浦和フットボール通信

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河合貴子のレッズ魂ここにあり!「伝えるべきもの~槙野智章選手」

J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。

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表に出ない陰の部分でチームメイトを支えている

足を止めること無く、ただひたすら走り続ける。パスを受けるために走り、スペースを作るために走り、ボールを奪うために走る。

フットボールにおいて、技術や戦術以前に走力が重要になってくる。走ることが出来なければ、フットボールは成り立たない。

ミシャ監督は日頃から「考えて走れ!」と選手たちに要求している。無闇に走るのでは、体力の消耗につながり闘いを優位に進めることが出来なくなるからだ。

いかに判断良く、効率的に組織として連動した走りが出来るか、練習中から取り組んでいる。

要求されている中で、力強く、より早く走り、なおかつ体力の消耗を最小限に留めた効率の良い走り方に目を付けた選手がいた。槙野智章選手であった。

槙野選手は「走り方の改善をやって、怪我が予防され、速く走れて身体を作れる。体力の消耗もそうだが、100%で走るよりも70%で走ることが出来る。走り方が悪いと腿裏が(ハムストリング)張って痛んだり、膝裏が痛かったりする」と真剣な表情で話した。

そして、「足の着く位置、着き方で変わる。足の速い加賀さん(加賀健一選手)の足の着き方をちょっと観てよ」と槙野選手の目線を追うと猛ダッシュする加賀健一選手の姿があった。

加賀選手の走りは、足のつま先を使って走る忍者のようであった。他の選手の足の着き方を観察すると、踵から地面に着いてグッと押し出すように体重移動している。

槙野選手は「選手の走り方を観るだけでも面白いでしょう?!」とニヤリと笑った。そして「慎三(興梠慎三選手)や青木(青木拓矢選手)の走り方は危ない。怪我に繋がる」と警鐘を鳴らし、「平さん(平川選手)や大久保さん(大久保嘉人選手)は、自然と良い走り方をしている」と褒めた。

「サッカーの基本は、相手よりも早くボールを触ることだ。追う物に対して前に足を置く。よりパワーを出すためには、前ではなく、身体の下だ。例えば、空き缶を潰す時に身体の前に置いて踏みつけるよりも、身体の下に置いて踏みつける方がパワーが出るのと同じだ。1歩の力が違い、腿裏の負担が違ってくる。足の着く位置は、ほぼ重心の下だ。踵を着けるとロスが出る。重心の真下をつま先で押し出す。陸上の短距離の走り方に似ている。あとは手の振り方だ。肩甲骨から動かす感じで、肩甲骨が硬いと良くない。ボルト(人類史上最速のスプリンターと言われるウサイン・ボルト選手)の映像を見ても面白いよ。」と教えてくれた。

選手たちは試合の中で、5m~10mあるいは20mほどのダッシュを何度も繰り返して行っている。槙野選手の話は、理にかなっていて思わず納得してしまった。

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槙野選手が走り方を改善したのは、3年前に知り合いから「そんな走り方をしていたら膝をやりますよ」と注意を促されたことがきっかけであった。最初は、頭で分かっていてもなかなか上手く行かず、ヒラメ筋がパンパンになったそうだ。ヒラメ筋に張りが出るほどつま先を意識してトレーニングを行っていたのだ。

そういえば、3月24日に亡くなったヨハン・クライフ氏が、現役時代につま先トレーニングを行っていたことを耳にしたことがあった。クライフ氏は、階段を上る時も常につま先で上っていた伝説が残っている。つま先が、どんなに重要かを物語っている。

槙野選手は「90分の中でボールを追い、20mダッシュで後手を踏むポジションだから、早く予測して、次のプレーに対する動きが速くなり、疲れも感じなくなった」と走り方を改善して実感していた。

そんな槙野選手を見て、宇賀神友弥選手や関根貴大選手、那須大亮選手も走り方の改善に取り組んでいった。

「僕は浦和に移籍して来た。生え抜きに出て来て欲しいし、ウガ(宇賀神選手)や関根が浦和の顔になっていかないといけないと思う。伊藤(伊藤遼太郎選手)なんかも良いものを持っているから、走り方を伝えるよ」と槙野選手は笑顔を見せた。その笑顔は、本当に浦和の未来を思っている偽りの無い笑顔であった。

槙野式髪型やパフォーマンスが、何かと取り沙汰されることが多く注目が集まる。だが、表に出ない陰の部分でチームメイトを支えている。フットボールプレーヤーとしての海外経験や日本代表経験など槙野選手が培ってきた伝えるべきもの大きい。

居残り練習で真剣な表情を浮かべて、駒井善成選手や高木俊幸選手、伊藤選手に走り方を伝授する槙野選手する姿があった。きっと、興梠選手や青木選手にも走り方の改善を薦めて行くだろう。伝えるべきものの大きさを感じながら、本当に伝えないといけないことを槙野選手は、伝道師となり伝えていく。浦和の未来を思って・・・。

Q. レディースの加藤千佳選手が、昨シーズンの終盤に足首を捻挫し骨挫傷してしまいました。骨挫傷について教えて下さい。

A. 挫傷は、簡単に言えば骨の打撲です。骨挫傷は、前十字靱帯を損傷した時に起こることが多いです。骨挫傷は、骨同士が捻られたり打撲をすると骨の中で小さな骨折が起きたり、骨が損傷している状況です。MRIを取ると骨の中にむくみがあるのが分かります。分かりやすく言えば、殴られて青あざが出来ることがありますが、あざが骨の中に出来ている状態です。骨挫傷は自然に治るのですが、2~3ヶ月かかります。原因は、小さな目に見えない微小骨折の場合もあるし、打撲によるむくみの場合もあります。前十字靱帯を損傷した時に、捻れて切れるので外側に骨挫傷が起きてしまいます。足首の捻挫でも、上と下の骨がグッと捻れてしまうと骨の中が損傷してします。痛い人は、3ヶ月ぐらい痛みが続きます。

川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。http://www.kawakubo-clinic.jp/

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