きいと言えるでしょう。

椛沢:試合後には、無数のメッセージが書かれた横断幕が掲出をされました。試合の二日後に行われるJリーグ実行委員会での2ステージ制導入に対する反対のメッセージでした。「世界基準からかけ離れた2ステージ制へ そこに日本サッカーの未来はあるの?」「大切なのは金かFOOTBALLか」「歴史に傷つけるふざけた策に徹底してNO!」などなど、各々の想いを込めたメッセージが掲出をされました。火曜日に行われた会議では、審議持ち越しになった模様で、来季からの早期導入は見送られた形になったようです。Jリーグが右肩下がりに数字が落ちている中で変化をしなければならないという考えは分かりますが、安易に収入が入る構造だからと今まで創り上げてきたレギュレーションを変化させるのは如何なものかと思います。しっかりと議論をした中で、何がJリーグにとって大切なのか、これはサポーターも含めて考えていかないといけない話だと思います。

豊田:火曜日は猛暑のさなかでしたが会議会場外までメッセージを運び、決定の成り行きを見守った有志たちがいたとか。思いがなければ出来る活動ではありません。こういう恣意行動まで行き着くボルテージを示すことに、サポーターという存在の意義があるんですね。監督・選手や幹部の解任要求に限りません。南米にしろ欧州にしろ、長い歴史の中では構造的におこるサッカー周辺の停滞というものは必ず起こります。そこで支持者たちはスタンドの発声だけでなく、ネットのつぶやきでもなく、顔と身体というメッセージメディアをさらした実行動を起すわけです。「フットボールは誰のものか」……この言葉は多くのサッカー愛好者によって継承されて来たメッセージで、世界中のホームタウンで色あせることがありません。

椛沢:ミッドウィークには、FC東京戦が埼玉スタジアムで行われました。こちらもナイトゲームでしたが、キックオフ時には30度と蒸し暑い環境下での厳しい試合となりました。このような環境下になると先制点を奪われてしまうと非情に厳しい試合展開を強いられます。先制点を奪われてから、追いかける形になり、完全にFC東京にペースを握られてしまいます。さらに後半には同点に追いつこうと攻め入った所にカウンターを食らい、追加点を許します。連戦、暑さも加わり、足が動かないレッズイレブン。負け試合の様相も呈してきました。

豊田:立ち上がりから前半半ばまでが緩かった。啓太、阿部、柏木と展開と供給の起点をチェックされ、そこからの出ダマを潰したら一気にスイッチオンという流れを作られていました。相手の意識共有が上回っていたとはいえ、後がない最後尾の1対1でやたらと赤い守備網が振りちぎられる場面が多くて歯がゆかったです。先制の失点はコースが変わるアンラッキーもあったけど、適応力を見せたポポビッチ監督の対レッズ戦略は東京イレブンの中で徹底されていたと思います。

椛沢:しかし、そのケツをゴール裏が叩きます。まだ巻き返せというメッセージを込めた「アレ浦和」が発せられると徐々にレッズが流れを掴みます。そして81分に興梠が相手DFをターンで交わして追撃の得点。スタンドのムードも最高潮になり、イケイケの雰囲気の中、86分には、原口が左サイドからドリブルで仕掛けて、最後は左足での見事なシュートを決めて、同点。さらに逆転ゴールを求めて、ゴール裏からは大音量の「PRIDE OF URAWA」が歌われますが、最後の1点は決まらず、ドロー。負け試合を引き分けに持ち込んだとも言えますし、負け試合になりそうな試合展開になるまでに、もっと違う試合展開が出来なかったのかという思いもあります。大事なことは、この勝ち点1を次にどう繋げていくかということだと思います。まだ連戦は続きます。川崎、横浜、この2戦を勝利してこそ、この勝ち点1の価値が出てきます。

豊田:8割がたの時間帯までは、東京のプランどおりのゲームを許してしまいましたからね。交代采配にも明暗はありました。ミシャが追撃のカードを立て続けで切ったのに対し、東京があそこで東慶悟選手を下げてくれたのは助かった気がします。フィニッシャーのルーカスより、前がかりになったレッズの連携を読みとパワーで切ってくる東の方が脅威だったから。浦和の2ゴールはともに一発必中のコース。さすがの決定力を感じたけれど、中身は負けゲームだったかも。熱帯夜にめげないホームの後押しに乗ってよく追いついてくれたと思います。

椛沢:今週末は、敵地等々力に乗り込んでの川崎フロンターレ戦です。連戦で苦しい時こそ、声援でレッズを後押ししていきましょう。

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