浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「夢の途中~山田直輝選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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山田選手は、夢を叶えようと必死にもがき苦しみながらも確実に前へと進んでいる

「この先、どこでやろうとも浦和でプレーすることを胸に、頑張りたい。小学校の頃から、いや、物心が付いた頃から、このチームしかなかった。ここで、試合に出られることが一番の幸せだ。リーグタイトルを獲ることが夢なんで、それを叶えるためにやっていかないといけない」と山田直輝選手は話し、スキルアップを目指して浦和から湘南へとレンタル移籍して行った。全ては、自分が力を付けて、浦和を優勝に導く選手になるための選択であった。

8月16日、湘南のユニホームを身に纏った山田選手の姿が埼玉スタジアムにあった。ピッチの感触を確かめるようにアップをしている山田選手の動きは、気のせいか、どことなくぎこちないように見えた。アップの時から気合が入り過ぎていたのかも知れない。シュート練習も、力み過ぎてしっかりとミート出来ない状態であった。「ふっ~」と息を吐き、山田選手は埼玉スタジアムの空を見上げたのだ。

ピッチから見上げる埼玉スタジアムの空は、山田選手が大好きな空である。「あそこに立って空を見上げられるのは、18人に入らないと出来ない。凄く幸せなことなんだ。大空の一部を四角く切り取られた空が好き」とずいぶん前に話していたことを思いだした。ユニホームの色は違っていたが、ピッチに立てる幸せを感じていたのだろう。

山田選手は「とても良い雰囲気があった。このスタジアムが、一番Jリーグらしい。そういう雰囲気の中で試合が出来た」と試合後に笑顔を見せた。ただ、アウェイで訪れた埼玉スタジアムは「変な感じはしなかったけど、ロッカールームがアウェイだと向きが逆なんですね。アウェイで対戦したんだなぁって感じた」と初めて入るアウェイのロッカールームに昨シーズンとの違いを実感していた。

ベンチスタートとなった山田選手は、76分、1点追う展開の中で、それまで攻撃の起点となっていたキャプテン永木亮太選手に代わってピッチへ送り込まれた。メンバー紹介の時に、完全移籍した坪井慶介選手とレンタル移籍の山田選手には浦和を愛する人々から惜しみない温かい拍手が送られていたが、この時ばかりは、愛情を籠められたブーイングが巻き起こった。

浦和を愛する人々が送るブーイングの本当の意味を知っている山田選手は「メンバー紹介の時に拍手?!アップが終わって、ロッカールームに引き上げていたから知らなかった。えっ本当に?!」と驚きながらも嬉しそうな表情を浮かべた。「山田選手は、浦和の人々から愛されてるよね。まぁ~ピッチに入る時はブーイングだったけどね」と私が言うと、山田選手は「もっと、もっとブーイングされるプレーをしたかった。得点を入れたかったなぁ」と悔しそうに唇を噛んだ。そして「ミドルシュートだったり、ラストパスをミスった。決定的なチャンスで仕事をミスった。満足なことは全くない。浦和は、個々の能力が高いし、チームの戦術もしっかりあって、強いのは分かっていたが、湘南もスタイルを全面にぶつけた。湘南は、止まることなく成長することを階段にして上に行けるようにやって行く。僕もチームもいつかは、浦和を抜けるようにしたい」と山田選手自身が納得出来るプレーでは無かったが、しっかりと前を向いていた。

それは、チョウ監督から「課題ばかりではない。90分間、スタイルを崩さずに得点を奪いに行った。下を向くゲームではない」と言われていただけでない。湘南で結果を出さなければ、試合出場の道どころか、浦和への復帰の道を断たれてしまう。「リーグタイトルを獲る」「浦和を優勝させる選手になる」夢を終わらす訳にはいかない。山田選手は、浦和戦のピッチで結果を残せなかったが、下を向いて落ち込んでいる暇はないのだ。

山田選手は「鍛え直していると言うか、充実した日々を過ごしている」と笑った。その証拠に、浦和に在籍した当時よりも真黒に日焼けして少しスリムに山田選手はなっていた。

「怪我だけでは、気をつけてね」と話しかけると「大丈夫だよ!」と照れ笑いを見せ「それより、ゴール決めたかったなぁ~」と唇を尖らせ「もっと試合に出られるように頑張るからね」と力強く山田選手は言っていた。それは、「期待して待っていてくれ」と山田選手の心の声が、聞こえたような気がした。レンタル期間は1年であるが、湘南に必要とされるのであれば、チョウ監督の下で1年でも2年でもどんどん鍛えてもらえれば良いと思った。

今は、まだ果たすべき夢の途中にいる。山田選手は、夢を叶えようと必死にもがき苦しみながらも確実に前へと進んでいるのだ。湘南の選手の一員として湘南のために全力を尽くし、走り、闘う!夢を夢で終わらせないために・・・。山田選手は、闘志に燃える目をしながら埼玉スタジアムを後にした。

Q. 前十字靱帯を損傷して、治ったあとのパフォーマンスは落ちるのでしょうか?

A. 完全に回復する人もいますが、元のパフォーマンスに戻れるのは、トータル的に復帰率は約80%ぐらいです。レベルの高いプロ選手は、専属のトレーナーさんもいますし復帰は出来ます。ただ、前十字靱帯は作り直す手術をしても正常な前十字ではありません。また、前十字靱帯を損傷すると半月板も傷つけていることがあり、半月板の手術が必要な場合もあります。復帰してから、半月板が痛みだし水が溜まってしまったり、パフォーマンスが落ちます。前十字だけでの怪我ならば良いですが、怪我の状況と合併損傷で復帰率やパフォーマンスが変わってきます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
http://www.kawakubo-clinic.jp/

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