浦和フットボール通信

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【This Week】週刊フットボールトーク Vol.159 (10/3)

今季をかける一戦、さいたまダービー

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末の敵地に乗り込んでの湘南ベルマーレ戦は、試合前からチケット完売となり、アウェイ側も真っ赤に染めたレッズサポーターに対して、J1残留を果たすために落とせない湘南サポーターもコレオグラフィーで選手達を盛り立てて、最高潮の雰囲気での試合となりました。試合は、甲府戦に続く引き分けに終わり、勝ち点1。下位チームを相手に勝ち点2を失ったという考え方が普通ですが、上位との勝ち点差が開いていないので、なんとか追いついて、勝ち点1を得たことが最終的に繋がってくるかもしれません。

豊田:いちばん長く浦和レッズを見守っているのはサポーターなのです。経験に照らして、リーグ終盤までチャンピオン争いに加わるチャンスなんてそうそう無いことは分かっている。私にまでチケット問合せが来る状況ですからね。レッズのタイトルを待つホームタウンの意識は充満していたと思います。

椛沢:試合は、前半18分にコーナーキックから槙野が先制点を決めて、良い形で試合に入りました。ボランチには啓太が戻り、バランスを取り戻した感はありますが、追加点をなかなか奪うことが出来ませんでした。全力のハードワークで向かってくる湘南に対して、やれるという隙を徐々に与えてしまったように思えます。押し込まれた時に、ラインが下がって跳ね返すだけになってきた時に、今の浦和は守りきるだけの術がありません。苦しい展開が続き、足が止まって、PKで同点にされると、立て続けに逆転を許す苦しい展開になります。苦しい時間帯の際に、ピッチにいる選手達もスタンドのサポーターももっと余裕をもって構えるくらいの姿勢が今後求められます。

豊田:舞台設定の緊迫感に反し、ピッチ上ではレッズ相手に残留力を見せる湘南の意地に押される場面が目につきました。編集長の言う余裕という面で考えれば、やはりボールキープの軸になる「ボールを呼び込む動き」が全員に徹底されないとペースが変えられないのでは? カードを食らう場面もあったが、FC東京で活躍を見せた大竹洋平選手を筆頭にベルマーレのチェイシングには速さも持続力も感じました。

椛沢:逆転されてから、レッズの選手たちも意地をみせて同点への勢いを見せます。ある意味、「ここで負けてしまえば優勝もなくなる」という気持ちが選手にもあったのかもしれません。失うものがなくなり、思いっきりプレーできる時間帯が最後の部分だったのかもしれません。浦和の得意の形である、中央の連動から、柏木がロスタイムに同点ゴールを決めて、試合は終了。重苦しい雰囲気で試合が終わりました。しかし、この経験で選手達が何を考えるか、どう自分たちが戦い抜くのかを考えるきっかけにして、戦うことが出来れば、残り7試合に繋がってくるかと思います。

豊田:1ポイントのゲットを前向きに捉えたい。勝負どころをチームで共有する意思連動の遅さは不満ですが、追いつけなかったらダメージは決定的でしたから。

椛沢:チームがもたつく最中ですが、クラブから来季もミハイロ・ペトロヴィッチ体制を継続させるというアナウンスがありました。ミシャは3年目に入り、ブッフバルトに継ぐ、長期体制になるとのことです。3年目で長期体制というのも、今までの浦和を表していますが……(苦笑)。ミシャのサッカーをベースとしてURAWAらしいサッカーの構築を目指してもらいたいと思います。そのためにはクラブもビジョンを示す時期が来ているかと思います。

豊田:順位逆転の可能性を持つ直接対決、もしくは低迷を続けてきた下位チームとのホーム戦……こういうカードはレッズばかりではなく、どのクラブにとっても正念場なのです。シーズン途中で成果を問えない背景はありますが、実際のところ編集長以下サポーティング中枢にいる人たちは、レッズに昨季からの成長を感じているのでしょうか?

椛沢:2011年の残留争いを経て、ミシャの下で、少しずつサッカーのベースアップはしてきているという意味では、昨季からの成長はあると感じます。ただ、頂点を目指すために必要な段階までには物足りないと思える部分があるのも事実です。

豊田:実は市内で地元実業会のベテラン幹部たちとお会いする機会がありました。ビジネス軸の交歓会だったのですが、今季のレッズとアルディージャの盛衰、また2ステージ制移行なども含めて個人的な意見具申もいただきました。中でも「素人目に見ても浦和と大宮が現在の順位にいるリーグのレベルに疑問を感じる。そんなJの環境下、レッズはサポーターも含めて“中位力”に甘んじる流れに陥っているのでは?」という指摘はこたえましたね。藤枝のご出身で現在は浦和区在住。たまたま私が住む町内の青少年部の幹部を勤めた方で長谷部誠選手の大先輩なのですが……。

椛沢:URAWAのライバルである藤枝ご出身であるからこそ、浦和サッカーとして、あるべき姿を案じられているということでしょうか。浦和サッカーとして強くあるべきだという姿勢は持ち続けるべきでしょう。この問題は当然継続してクラブはもちろんホームタウンにも質していきたいと思います。さて“国立”が東京五輪に向けて改修される中で、“選手権”の決勝と天皇杯決勝を誘致するというニュースもはいってきました。新しい国立競技場はサッカー専用にも変化する国内最大のスタジアムになりますから、今から埼スタの立ち位置を作っていかないと、「サッカーは埼スタ」というイメージを奪われてしまいかねません。甲子園のように選手権も、埼スタ一極開催に誘致することが出来れば、街の盛り上がりにも波及すると思うのですが。そうなれば、野球は甲子「園」、ラグビーは花「園」、サッカーは美「園」ということが出来る(笑)

豊田:その手のセンスはスルーさせてもらいますが(笑)、当然そうありたい。国立には古くからのアマチュア時代の日本サッカー史が蓄えられています。時代がプロフットボール時代へと移った現在は、あるべき指標はこのURAWAから発信されることを願って止みません。そのためにも私たちはレッズの明日には他人任せではない意志発信の備えを持ち続けることが肝要と思います。

椛沢:良いタイミングで、次節は『さいたまダービー』の大宮戦です。大宮も前節大敗を喫して、ある意味このダービーの一戦にかけて思いっきり戦ってくるでしょう。恐れずに勝利を貪欲に目指せるか、毎回言っている言葉になってしまいますが、ダービーはその勝負になってくると思います。既にチケットも45,000枚が発券されているということで、最高の雰囲気を作って、大事な、大事なダービーの一戦を迎えましょう。この試合が、今季のこの後の展開を左右する試合になってくると断言しましょう。

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