【河合貴子の試合レビュー】ACL第2戦 ブリスベン・ロアー戦<柏木、ズラタン、啓太、興梠、ペトロヴィッチ監督コメントあり>(2015/3/5)
2トップ採用もちくはぐの前半
春の訪れを告げるように、穏やかな天候に包まれた3月4日。ホーム開幕戦のACLグループリーグブリスベン戦は、天候とは裏腹に厳しいものとなった。ACL初戦を落とした両チームだけに、共に勝ち点は欲しい状況だった。
ACLグループリーグを突破するには、ホームでは絶対に負けられない浦和は、前日練習通り攻撃的な布陣で興梠慎三選手とズラタン選手の2トップにし、スピードもあり守備能力の高い加賀健一選手を右のワイドで起用して高い位置でボールを奪う姿勢を見せた。
しかし、試合の立ち上がり3分、トーマス・ブロイヒ選手のドリブルを柏木陽介選手が、一端はインターセプトするものの、そのこぼれ球をトーマス・ブロイヒ選手が再び拾い、右に走り込んだブランドン・ボレロ選手へ。ブランドン・ボレロ選手は迷わずニアサイドにシュートを放ち、ゴール。ファーストシュートが先制点となってしまった。
柏木陽介選手は「自分がボールをカットしたのに、置いてしまった」と失点シーンを振り返った。鈴木啓太選手は「早い時間帯に失点をした中で、相手のクオリティーもあるが、精神的にホームでやっている気持ちの部分で余裕を生んでしまった」と話した。 1点のビハインドを返そうと、ボールポゼションをしながら崩そうとするものの、前線にボールは収まらず攻撃のリズムも生まれずに閉塞感のある攻撃になってしまった。
慣れないポジションで戸惑う加賀選手は、30分に森脇良太選手とポジションチェンジをして落ち着きを取り戻した。前半に浦和が放ったシュートは僅かに2本であった。
ズラタン選手は「もう少しやれたと反省している。練習でも良かったから、上手く出来ると期待していたが、イメージ通り出来なかった。2トップで危険な攻撃が出来ず・・・。守備が近くて・・・。自分自身が、一番出来が悪かった。土曜日には、試合がある。また同じ思いはしたくない」と反省しながら必死に気持ちを切り替えていた。
後半システムを戻し勢いを取り戻すも追いつくことが出来ず。
トップ下を務めた柏木は「前線の3人は良い距離間で出来れば、よかった。相手のプレスに対して上手く行けなかった。相手が、前からプレスに来た時にDFの裏を狙ったがシュートまでいかなかった。慎三(興梠)と1トップ・2シャドーの方が良いと話していた。
後半、ファーメーションを変えたら嵌った」と話すように、後半はズランタン選手に替えて石原直樹選手、加賀選手に替えて梅崎司選手を投入し、通常の浦和のスタイルに戻した。 すると、ボールの収まりも良く47分には森脇良太選手が梅崎選手の折り返しで相手ゴールに襲いかかると、続く48分にも決定的なチャンスが興梠選手に訪れるも決められなかった。しかし浦和らしいリズムが生まれゴールへの期待感が膨らんだ。
だが、その直後、自らのミスをカバーしようとした那須大亮選手がアンドリア選手を後ろから倒し、得点機会阻止としてレッドカードで退場することとなってしまった。
鈴木選手は「1人少なくなって試合は難しくなったが、チャンスはあった。失点をしないように考えながらカウンターを狙って上手く行きそうな場面もあった。厳しい状況になったが、結果を見れば分かる。事実は変えられない。だが、何かを本当に掴み獲るには変えていかないといけない。メンタル的に自分たち自身にプレッシャーを掛ける!ピッチで結果を出す!」と悔しさを噛みしめながらも前を向いた。
前半から、前線で身体を張って攻撃の起点を作っていたのは、興梠選手であった。興梠選手は「まだ、試合勘はない。公式戦、初めてだったが、流れが止まらないようにボールを失わないようにと考えてやったが、ボールが収まり切れなった。後半、ワントップで押せ押せムードだったのに・・・。僕が決定機を決めていたら大ちゃん(那須選手)の退場も無かった。決め切れないところはコンディションがまだまだだ。苦しい闘いになったが、あと全部勝てば良いんだ!」と気持ちを切り替えていた。
ひとり少なくなった浦和だが、なんとか同点に追い付こうと83分には、鈴木選手に替えて李忠成選手を投入。試合終了間際には興梠選手のアーリークロスを李選手が頭で合わせるものの枠を捉えることが出来ず0-1と敗戦を喫した。
今日のワンポイント
2トップで攻撃の閉塞感がある中で、後半まで待たずにシステムを基に戻して良かったのではないだろうか?!試合後、ミシャ監督は「負けてはいけないゲームだった。立ち上がり0-1でリードされた。失点のショックなのか、不安定な状態でゲームが進んだ」と振り返った。 システム変更をしたことに関して「私自身が、前半スタートにミスをした。相手を分析して加賀をワイドで使ったが、思ったように行かなかった。私の頭の中でシミュレーションしたゲームと現実は違っていた。最初の失点が無ければ違った展開だった」と話した。
そして「選手たちは、良く闘った。非難をするなら私だ。選手は全力を尽くし、頑張って最後まで闘った。ブーイングは違う。私に向けるべきだ。選手たちは、ブーイングに値するプレーではない」と話した。 ならば、敢えて言わせて下さい。流れが悪くリズムが作れない時は、早めの決断を指揮官に求めたい。それが出来るのは、ミシャ監督しかいないのだから・・・。