河合貴子のレッズ魂ここにあり!「逆境を跳ね返す力~那須大亮選手」
J開幕から浦和レッズを追いかけている”タカねえ”こと河合貴子さんによる浦和レッズコラム。毎週、タカねえの独自視点の浦和レッズを語ります。
「意気込みとしたら、俺を出したら絶対に勝つ!」
チームが勝つためには、全力を尽くす。
「負けて良い試合なんて一試合もない。目の前の一戦、一戦が大事で、全てが決勝だ」と那須大亮選手は、口癖のように熱く言う。
「勝たないといけない。今年は、結果が必要だ」と力強く話した。
浦和で一番熱い男は、やっぱり那須選手だ。その熱い男が、昨シーズンの今頃と比べて充実感が満ち溢れている。ACLアウェイのシドニー戦では、途中出場ながらボランチで出場してしっかりとクローザーの役割を果たした。
「ボランチだったが、試合に出場することに意味があると思っている。しっかりと役割を熟そうと思った。3-0という点差だったが、青木と代わってセカンドボール拾ったり、守備の部分を求められた。あとは、ゲームを落ち着かす。キッチリとゼロで押えることを考えながらプレーした」と話し「公式戦の緊張感を味わえて良かった。久々の公式戦!去年の新潟戦以来だったからね。出たい欲があった」と4-0で快勝しピッチで闘った喜びを那須選手は、噛み締めていた。
そして、Jリーグ開幕となった横浜FM戦でも2-1となった段階で逃げ切る体制を整えるために那須選手が投入された。しかし、2-3で逆転負け。悔しさを滲ませて「出たら勝たないとって思っている」と自分がピッチに入ってチームを勝利に導けなかった責任を感じていた。続く中2日で迎えたACLホームのソウル戦では、センターバックとしてスタメンで起用され対人プレーでの強さを魅せつけていた。
FCソウルに5-2で勝利を収めたが、那須選手はアディショナルタイムのマイナスのクロスからの失点を悔やんでいた。だが、すぐに前を向き「勝つことに意味がある。内容よりも泥臭くても勝ちきることだ。チームとしても、自分としても結果を残さないとね。形としてタイトルを残さないと」と自分がピッチに入ったら、勝ちきる強さを求めていたのだ。
それは、年齢を重ねるごとに徐々に失っていく出場機会やポジション争いに危機感をもっているからだ。
「今年は、早い段階で試合に出られたのがポジティブなことだ。結果を出し続ける。昨年の初めは、気持ちの部分がついて来なかったから、マッチしていなかった。昨年は、半年間出れなかった部分で成長した。今年は、オフを通じてフィジカル的にも充実していて、今も充実している」と笑顔を見せたのだ。
昨シーズンは、湘南から同じポジションの遠藤航選手が浦和に移籍してきた。当然のように那須選手の出場機会が減ったのだ。
那須選手は「若い奴が出て来たら、どうしても若い奴を使いたくなる。自分が監督になったとしてもそうなる思う。そこで違いを出すとしたら結果の部分で、使わざるを得ない状況を作り出すことだ。そのためには、コンディションだ」と日々コンディションを維持する取り組みをしてきた。
また、Jリーグフル出場記録を更新し続けている同い年の阿部勇樹選手を引き合いに出して「阿部勇樹は、試合に出続けて輝き続けるタイプ。僕は、出ている期間もあったが、30才越えてから常にレギュラー争いして「負けてたまるか!」という気持でやれている。
「絶対、負けない!」と思ってやれているのが、長くやれている秘訣。いろんなサッカー選手の人生があるが、僕は昔から争いの中で何かを見出して常に成長を求めてやってきたタイプ。準備の部分が僕にとって大事。気持ちを切らさないためにも、準備が大事。本当なら、もっと要領良くって生きていけたらなぁって思い続けながらやって来た。どのチームに行っても同世代で、常に日の当たる選手ばかりいて、自分の中でも葛藤だった。代表にも選ばれたいという思いもずっとあった。そういう人たちがいるから、自分は「負けてたまるか!」って、昔ぽい言い方だけど「こんちくしょう!」見たいな根性でこれた。自分は、準備をし続けて成長を求めてやっていかないと、立ち止まってしまう。その時は、自分のサッカーの終わりが見えた時だと思う。まだまだ、やれる時間はあるし、準備はし続けないとね」と話したのだ。
コンディション作りにおいては、「えっ?!ここまで自分を追い込むのか?!」と見ていて驚愕するほど、トコトン自分の身体を痛みつける。「僕は、身体のケアというよりも上手くいじめながらコンディションを向上させる。試合に出ていたらベストな維持が出来なくなる」と額に汗を浮かべて笑ったのだ。
そして、那須選手は切々と「試合に出ている期間は気がつかないが、出なくなったり、出場機会がたまになったりすると見えるものがある。それは、若いからとか年を重ねているからとか関係ない。出ない時間をどれだけ有意義に使うがプロの世界で本当に大切なことだ。凄く成長出来る時間なんだ。でもそれを若手に、言葉で伝えるものではない。初めてそういう境遇になって、気持ちを奮い立たせて、いろいろ気付けたりね。今、試合に出られてない選手とか若い才能ある選手にそういう気持でやって欲しい。必ず、必ずチャンスは来る。自分はそうやって来た。実験済みだ。僕にとっては、当たり前のことだ。試合勘だの言われたくない。黙らすためにも結果だ。僕は、出られない期間があって、試合勘がないと言われるのは、結果が伴わないからだと思う。その期間に出来ることはたくさんある。むしろその期間を充実させたら、出ている人以上のコンディションの良さが身につく。メンタルの充実だって、普段出来ないことも挑戦できる。考え方1つだ。年齢や試合勘など、何にも言わせたくない」と話した。だから、那須選手は勝利に拘り、そのためにしっかりと準備とするのだ。
「意気込みとしたら、俺を出したら絶対に勝つ!」と渾身の力を込めて那須選手は言った。
逆境の中に必ずチャンスはあると信じ「負けてたまるか!」「こんちくしょう!」根性で、しっかりとした準備の下で自分を成長させてきた。その成長が、那須選手の逆境を跳ね返す力になっているのだ。逆境を跳ね返す底力が、ピッチで輝きを放つ。
Q. シーズンが始まると浦和は、一次キャンプの沖縄では走り込みからスタートしました。怪我をしない身体作りです。選手たちは、1年間闘える身体を作ると良く言いますが・・・。
A. 暖かいところでやるのは、怪我をしない身体作りの意味合いもあると思います。1年間闘える身体と言うよりも、戦術的な練習や最初の試合に臨める身体作りです。1年間闘える身体は、トレーニングをしながら超回復を繰り返しながらやり続けることです。
川久保誠 profile
1981年慶應義塾大学医学部整形外科教室入局。93年医学博士。94年英国リーズ大学医学部大学院へ留学、修士課程修了。96年より慶應義塾大学病院膝関節・スポーツ外来担当。東京歯科大学市川病院整形外科講師を経て2004年4月より川久保整形外科クリニック院長となる。浦和レッズレディースのチームドクターも務めた。
川久保整形外科がリニューアル開院しました。平成28年5月6日(金)より新クリニックにて診療を開始しています。MRIなど最新施設を備えて、より良い環境の下での医療とサービスをご提供していきます。http://www.kawakubo-clinic.jp/