浦和フットボール通信

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【河合貴子の試合レビュー】天皇杯4回戦 vs FC町田ゼルビア<永田、平川、大谷、橋本、高木、石原、中村(町田)コメントあり>(2015/11/12)

今日のポイント「序盤に主導権を握られるも臨機応変に対応」

立ち上がり、町田の前線から嵌めこむ守備により主導権を奪われてしまった。後ろからのビルドアップが上手くいかない中で、阿部勇樹選手と青木拓矢選手をDFラインに下げることにより、後ろ3枚でボールを回せて落ち着かせることが出来た。また、両ストッパーが高いポジションを取って、ワイド選手と上手く絡んでサイドで数的優位を作れるようになり、浦和の攻撃にリズムが生まれた。

永田充選手は「前半の始めは、嫌だった。町田が前線から嵌めて来て、ガッツリと嵌ってしまった。中でも話し合っていたが、ベンチからの指示も出てボランチを下げて3枚回しにした。そしたら、相手が追えなくなったので良かった。あれで、前線3枚で町田が対応して来たら嫌だった」と安堵の表情を浮かべていた。

また、平川忠亮選手は「アオ(青木選手)と阿部が落ちて、3枚回しになったことで、僕と加賀で同時に走り出せば、相手を上手く引き出せたと思う。向こうは、4DFで対応していたから、サイドチェンジが有効だった。タイミング良く走り出せれば、DFラインの裏を狙えたし、相手はスライドしきれなかった。ずっと空いていたので、最後は体がきつくて、加賀とポジションを交代しながらやった」と試合後に話すほどであった。

元浦和に在籍していた中村祐也選手は「最初は嵌めて、自分たちが主導権を握れた。嵌るまでは良い感じで、浦和のミスを誘ってショートカウンターまでは行けた。サイドチェンジで上手く剥がされてしまった」と悔しそうであった。

試合の流れが上手くいかない時に、失点せずに臨機応変に対応出来たことが、勝利へと繋がった大きなポイントだった。

力の差を見せて、7得点でベスト8進出

漆黒の闇が熊谷の空を覆いつくす中で、スタジアムの灯りがピッチを照らし輝きを放っていた。浦和の初戦となった天皇杯4回戦・町田ゼルビアとの一戦は、19時キックオフで行なわれた。芝生もいつもの練習場の冬芝とは違い、高麗芝を短く刈り上げて堅いピッチでボールは走るが、よく弾む感じであった。

浦和は、代表召集と怪我で主力6人を欠き、特にGKを含めた守備陣は急造のDFラインをひかざる負えない状況であった。GKを大谷幸輝選手が務め、DFラインを加賀健一選手、永田充選手、橋本和選手で構成した。また、リーグ戦から中3日を考慮して興梠慎三選手や武藤雄樹選手、宇賀神友弥選手たちをベンチに置き、9人スタメンを入れ替えて臨んだ。一方の町田は、J2の昇格が掛かる試合を週末に控え、リーグ戦から8人もメンバーを入れ替え、元浦和の中村祐也選手がツゥートップの一角を担ってきた。

試合開始早々、町田が積極的に前線から激しいプレスを掛けて嵌めこむ守備を見せ、浦和の後方からの攻撃の組み立てを封じ込めて、主導権を握ってきた。

大谷選手は「ゲームに集中して入れたし、立ち上がりにやられた感じがしない。取られても取り返しが出来たので、大丈夫だと思っていた」と主導権を町田に握られながらも落ち着いていた。

3分、遠藤敬佑選手のFKを久木野聡選手が合わせたヘディングシュートは、僅かにゴール右隅をかすめて、8分には、遠藤選手がFKを直接狙ってきたが、大谷選手がガッチリと押さえた。

10分ほど経過したあたりで浦和は、両ストッパーの加賀健一選手と橋本和選手を高いポジションを取らせ、ボランチの阿部勇樹選手と青木拓矢選手をDFラインに下げて、町田のハイプレスを掻い潜るようにすると流れが浦和に傾き始めた。

14分、高木俊幸選手の右CKのこぼれ球を自身が拾ってシュートを放つもポスト直撃!24分、高木選手とのワンツーで抜け出した梅崎司選手がシュートを放つも内藤圭佑選手の好セイブに阻まれてしまった。

ピッチの幅を使って、サイドに揺さぶりを掛けながらリズムのある攻撃を見せるがチャンスを生かすことが出来なかった。平川忠亮選手は「町田の4DFに対してサイドのスペースを使えて、良い形が作れた。向こうは、ツートップで嵌めて来たが、慌てないで対応出来た。青木が落ちて3枚で後ろで回せるようになってから良い攻撃の形が出来た」と話した。

浦和のペースで展開する中、高木選手の右CKをゴール中央で橋本選手のヘディングシュートが決まり、30分に待望の先制点が生まれた。

橋本選手は「立ち上がりは相手も元気ですし、思い切ったプレーをしてきた。先制点が大事だと思った。誰が獲っても先制出来れば楽になれると思っていた。多くのチャンスがある中で、自分がたまたま獲った感じだ」と謙虚に話していた。

高木選手は「ドンピシャと言うよりも、空間に自分が上げて(橋本)和のヘッドが強かった。バタバタした試合の入りで、セットプレーで得点が獲れたのは大きかった。負けたら終わる中で、カテゴリーが下の相手に負けられないプレシャーがあった」と安堵の表情を浮かべていた。

波に乗る浦和は、その2分後に関根選手が相手DFを競りながら粘り、フォローに入った橋本選手が上手くボール拾って左サイドを抜け出してGKとDFの間にクロスを送りこみ、李選手が右足で綺麗に合わせて2-0と町田を突き離した。李選手は「ゴールシーンは、自分の良さと和の良さが出た」と嬉しそうに笑った。

その後も浦和は、怒涛の攻めを見せた。前半、町田が放ったシュート5本に対して、浦和は13本。町田のCK1本に対して、浦和のCKは9本であった。前半終了間際に、町田も意地を見せ、中村選手がドリブルで仕掛けて出したスルーパスに遠藤選手が上手く走り込みDFの裏に抜け出してシュートを放ってきた。だが、大谷選手が身体を投げ出してクリア!ゴールを死守した。

そして、45分+2分には、町田のバックパスをカットした関根選手が内藤選手を冷静に交わして無人のゴールへと流し込み、浦和は3-0で前半を終えた。

このままでは終われない町田は、後半の立ち上がりから仕掛けてきた。50分、遠藤選手のクロスのクリアーボールを拾った平智広選手の豪快な左足シュートが決まり3-1。

この得点で自信を取り戻したかのように町田は、前線から激しいプレスを掛け始めた。2点目を狙って町田は、59分に右サイドバックの土岐田洸平選手から松本怜大選手を投入にサイドをケアしてきた。

すると、浦和は61分に梅崎選手に代えて興梠選手を投入し、李選手をシャドーとし、興梠選手のワントップへと攻撃を活性化した。

64分には久木野選手からのパスに抜け出した中村祐也選手が浦和のゴールに襲い掛かった。だが、中村選手の放ったシュートはゴール左ポストに直撃!

中村選手は「僕が、ゴールをきっちりと決めていたら・・・。自分のところで3-2に出来た。3-2になっていたら、試合の流れが変わった。決め切れないと厳しい。浦和は、きっちりと決める。そこが浦和との差だ」と悔しがり、「自分が浦和で一緒にやっていたのは、ヒラさん、阿部さん、啓太さんと、あとは大谷ぐらいだ。やっぱり、個人の技術は高い。試合前は意気込んでいたけど、1点獲られた後の試合の運び方だと思う。下向きになってしまったところが若干あった。この経験を次に繋げていきたい」とJ2昇格に向けてこの敗戦を生かしていきたい。

ポストに助けられた浦和は、65分には高木選手の左CKを内藤選手がクリアしたところを、阿部勇樹選手が狙い澄ましてミドルシュートを叩き込んだ。更に、69分には平川選手のクロスをニアで李選手がDFを釣りながらヒールパスを送り、李選手の裏に走り込んだ高木選手が右足で合わせてシュート!5-1と突き放した。

そして、高木選手に代えて武藤選手を投入。75分には、武藤選手が起点となりオーバーラップしていた加賀選手へ、加賀選手のクロスを興梠選手がしっかりと合わせてクオリティーの高さを見せ付けるゴールを決めた。

勝利をほぼ手中に収めた浦和は、77分に李選手に代えて石原直樹選手をピッチへと送り込んだ。7か月ぶりの公式戦となった石原選手は「チームメイトが、点差をつけてくれたので自分に出番が回って来た。みんなに感謝したい。恐さとかあったけど、違和感が無くなっていた。あとは、練習や練習試合で徐々に自分らしさを出していきたい。武藤に出したパスは反省している。弱かった。慎三はじめ、最後のところまで運んで来てくれて、自分を狙ってパスを出してくれた。オフサイドだったり、上手くいかなかった。でも、イメージは自分の中にある。公式戦、出場出来たのは大きかった」と笑みが零れた。

「11月11日。怪我をしたのが12日で、いろんな思いがある日だ。天皇杯が目標だったし、日にちも良い並びだし、実は結婚記念日でもあった。良い日になりました。あと、ゴールが欲しかった。チームが勝ち進んで1月1日に繋げていきたい」と少し照れながら話した。結婚記念日を長期離脱からの公式戦復帰で祝うこととなった。

90+2分には、関根選手のゴールが決まり、終わってみれば7-1と最後まで手を緩めることなく快勝。相馬監督は「気持ち良いぐらい、完敗だった。率直に、強いなと改めて感じた」と話していた。

浦和は、町田を下してベスト8入りを果たし、14日土曜日に開催される神戸対横浜FMの勝者と12月26日に対戦することとなった。

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