浦和フットボール通信

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【取扱説明書コラム】遠藤航「攻守両面で力を発揮できる柔軟性は浦和の大きな戦力になる」(林遼平)(2016/1/6)

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浦和レッズに2016シーズンから新加入する選手はどんな選手なのか。前所属チームの番記者による取扱説明書的コラムをお送りします。第1弾は、湘南ベルマーレから移籍してきた遠藤航選手。

攻守両面で力を発揮できる柔軟戦は浦和にとって大きな戦力となる

ユース時代から数えて8年の歳月を共に過ごしてきた湘南との別れは、遠藤航にとって決して簡単な選択ではなかった。それでも遠藤は自らのキャリアアップとして、より高いレベルを目指し浦和への移籍を決断した。

運動量や球際の強さ、メンタル面の強さといった、サッカー選手が兼ね備えるべき芯となる部分で非凡な能力を見せるのが遠藤の最大の魅力だ。最終ラインならどこでもプレー可能なポリバレントな能力に加え、近年ではリオ五輪を目指すU-23日本代表やロシアW杯を目指すA代表ではボランチを任されるなど、高い戦術眼と適応力で多くのポジションをこなすことができる。178センチというDFでは比較的小柄な体格ではあるが、非凡な身体能力と相手のプレーを読む力で柔軟に対応。ボール奪取力にも優れ、セットプレーでは打点の高いヘッドを見せるなど、おおよそディフェンダーに求められる能力を高いレベルで備えている。

一方で、遠藤の良さは守備面だけではない。近年、湘南では右CBを主に任されていたが、守備面もさることながら攻撃の質が良化。機を見た攻撃参加で相手の隙を突くしたたかさを身につけ、クロスやシュートで得点に絡むプレーが増加している。そこに加えて、代表でボランチのポジションを任されたことで、ラストパスやボールを前に運ぶ力といった中盤に求められる能力にも一層磨きをかけている。攻守両面で力を発揮できる遠藤の柔軟性は、浦和にとっても大きな戦力になることは間違いない。

恩師と離れ、新たな挑戦となる浦和移籍

そして、遠藤にとって今年は重要な一年となる。リオ五輪に向けた最終予選を戦い、そこを勝ち進んだ先には本大会が待つ。9月からはロシアW杯を懸けた最終予選も始まる。そういった状況で選択した自身のステップアップ。22歳の青年は決して楽な道ではなく、あえて困難ないばらの道を選んだのだ。

これまでの遠藤航の歩みを語る上で欠かせない人物がいる。それは元浦和レッズの選手でもある湘南の曺貴裁監督だ。遠藤が湘南に加入したのは中学3年のこと。中学進学時に横浜F・マリノスのユースチームに落選した後、中学2年時に湘南のU-18の練習に参加。そこで当時、湘南のU-18で監督をしていた曺監督の目に止まり、翌年にオファーを受けて加入を決めた経緯がある。そこから互いにトップチームに上がり、8年の月日を共に過ごしてきたことを考えれば、遠藤の成長の背景には常に“曺貴裁”という存在があったことがお分かりになるだろう。

そして、遠藤の成長を誰よりも望み、常に新たな挑戦をさせてきたのも曺貴裁監督である。遠藤のポリバレントな能力を開花させることになった右CBへのコンバートも、彼の現状を把握し、新たなポジションで学ばせることが最良の判断という考えに至ったからである。

そんな恩師との別れ、長年過ごしてきたチームとの別離は、また新たな遠藤自身の挑戦になる。これまではチームからの信頼も厚く、副キャプテンを任されるなど中心人物の一人であった。だが、浦和では一人の新人でしかない。熾烈なレギュラー争いに身を投じ、あらためて自分の居場所を提示する必要がある。リオ五輪の最終予選などもあり、チームの始動に出遅れることは間違いなく、フィットするまでに時間が掛かるかもしれない。それでも自身の選択に後悔をするような男ではない。一歩ずつでも常に先を見据え、最後には自分のポジションを確保して欲しいものだ。

また、湘南と戦うときは大きな拍手とともに、ブーイングで迎えられるだろう。それは遠藤が、湘南で成し遂げてきたものの大きさを知る機会となるはずだ。だが、そこで示さなければ行けない。チームを離れて、自身を新たな成長の場に置いた意味を。敵となれば、これほど厄介な選手はいないだろう。それでも再び対峙することを、曺貴裁監督を始め、多くの湘南に携わっている関係者が待ち望んでいる。その日が来ることを楽しみに待ちたい。

(文・林遼平)

林遼平プロフィール

Jリーグを中心に記事を寄稿。サッカー専門新聞ELGOLAZOの2014年、2015年湘南担当を務めている。

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