【河合貴子の試合レビュー】ズラタン「自分自身のゴールだけでなく、勝ち点1に繋げたことが、一番の価値だ」Jリーグ1stステージ第5節 vs川崎フロンターレ<槙野、関根、武藤、ズラタン、ミシャ監督コメントあり>(2014/4/13)
鬼門の川崎で貴重な勝ち点1を獲得!
メインスタンドの改修工事が終わり、生まれ変わった等々力陸上競技場のアウェイ席は、真っ赤に染まっていた。ほぼ満席の2万4,992人が最後の笛が鳴るまで試合の行方を熱く見守った。
試合前日練習で好調だったズラタン選手をミシャ監督は、スタメンで起用。前線は、シャドーに石原直樹選手と高木俊幸選手とズラタン選手のトライアングルでスタートした。
試合の立ち上がりは、お互い相手の様子を覗うようなゲームの入りであったが、徐々に川崎が主導権を握り始めた。川崎は、攻守の切り替えが早く変則的な守備でブロックを作り、セカンドボールを拾うと小気味良いパスワークでゲームをコントロールして行った。19分、GKとDFの間を狙った車屋紳太郎選手の鋭いクロスのこぼれ球を中村憲吾選手が狙い、続く21分には、中村選手の縦パスに抜け出した森谷賢太郎選手シュートはいずれも枠を外れ、24分には車屋選手のクロスに合わせたエウニーニョ選手のシュートは身体をはった浦和のDF陣が止め、浦和にとっては自陣に押し込まれる苦しい展開が続いた。
槙野「ボールを持たせているという感覚でやっていた」
槙野智章選手は「(大久保)嘉人とレナトが前掛りになった所を狙っていた。川崎のボールの動かし方は褒めるけど、相手にボールを持たせているという感覚でブロックを作りやっていた。正直、試合のイニシアチブが取れると思っていたが・・・。相手にボールを持たして、奪ってカウンターが狙えると思ってやっていた」と川崎に主導権を握られていても焦りは無かった。
ミシャ監督も「過去の対戦で、相手を内容で上回りながら、常に負けて来た。主導権を握りながら攻撃を仕掛け、前掛りになったところで、カウンターを受けて失点を重ねるのが過去の闘いだった。その教訓から、ハーフラインあたりまで、前の選手をリトリートさせ、相手の攻撃を待つ形で奪ってカウンター狙いだった」とゲームプランを話した。確かに、大久保嘉人選手やレナト選手に危険なシーンを作られるスペースを与えなかったが、ボールを奪う位置が低過ぎて前に出て行くには厳しい状況であった。
31分、関根貴大選手が右サイドをドリブルで切れ込みクロスを上げてCKを得た。高木選手の右CKをファーサイドで槙野選手が頭で合わすもゴールネットを揺らすことが出来なかった。そして35分、レナト選手からパスをもらった車屋選手が関根選手と競り合いながらドリブルで強引にゴールライン際まで突破し、グランダーのクロスを折り返すと森谷選手が丁寧に合わせて先制点を許してしまった。
槙野選手は「人数が中に揃っていただけに、勿体無い失点だった」と悔しがった。車屋選手との1対1の場面で負けた関根選手は「チームとして引き分けで終われたのは良かったが、個人としては悔しい。ダメなところはダメでしょ!!マッチアップになると(車屋選手)思っていたし、良い選手なので警戒していた。一瞬の隙で抜かれた。自分の実力の無さだ。タイミングを上手く外して、前に身体を入れたかった。チームとしてももっと声を掛けながらやれたら、楽に守れた。コンスタントに試合に出られていて、コンディションは良かっただけに、だからこそ悔しい」と話した。関根選手は、悔しさで今夜は眠れない様子であった。
1点を追う浦和は、なかなか相手を崩すことも出来ず、後半に望みをかけて前半を0-1で折り返した。
「1点リードされているが、我慢すること。必ずチャンスは来る。後半、運動量を上げて行こう」とハーフタイムにミシャ監督から指示を受け、気持ちを切り替え後半に臨んだが、川崎の中盤3選手の連動的な動きからのパスワークを止めることが出来ないでいた。
57分には大久保選手が浦和のバックパスを狙ってプレスを掛けるも、西川周作選手が軽く足技で交わして落ちついたプレーを見せた。少しづつリズムを掴み始めた62分、相手DFともつれ合いながら倒れた石原選手が右膝を負傷。代わって武藤雄樹選手がピッチに送り込まれた。
ズラタン「自分自身のゴールだけでなく、勝ち点1に繋げたことが、一番の価値だ。」
武藤選手は「いつも通り、前を向いてドリブルを仕掛けようとおもった。川崎はリードしていて、しっかり守ってカウンターを狙っていた。カウンターの鋭さはあった。ボールを受けられるシーンは出来たし、最低限の仕事は出来たと思う」と話した。1点を死守しながらカウンターを狙う川崎の守備を抉じ開けるために、68分には高木選手に代わって梅崎司選手を投入。76分、ドリブルで前線に上がった槙野選手からパスを受けた武藤選手が右足を振り抜くもアウトに掛かってしまいチャンスを生かせなかった。更に83分、槙野選手が攻撃の起点を作るも角田誠選手に阻まれてしまう。
刻々と時間が過ぎて行く中、関根選手が倒されゴール向かって右斜め45度のFKを獲得し、最後の切り札として関根選手に代わって李忠成選手がピッチに送り込まれた。このFKを柏木陽介選手がニアーのズラタン選手の頭にドンピシャリと合わせて同点!!
西部洋平選手は「勝ち点2を失った。浦和の攻撃はそんなに恐く無かった。あっ~ズラタンが完全にフリーだった。柏木のボールも本当に良いボールだった」と悔しがりながらも浦和の同点ゴールを褒めていた。
同点ゴールを決めたズラタン選手は「自分自身のゴールだけでなく、勝ち点1に繋げたことが、一番の価値だ。クオリティーの高いボールが来て、アングルを計算して、良い形で入れてしっかりとミートした。直ぐにラインズマンを確認したよ」と安堵の表情を浮かべていた。
試合終了間際のズラタン選手の移籍初ゴールで1-1となり、浦和は貴重な勝ち点1を拾った。
今日のワンポイント!!
過去の対戦成績の教訓から、相手に主導権を握らせてカウンターを封じ込めるゲームプランは、褒めるべきかも知れない。実際、大久保選手やレナト選手に仕事をさせなかった。だが、中村選手と大島選手、森谷選手に中盤を支配されて、攻撃の起点を作られゴール前を脅かされてしまった。浦和の選手たちは、本当に良く我慢していたと思う。厳しいゲーム展開の中で、ゴールが決まるならセットプレーしかチャンスは出来ないのではないかと思っていた。そのラストチャンスを見事に決めて、敗戦濃厚の試合を引き分けに持ち込めたことは本当に良かった。アウェイで勝ち点1!!2ステージ制の短期決戦となった今シーズン、この勝ち点1が意味することを考えると大きな勝ち点だと思う。