浦和フットボール通信

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河合貴子×椛沢佑一 浦和レッズ2014ライブディスカッション 「勝つためには割り切ったサッカーも必要ではないか」(2014/8/26)

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レッズ密着取材を続ける河合貴子氏に、本誌・椛沢編集長が浦和レッズの現状や選手達の思いを訊く「レッズ2014ライブディスカッション」。リーグ前半戦を首位で折り返し、ワールドカップ中断明けの数試合を戦った、浦和レッズの現状について、河合さんにお話を訊いた。(浦和フットボール通信編集部)

無失点記録も作った前半戦

椛沢:ここまでを振り返ると、中断前は首位で折り返し、7試合連続となるリーグ無失点記録も作りました。

河合:無失点記録はすごかったね。

椛沢:去年、あれだけ失点をしたチームが、ここから失点が減ったというのはすごい現象ですよね。それには西川の存在感も大きいですし、ミシャ監督も去年失点が多いと言われたと相当意識をして挑んだシーズンだということもあって、守備意識が高くなっているように思えます。

河合:無失点の部分でも守備の構築、前からはめ込む守備としっかりとブロックを形成する守備のメリハリができてきた。行く、行かないという統一意識が出来てきているけれども、試合の90分のうちにずっと継続できているかというと、試合の展開によって、出来ない時間も出てきている。その時は西川のスーパーセーブが出る。あれはすごいね。前から追ってくれてコースを限定してくれるから、リスクマネジメントをしやすいという部分もあると思うから、西川だけの功績というわけではないと思うけども。

椛沢:守備の部分においても、継続した成果があるのでしょうか。課題があったのが出来るようになったということもあるように思えます。

河合:それは当然あると思う。ミシャさん的には、去年は攻撃重心に置いて、得点を多くするようになったけれども、失点も多くした。そうしたら失点が多いといわれる。今度は失点が減って、得点が減ると攻撃だね、といわれる。それが気に食わないところはあるみたいね。

椛沢:福田さんが、スカパーの試合後インタビューで、ミシャさんに「イタリアのサッカーでしたね」と意地悪そうに言葉をぶつけたら、露骨に嫌そうな顔をしていましたからね(笑)。

河合:ずいぶん前に、ユーロの大会でイタリア代表が可変的ディフェンスをしていた時に、これはレッズが目指すディフェンスなのかとミシャさんに聞いたら、イタリア代表がやっているディフェンスよりも、もっと進化するものを見せると言っていたからね。少しは進化をしていると思う。

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負けないサッカーを展開すると割り切っても良いのではないか

椛沢:川崎戦を見ていても、2失点はしましたけど、これまでの試合よりも川崎相手に守れるようになったかなという所も感じる部分もありました。

河合:あの試合では柏木が、すごく怒っていたんだよね。

椛沢:レッズは蹴るようになったと相手から言われている。ボールが入らないようになってきている、と怒っていたそうですね。楔をいれるのが怖くなっているのでしょうか。

河合:入れる、入れないという判断はすごく良くなってきていると思う。入れてダメだったら、もう一回ディフェンスラインに戻して、揺さぶりをかけて逆サイドに展開をするとか。縦パスだけではないやり方が出来てきていると思う。柏木が言っていたのは、「単調な攻めが多すぎる。楔を入れて、サイドとか、裏があるとか、パスのチョイスを増やすことをもっとしていかないといけない。出し入れの部分で、出て戻ってということをもっとやらないといけないし、最近、ボールを奪うとロングボールばかり蹴って、単調だと言われるのが悔しい」と。「相手に下げさせて、後半攻めに重きを置いても、守備の部分で疲れて戻れないことがある。」と言っていた。

椛沢:攻撃にシフトした時に、前掛かりになるばかりにカウンターを食らう場面が出てきますね。

河合:それでも良い時は攻めがシュートで終わる。それであれば戻る時間がある。ゴールライン際まで、槙野がえぐって、マイナスボールを入れて、それがシュートで終わらなければ、槙野が上がったスペースを上手く使われたり、森脇が上がったスペースを使われる。それが、あの川崎戦だった。槙野が上がった時に、宇賀神が槙野のポジションを埋めている。良い時は宇賀神も前線に加わって、阿部ちゃんなり、ボランチの選手が埋めていた。その部分で攻撃の迫力も少しなくなっている。あと陽介が言っていたのは「上がって戻れないなら上がるな」と。

椛沢:それはおっしゃるとおりです(笑)。連勝していた時は槙野が上がることも少なくて、バランスが取れていたように思えます。

河合:負けていて、点を獲りに行く時が問題になる。

椛沢:槙野が上がらないと点が取れないんですかね。

河合:槙野は責任感が強くあるので、俺が攻撃に参加して、という気持ちがある。確かに相手からしてもディフェンスラインから上がられると嫌だとは思う。

椛沢:槙野の攻撃参加は有効だと思いますが、それは1試合の内に1回か2回で充分なんじゃないでしょうかね。それが、「上がるなら戻れ」という言葉になるのだと思います。

河合:もっと突き詰めて言いたいのは、攻めに転じた時にラストパスやシュートの精度。そこだと思う。

椛沢:やり切れれば問題はないですからね。

河合:やり切れるようなクロス、パス、シュートが大事になってくる。やり切れなかったら、余裕をもって戻して、バランスを整える。

椛沢:連勝をした時は、点を先にとって、しっかり戻るという形で、リスクをかける必要がなかったと思います。

河合:だから、点が取れなかったりした時に、どのようにリスクマネジメントをして、バランスを崩して点を獲りに行くのかということが問題になるんだと思う。

椛沢:中断を明けてから、先制しているのに、追いつかれて逆転をされているという場面も増えてきているのも気になる部分です。

河合:それは2点目を獲らないといけないという気持ちが出ているからかもしれない。

椛沢:それもあるのか、あとは暑さなのか、守りがすこし緩くなってきているのかなと感じるところもあります。

河合:点を獲った後が問題だよね。陽介は、広島に勝てれば流れが変わると言っていたけれども。

椛沢:1-0、1-0で勝っていった時に、点が入らないと言われるのがプレッシャーになっているところがあるんでしょうかね。

河合:それはあるかもね。陽介は残り15試合を10勝5分けで行くと、言っていた。俺は負けず嫌いだから負けたくないと。負けなければ俺たちが優勝すると。言いすぎというならば、8勝7分けで良いと。

椛沢:そう考えると、面白いサッカーを下手に目指さないで、負けないサッカーをすると割り切ってしまっても良いのかもしれないですね。

河合:優勝したいなら、それでも良いのかもね。もう1回中断前の感じを取り戻しても良いかもしれない。槙野も森脇も点を獲るためにいくからバランスが崩れてしまう。

椛沢:あなた達はしっかり守っていてくださいと。前がしっかり点を獲るからと、という流れになればリスクを犯してプレーをする必要がなくなるかとは思います。

河合:そうなると前からプレッシャーをかけないで、全体的にブロックを形成する時間を長くなるのかもしれない。その時に押し込まれてもズルズル下がらないこと。

椛沢:連勝している時はその部分でのメリハリがうまく出来ていましたよね。

河合:その中で、柏木がすごいなと思うのは、足が遅いのに一生懸命ディフェンスをする。ポジショニングを良くして、一歩先に出ようという意識の高さがあって、彼が守備のスイッチを入れている。

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中断明けは相手が研究をしてきているので工夫が必要

河合:中断明けから、すごく感じるのはどのチームも研究をしているなということ。どのチームも、とにかく興梠を潰そうとしている。

椛沢:それでも興梠は仕事が出来ているからすごい。それでも相手に研究をされているせいもあるのか、チーム全体的に、中断前と明けで雰囲気が変わったようなことがありますよね。

河合:研究されているということと、無失点記録が樹立されて、点も獲りたいという気持ちが出てきているのか。一番失点でやられたくないのは、相手に崩れて失点をした時は仕方ないと思えるけれども、相手のカウンターとセットプレイ。これは絶対に防げるものだから。これは防がないといけない。

椛沢:中断前は、しっかり守ることが出来て、相手に抜かれた時も西川が止めてくれた。中断明けはそのシーンも増えてきている。

河合:失点をしていても西川は常に切り替えていこうという雰囲気だった。川崎戦でも1失点目はまだ0-0と一緒だという雰囲気を出していたけども、後半、登里に1対1を作られたシーンで、西川が初めて怒っていた。しっかりと守備がついていなかったから。撃たせてはいけないところだった。

椛沢:中断あけてからの雰囲気が変わっているのが心配ですね。川崎で負けたのも、久しぶりの敗戦でした。

河合:昨シーズンボコボコにされた相手だったら、凹む必要はないけども。

椛沢:川崎には勝てないなという感じはありましたね。

河合:でもそのために、勝つために、やり方を変えてというのは違うでしょう。

椛沢:もちろん、そうは思いません。川崎戦は鼻さの勝負だったとも思います。簡単に言えば勝負弱かったなと。後半の李のゴールが決まれば浦和が勝っただろうし、どっちに転んでもおかしくはなかったと思います。

河合:関口が出てきて、少しリズムが変わった。それでも今日の練習で「負けたのは、ぼくのせいです」と、すごく責任を感じていて、クロスの精度の部分もそうだし、森脇が奪われたあとのリスクマネジメントが出来ていなかったと。すごい責任を感じていたけども、あなたのせいじゃないよと言いたかった。

椛沢:そのくらい立場が微妙だから、ポジションがなくなるという危機感があるのかもしれないですね。

河合:その悔しさでやってくれるんじゃないかという期待がある。練習を見ていてもすごく良いから。川崎が終わった後の練習では、攻撃の組み立ての練習に見えるけれども、もうひとつは3バックの守備にもなっていた。数的不利な状況で、3対2でディフェンスラインをゴールラインから25メートルくらいの所において、3人がコンビネーションで崩していく。その3人はトライアングルを作って流動的に動く形。これは、攻撃の練習でもあるけれども守備の練習でもあるなと思った。その後は、ディフェンダーを3人置いて、さらにGKも置いて、守りはGKを入れて4人。攻撃は3人という形にしていた。楔のパスにはディフェンスがしっかりと潰しに行く。攻撃陣はパスを動かしながら獲られないようにして、6個目のパスまでにはスペースをみつけて、ディフェンスの裏を突く。それが出来なければ後ろに下げると。6個のパスまでに相手を崩す動きをしなさいと。ミシャさんは身体を使いながら、どうやったらディフェンダーから外せるか、裏を取れるかということを激アツで指導をしていた。逆にディフェンダー陣は裏を取らせないためには、どうすれば良いかを考えてプレーをする必要があった。上下の繰り返しによってゴールに向かう身体の向きを意識してやっていると感じた。逆に守備はうまくスペースを消したり、3対3の時はマンツーマン気味になるので、引っ張られて相手についていくのか、ボールサイドに2枚いくのか、そこをすごくやっていた。良い練習だった。

椛沢:レッズの攻撃は前のトライアングルのコンビネーションで、点が入るかどうか、ここで点が取れれば、槙野が敢えてバランスを崩して点を獲りにいく必要がなくなる。

河合:そこは行く、行かないの判断だよね。今は行っても良い時、悪い時ということがあると思う。そしてシュートで終わること。中断前までは良いやり方が出来ていたけども、中断明けから落ちた部分があったのは確かだね。

椛沢:ある意味、ミシャさんっぽいサッカーになってきたのかなと。無失点をしていた時はミシャさんのサッカーではないんだろうなと。わざとバランスを崩して相手を混乱させるサッカーではあるでしょうから。

河合:先ほどのように、川崎戦の後の練習を見ると、しっかりと改善点が見えて、しっかり取り組めているなと思った。これが出せれば、広島戦でもよい結果が得られると思う。
広島が去年優勝できたのは、ストッパーのふたりが浦和のように上がらずに、しっかりブロックを作ることで安定した戦いをした。そこでボールを奪ってから、青山などのボランチが出ていく。浦和の場合はストッパーの槙野が上がるから、ボランチが下がる。最近のやり方は相手が分かってしまっているから、槙野が上がらない場合は、阿部ちゃんなどがもっと上がるシーンがあっても良いと思う。さらにボランチの選手が下がると、シャドーの選手も降りてこなくてはいけなくなる。

椛沢:最近は綺麗に崩したシーンが減ってきているように思えます。それは相手に読まれているからなんでしょうね。

河合:それはあると思う。だから、レッズがサイドでボールを持っても怖さがないのかなと思う。中を固めておけば良いだろうと。最後のコンビネーションの所で、さらに良いクロスが入ってくればチャンスが生まれるはず。

椛沢:データでも今年は右サイドの攻撃展開が増えているそうです。去年は左サイドが多かったそうですけども、それは槙野が起点になっていたからだと思いますけど、今年は右サイドで柏木の位置が起点となっているから、右サイドからの攻撃が増えているという、数値が出ているそうです。

<続く>

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