浦和フットボール通信

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【This WEEK】週刊フットボールトーク拡大版(11/2)

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週土曜日は、ナビスコカップ決勝が国立競技場で行われました。当日は、早朝から多くのサポーターが駆けつけていました。並びをスムーズにするために、サポーター有志により、前日抽選が埼スタで行われて、約2000組が参加。その当日点呼が朝7時にあるということで、朝7時には数千人のサポーターが国立に集結をしていました。早朝から赤い光景は異様であり、また決勝の高揚感が伝わってくるものでした。

豊田:決勝チケット発売時点からURAWAエリアのコンビニはどこも凄い争奪戦になっていましたが、やはりレッズがかかわるカップ戦ファイナルは独特の雰囲気になります。

椛沢:浦和の決勝登場ということで、チケットは発売当日即完売でした。スタンドも満員御礼。目測では、7対3でレッズサポーターが占めていたのではないかと思います。事前にLフラッグで旗の海を作ろうと呼びかけられており、国立のスタンドはフラッグがところ狭しと振られていて、これもまた“浦和の決勝”の絶景でしたね。ゴール裏スタンドも人でごった返していて、手拍子をするのもままならないくらいの密集度の中での応援でした。豊田さんは今回取材エリアでの観戦でしたが、いかがでしたか?

豊田:会場周囲の神宮外苑はもちろんですが、記者席受付も凄い混雑でした。初めて『フットボール通信』名でメディアパス申請をさせていただきましたが、その意味でも個人的には感慨が深かったですね。ただ受付で席番確認までしてもらった一般メディアシートもすでに満杯(笑)。仕方なく記者席最上段の引き画面を撮るTVカメラの脇に即席でスペースを取ってもらい、そこからスタンド全景を見渡していました。暑さを感じるほどの好天で、レッズ初タイトルの雨の国立とは対照的な華やかなファイナル。ただ、控え室や通路等で久々に顔を合わせたベテランのライター氏たちからは、「今日も大事だけど、絶対に降格はさせないで」と異口同音に念を押されてしまった。

椛沢:試合は、横浜で躍動した攻撃陣が鹿島の守備陣の前にはしっかりと抑えこまれてしまいました。浦和も粘り強い守備で対応して、鹿島に決定的な仕事をする選手が見当たらないこともあって、お互い決定的なチャンスを作れず、時間が進む展開となりました。後半開始すぐの直輝の退場で更に攻撃の手がなくなってしまいました。あのプレーは直輝の若さが出たかと思います。山田直輝選手も「チームに申し訳ないです。ピッチの中に居る人に任せるしかしかなかった。悔しかった。ごめんとしか言いようが無かったんで・・・。一人一人にごめんなさいって声をかけた。守るしかない状況になって悔しかった。梅さんが、これからもっと上手くなろうなぁって・・・。啓太さんが、相手の優勝を確りと見とけって・・・。みんな頑張ってくれて反省しないといけないのは僕だけです。僕は、ここから上手くならないといけない。歩き続けないといけない」と猛省のコメントを出しています。

私は、浦和がカウンターを狙うという展開に持ち込めるので、却って退場が良い方に出るかとも思いましたが、あの退場によって力を奪われてしまったようですね。試合後に、山田暢久選手は「退場して30分守っている時間がしんどかった。自分は怪我明けで、あの30分は苦しかった。他の選手もしんどかったと思う。良い流れを自分達で持って行かないといけない。何とかみんなで乗り切るしかない」とコメントをしています。

豊田:すでに直輝本人がいちばん感じていることでしょうが……。イレブンの軸となり、ゲームを背負う立場というのは、ここまでプレッシャーがかかって時として大きな代償の責務も伴うということ。ミスターレッズはもちろん、彼も同じピッチ上で間近に接してきたポンテなどが、どういう重さを背負ってプレーしてきたかを心に刻んで欲しいと思います。

椛沢:堀監督も予想外の決断を迫られる展開だったと思いますが?

豊田:望遠鏡を使って中盤をせめぎあう両チーム選手の動きと表情を追っていたのですが、鹿島のプレーヤーたちは直輝にボールが入ったところから相手の
流動が始まることを見越した上で、間を空けて持たせたあげくに複数で絞り込む連携をやっていましたね。チャンスは作られたにしろ前半は0-0で凌いで、直輝コールに応えながら「さあ、後半!」と意気込んだところを巧みに誘い込まれた印象。新井場徹や青木剛のかけひきの老獪さにしてやられた感じだろうか。ただ、ファイナルの硬さは随所にあってボールロストが多かったせいか、レッズは直輝ばかりでなく梅崎にしろ柏木にしろ「自分がなんとかしなくては」の気持ちが空回りしている部分があった。鹿島の対応を差し引いても、横浜戦のような流れが作れない情況だったと思います。直輝が退場させられた直後に記者席に配られた堀監督のハーフタイムコメントのメモには「辛抱するところはしっかり辛抱してやって行け」との言葉……非常に悔しい思いをした次第です。

椛沢:結果的に、鹿島との力の差を感じさせられる内容となってしまいました。選手達もそれを自覚しているようで、次のようなコメントを残しています。

梅崎司選手は「これが力だと思います。まだまだ僕らの力が足りなかった。悔しいです。本当にこの悔しい経験を次に生かして行きたい。(前半のシュート)決めれたらと思います。あそこで決めていれば勝てたと思う。決められる状況で・・・それが実力。チームが苦しい時決められる選手になりたい。未来に向かってやって行くだけです」。

原口元気選手は「鹿島の方が良かったし、強かった。全体的に押し込まれていた。自分自身、前を向いて仕掛けるシーン自体が少なく、もう少し落ち着いたプレーが出来れば良かった。前を向いてボールを受けて無いし、守っているシーンが多かった。J1に残留して、またこのピッチに戻って来ようと切り替えた」。

90分間戦ってスコアレスまでは持ち込めましたが、延長まで戦い抜ける力が残っていなかったように見受けられました。サポーターも試合後は、決勝まで戦った選手達を讃えていました。そしてこれからの4試合こそが重要なんだと伝えていましたね。試合後の審判へのブーイングが目立ちましたが、あれは敗戦の八つ当たりのように見えるので、止めて欲しい。負けた後も浦和らしく堂々とした姿勢を貫きたいものです。

豊田:そこは同感です。先ほどもお話ししたように「堀レッズ」の肝である中盤からの流れを鹿島がどう切断してくるかに絞って見ていたのですが、遠藤康にしろ柴崎岳にしろ、鹿島はベテランばかりでなく若手であろうとファイナルでも落ち着いたものですね。「自分たちが信じるサッカー」を基礎にしてピッチに臨む気持ちが統一されていることを感じました。派手さはないが、チームプレーに徹してミスをしない。いちばん基礎的なことをいちばん忠実に実行している印象です。まあレッズ支持者としては、逆に原口や直輝の際立ったキャラクターをなおさら贔屓したい気分にはなるのですけど(笑)。

椛沢:10年近く経って鹿島とのチーム力の差を広げられてしまった印象はありますね。鹿島は何年経っても鹿島のサッカーを貫いている。浦和は未だにそれ
が定まらない。この差は大きい。しかし選手で言えば、浦和もサッカーの街の財産によって、鹿島に負けない若い才能が揃ってきています。浦和が地に足を
つけてサッカーを定めることが出来れば、その差を縮めることは可能なのではないかとも思います。若い選手たちが多いこのチームはこれからのチームです。
2003年に優勝した時も前年の悔しい思いをバネにリベンジを果たしました。今回の準優勝をバネにこれからの戦いに繋げていけば良いと思います。

豊田:鹿島が営々と築いてきたクラシックサッカーを、結成後わずか10日の堀レッズが延長戦に持ち込むまでに追い詰めた……私は現段階ではそうポジティブに考えるようにしています。このリーグ戦の終盤、堀監督には変わらず思い切った采配を振って欲しい。

椛沢:リーグ戦はすぐにやってきます。今週木曜日には、ホーム埼玉スタジアムでジュビロ磐田戦です。多くのサポーターがナビスコ決勝で、必死に頑張る選手達の姿を見たと思います。ぜひそんな彼らを一緒に応援しましょう。この磐田戦は、決勝直後の試合ということで、肉体的にも精神的にもタフな試合になると思いますから、苦しい展開も予想されます。そんな時は決勝の時のように多くのサポーターでスタンドを赤く埋めて、足が止まりそうな選手達を後押しし続けましょう。

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