浦和フットボール通信

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【This WEEK】週刊フットボールトークVol.66(12/8)

椛沢佑一(浦和フットボール通信編集長)× 豊田充穂 (コピーライター)

椛沢:先週末の試合で2011年のJリーグが終了しました。最終戦の相手となった柏レイソルには目の前で初優勝を決められて、力の差もまじまじと見せつけられる結果となってしまいました。シュート数は25-4。この数字から見ても分かるワンサイドゲームでした。何よりショックだったのは、54000人の大観衆でしたが、アウェイゴール裏だけではなく、メイン、バックスタンドのアッパー席が黄色に染まっていたことでした。聞く所によると1万5、6千人はレイソルのサポーターだったそうです。これはレッズ史上でも初めての光景でした。相手の優勝を見せつけられるのは決して気分の良いものではありません。J2から昇格してきたレイソルにあって、レッズに足りないものは何なのか。ただ悔しいという想いで終わらずに検証しないといけないと思います。

豊田:2階席の柏サポーターの占拠率は凄かったですね。SRの美園駅から徒歩でスタンドに向かったのですが、久々の人数でダフ屋が動いており、さすがにこの最終戦に関してはレッズ戦らしい緊迫が生まれていた。でもフタを開けてみれば増員分は相手サポーターだったということ。ここは本当に埼玉スタジアムなのかと感じ入りました。ある意味客席でも今シーズンを象徴する現象が起こっていたと言うことでしょう。ゲーム、特に前半に関しては現実を思い知らされた。システム上の不適合があったとはいえ、球際の競り合いや攻守の切り替えの早さ、全員の戦術理解であそこまで差ができてしまってはどうにもならない。簡単に中盤で前を向かせてしまうとポジションを変化させながら鋭くスタートを切る選手が複数いる。連動性の熟練やクロスのタイミングや精度も差が大きく、福岡戦で少しばかり感じた手ごたえを打ち砕かれる気分でした。確かにGK加藤順大の後逸には冷水を浴びせられる気分でしたが、勝つことはもちろんドローを狙うにも苦しい力関係だったことは明白。いまさらながら、サポーターもこの現状を受け止めるところからリスタートしなければなりません。

椛沢:試合終了には、橋本代表の挨拶がありましたが、挨拶中、スタジアム全体からの挨拶が全く聞こえないほどの強烈なブーイングが轟き続けました。その後は「辞めろ」コールが起きる事態。残留争いで事態を荒げたくないサポーターが最後に爆発した形だと思います。今シーズンは、スタイル確立を掲げて招聘したフィンケ前監督を切ってペトロヴィッチを呼び、“継続”というクラブの発信とは、全く異なった違うサッカーへの舵を切り、成績は上がることなくGMをシーズン途中で解任して、ペトロヴィッチも途中で解任と、迷走状態は深まるばかりのシーズンでした。観客動員数も昨年から7000人が減り、埼玉スタジアムの半数は空席になる試合ばかりが続いてしまいました。

豊田:実感したのはあれだけの動員があっても、ホーム支持者の大半はゲーム後のあの挨拶後に意思表示をすることに重きを置いていた気配があったこと。この事実を重く受け止めなくてはならないのは我々も同じですが、いままで「地域密着の浦和」とか「熱いサポーター」の修飾をくり返してきたメディアも、ここに明確なコメントが出せないとしたら問題と思いますね。私たちのホームグラウンドで、それこそあらゆるJ史の記憶にも無いようなセレモニーの修羅場を作ってしまったことは事実なのですから。

椛沢:試合終了後はゴール裏のサポーターが中心となり、今の気持ちを伝えなければいけないと、橋本社長を呼び、話し合いの場を北ゴール裏スタンドの前で持つことになりました。多くのサポーターが、ここまでの働きを顧みた上で橋本社長に、社長の座を辞めて欲しいということを伝えたあと、社長の口から出てくる言葉は曖昧なものばかりで、自ら何かをするという具体的なビジョンや気持ちが全く見えてこない状態で、話は全く進むことがなく3時間が経過。最後はサポーターと長く時間を過ごしてきた前運営部長で、現ホームタウン本部長の畑中さんが登場して、ようやく話の終着点が見え始めて、最後に次の天皇杯の試合までに親会社である三菱自動車と2つについて交渉することを約束してくれました。1つ目は、三菱自動車フットボールクラブの株主総会を経て決められる浦和レッズの社長人事が、リーグが開幕した後の4月に行われてから代わることで、シーズンのビジョンが定まらないことが多々あることから、2月1日のシーズンインに合わせる形に変更すること。2つ目は、社長候補には、就任前に浦和レッズの業務に携わってもらうこと。最後に来年の20周年にあわせての社長のアイディアも出されましたが、これについてはオフレコにして欲しいということで、具体的なことについては述べないことにします。このような形で最後は具体的なことが最低限、提示をされて22時を過ぎたところで、この場の会は終了しました。気がかりなのは、来季以降に向けたビジョンについては社長が全く語ることが出来なかったこと。これは監督選考が終わっていない中なので現段階で話すことが出来ないのか、そもそも考えていないのか分かりませんが、この部分の迷走状態が現在の低迷を引き起こしているだけに、降格という危機的状況は乗り切ったものの今後に向けて、どのように立て直していくのかの考えをはっきりと発信していく必要がクラブはあります。ただ“監督を変えました。新チームの応援をよろしく”では、多くのサポーターは納得しないでしょうし、未来を見ることは出来ません。

豊田:私は現場に残らなかったので代表とサポーター席とのやりとりは伝聞でしか把握していませんが、あの挨拶と含めて発信内容を考えると暗澹たる気分になります。代表があの内容しか口に出せないとなると・・・・ううん、これから浦和レッズのオファーを受ける監督候補の諸氏はもちろん、補強選手も指導者も「何を判断材料としてレッズを選ぶのか」が全く見えない情況なのでしょう。

椛沢:トップチームの成績だけではなく、クラブへの信認は著しく低下しているように各所で見受けられます。それが観客動員数にも結びついていることは確かです。ホームタウン浦和にあるクラブとして、レッズはどうあるべきなのか。クラブに驕りはないのか?今一度クラブは考えなおさないといけません。

豊田:今号インタビュー連載については私個人にもメールを頂いていますが、とりわけホーム最終戦のイメージが残る時点でお二人の談話に触れていただきたいと思う。「10年後、どんなレッズでありたいか」をテーマに掲げる『浦和フットボール通信』にとっては重要なエッセンスが含まれていたはず……という犬飼基昭元代表の締めの言葉が深く印象に残る内容です。

椛沢:最後に昨日、堀之内聖選手の契約を更新せず退団することが発表されました。市高(市立浦和)出身の地元プレイヤーで、派手さはありませんでしたが、どんな状況でも黙々と準備を行い、サッカーに対してひたむきに向きあうことで、若手の選手の模範になる浦和らしさを感じる選手だったと思います。数々の思い出がありますが、豊田さんが思い出に残る堀之内選手の試合は、いつでしょう?

豊田:ACL初制覇時のトーナメントラウンドでの冷静なプレーぶりが印象に残っています。それこそ派手さはないけれど、初の国際舞台であの隙のない守備統率ができるというのは並みのメンタルではないと思いました。得点シーンではやはり2006年元旦の天皇杯決勝・清水戦でのヘディングゴールだな。彼の恩師である磯貝先生(元浦和市立高校監督)も、あれがいちばん彼らしい得点だったと絶賛していました。「何としても指導者としてレッズに残り、彼に続く“知性を兼ね備えた地元出身選手”を育ててもらいたい」とくり返されていたことを思い出します。もちろんまだまだ現役としての活躍を期待しますが、磯貝先生からの「未来に向けての使命」も忘れずに達成して欲しいですね。

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